Article

GST申告書の修正手続きについて

8 Feb 2024

シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、手続きを改訂したことをお知らせします。

在シンガポール日系企業の皆さま

IRAS(Inland Revenue Authority of Singapore: 内国歳入庁)は以下について手続きを改訂しましたのでお知らせします。

GST申告の修正

GSTの申告では、IRASに申告書を提出した後に申告内容の誤りが判明した場合、修正申告書 (GST Form F7) を提出して誤りを正します。

行政手続きの緩和策として今回IRASでは、申告されたGSTの誤りに伴う増差税額とGST以外の項目の修正額がそれぞれの基準値以下の場合は修正申告書を別途提出する必要はなく、次回のGST通常申告の際に合わせて修正すればよいこととしました。

GSTの誤りに伴う増差税額の基準値は従前よりS$1,500に設定されていましたが、今年1月にGST税率が9%に改訂されたことに伴い、申告における増差税額も増加することが予想されたため、税率改定と同じタイミングでGST申告における増差税額の基準値も変更されました。

2024年1月以降、GST申告書の誤りを修正する際には、以下の要件の両方を充足する場合、修正申告書の提出は不要となり次回の通常申告で修正すればよいこととなります:

1. 申告対象期間におけるGSTの正味の修正額(Net GST amount in Error)(例:支払いGST修正額から 仕入GST修正額を差し引いた額)がS$ 3,000以下である:かつ

2. 申告対象期間におけるGST以外の項目の修正総額(Total Non-GST Amounts in Error)が、申告書に記載されている取引総額(Box 4)の5%以下である。当該期間中に取引が発生していなかった場合、この5%ルールは課税仕入れ額の総額(Box 5)に対して適用される。

この緩和手続きは、GST申告書(F5)におけるBox 1~7で申告された数値の誤りが対象です。それ以外のBoxで申告した数値の誤りの訂正は引き続き、修正申告書(F7)を以て修正申告することが義務付けられています。

GSTの申告と管理について

大企業に分類される企業の数はGST登録事業主全体の約2%程度ですが、GST納税額では全体の50%以上を占めています。2015年から現在までに308件の大企業(様々な業種から選定)に対してGST税務調査を実施したところ、77%の企業でGSTの申告誤りが発見され、追徴税額は本税とペナルティを合わせるとS$ 73.19百万(約79億円)、1件あたりの平均追徴税額はS$ 308,000であった旨が公表されています。

大企業の場合、複雑な商流や多数のクロスボーダー取引、膨大な取引量、取引額が高額であるなどに加え、最近では経理機能を海外のアウトソース拠点に移すケースが増加しており、これらの諸事情が大企業の申告誤りを増加させる要因となっているとIRASでは分析しています。

発見された誤りの多くはGSTの取扱いに関する管理不足に起因しているとも分析されており、仕入・販売時のGSTの分類についてのチェック不足、社員のGSTに関する諸規制や税制の変更等に関する理解不足やトレーニング不足、他に社内関連部署間でのコミュニケーション不足なども原因として挙げられています。

これまでのGST税務調査の結果を踏まえ、IRASでは大企業に対してGSTの管理機能を高めることを推奨しています。間違いのない申告と法令順守のための任意の取り組みとして、従前よりASK、ACAPなどのプログラムが導入されているほか、最近ではTGF(Tax Governance Framework)が紹介されています。自社のGSTの取扱いに課題がある方、会社全体の税務ガバナンス強化の一環でGSTについても取り組みを検討されたい方は、ディスカッションさせていただきますのでどうぞご相談ください。

連絡先:

記事に関するお問い合わせは以下までご連絡ください。
五十嵐 潤(Jun Igarashi)
Japanese Tax Services Leader
juigarashi@deloitte.com

杉山しのぶ(Shinobu Sugiyama)
International Tax Senior Manager
ssugiyama@deloitte.com

矢部 直人 (Naoto Yabe)
International Tax Senior Manager
nayabe@deloitte.com

Did you find this useful?