最新動向/市場予測
コロナ禍における地域連携活動の在り方
アフターコロナを見据えた地域連携活動の取組み
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの医療機関が不要な面会を制限している状況が続いています。このような中で、従来の地域連携活動と同じように訪問による周知活動を積極的に行うことは、難しい状況にあります。そのため、今回は、コロナ禍における地域連携活動という観点から、連携機関との関係性を強化するために必要な取組みについて紹介します。
医療機関における情報通信機器の導入状況
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、情報通信機器の導入を検討している医療機関が増加している傾向にあります。
この背景として、新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた時限的・特例的な対応として、情報通信機器を用いた診療に対する基準が緩和されていることが考えられます。また、新型コロナウイルス感染症の終息が見えない中で、オンライン診療環境整備補助事業などの支援策が拡大されていることも影響しています。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が公表している 「コロナ禍での国内医療機関への通院状況・オンライン診療の活用状況」に関するアンケート調査結果においても、2020年6月中旬の段階で、医療機関のデジタル化は新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に「電話再診」、「オンライン診療」と共に、「Web会議システム」の導入が広がり始めていることが明らかになっています。
情報通信機器を活用した周知活動の推進
医療機関が情報通信機器を用いた医療提供体制の構築を進めていることを踏まえると、地域連携活動においても、従来のような訪問による周知活動からWeb会議システムなどのオンラインツールを用いた周知活動を検討していくことも必要になると考えられます。
Web会議システムを活用した周知活動では、連携先病院でもオンライン環境が構築されている必要がありますが、移動や会議場所の確保の負担を減らすことにより業務の効率化を向上できることや、画面共有の機能を活用することにより説明内容の理解を促進することに繋がります。
新型コロナウイルス感染症により、顔の見える関係性の構築が難しくなる中で、病床の稼働状況や受入可能な患者数の情報を電話やFAXで伝えるだけでなく、Web会議システムで顔を見ながら、院内の感染症対策で有効となった取組みなどについても共有することにより、安心して連絡しやすい信頼関係を築くことに繋がります。
アフターコロナを見据えた地域連携活動
2021年3月から新型コロナワクチン接種が開始となり、2回目の緊急事態宣言が解除されたことを考えると、アフターコロナを見据えた地域連携活動の体制の強化にも段階的に取り組む必要があります。
地域連携体制の最初のステップとして、院内に蓄積されたデータを活用できる仕組みを構築することが重要となります。地域連携室に蓄積されるデータとしては、紹介患者や退院患者の情報が主に集約されていると思われますが、院内に蓄積されたこれらのデータが、数字のまま放置されているケースが見受けられます。地域連携室の職員が紹介患者のデータをエクセルに入力しているものの、活用したことがないといったような場合には、日々の業務で蓄積されるデータを視覚化して、院内で共有できるように業務の見直しを図る必要があります。
蓄積されたデータの視覚化は目的に応じて様々な方法が想定されますが、下記に医療機関ごとの紹介患者数、紹介から入院に繋がった件数(入院化率)を視覚化した例を示します。
蓄積されたデータを見える化することにより、周知活動を行う必要がある医療機関を抽出できると同時に、どのような周知活動を行うべきか検討することに繋がります。
例えば、病院①のように紹介患者数は多いが入院化率が低い場合には、どのような患者を紹介すればよいか連携先病院の担当者が十分に理解していない可能性があります。そのため、受入可能な患者の疾患や在籍している医師の専門領域などについて説明する機会を設けることが有効になると考えられます。病院②・③のような紹介患者は少ないが入院化率が高い場合には、どのような患者を紹介すれば良いか理解されていると考えられるため、空き病床の状況を定期的に共有することが望ましいと言えます。病院④のように紹介実績がない場合には、連携先病院の担当者が紹介受入可能であることを認知していないことが想定されるため、自院のパンフレットを用いて、病院紹介を行うことを検討する必要があります。
データの視覚化では、紹介患者数の実績以外に、患者受入依頼を受けてから入院するまでの各プロセスを見える化することにより地域連携課の業務改善に繋げることができます。また、周知活動の件数や周知記録と紹介患者数の推移をモニタリングすることにより、周知活動の質と量を向上することが可能となります。
おわりに
新型コロナウイルス感染症の流行という環境の変化に伴い、地域連携活動の在り方についても従来の方法からWeb会議を取り入れるなど新たな対応が求められています。また、医療機関として持続可能な経営を行ううえでは、アフターコロナを見据えた地域連携体制について改めて検討する必要があります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症への対応により、現場職員だけでは対応に割ける時間がない、院内で蓄積されたデータを戦略に活かすことが難しいといった悩みを抱えている医療機関も多いかと思います。
地域連携活動のプロセス改善やアフターコロナを見据えた地域連携体制の再構築を支援した実績のあるトーマツグループでは、各領域において内部に実務経験豊富な専門家を有しており、医療機関が抱える課題に応じてチームを構成し、課題に取り組むことができる業務体制を整えています。また、多くの医療機関に対するアドバイザリーサービスでの実績や医療政策含めた幅広い知見も豊富に有しております。
新型コロナウイルス感染症による未曽有の状況下において、課題を検討するのに十分な人員や時間が無い、又は、具体的な改善策の立案が難しいなどのお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談下さい。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2021/4
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