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公営企業の予算の留意点

公営企業の制度・会計制度シリーズ (5)

公営企業会計における予算には、企業環境の変化に対応できるよう、弾力的な取扱いが設けられています。その他、発生主義を採用していることから、予算には非資金項目も含まれること、予算執行は権利義務の確定時点に行われること等に留意が必要です。

1. 公営企業会計の予算の特徴

(1) 公営企業の予算と官庁会計の予算の相違点

公営企業では、企業経営の経済性を発揮するために、経費の節約と収益の確保を目指して、企業の効率的な運営に重点が置かれています。そのため、官庁会計の予算と比較して企業環境の変化に対応できるように予算にも弾力的な取扱いが設けられている点に特徴があります。

また、公営企業の予算は、官庁会計の予算と比較していくつか相違点があります。そのうちの代表的なものとして、官庁会計では、当年度のすべての収入を「歳入」、全ての支出を「歳出」とし、予算を作成するのに対して、公営企業は予算を2つに区分する点が挙げられます。

1つ目は、「収益的収入及び支出予算」です。予算書の様式から「3条予算」とも呼ばれ、当年度の損益取引に基づくものを区分します。

2つ目は、「資本的収入及び支出予算」です。「4条予算」とも呼ばれ、投下資本の増減に関する取引に基づくものを区分します。

(2) 予算の作成者

予算の作成者は公営企業の管理者になります。作成された予算は首長が調製した後、議会に提出されます。(地方公営企業法(以下、「法」といいます。)第24条第2項)。一方、管理者を設置しない公営企業(法第7条ただし書き)は、予算原案の作成及び予算の調製、いずれも首長が権限を有します。

(3) 予算の作成時期

公営企業の予算は、一般会計部局と同様に首長が議会へ議案を提出しますので、地方自治法第211条第1項にしたがって、都道府県及び指定都市は遅くとも年度開始前30日(その他の市町村は20日)までに予算を議会に提出する必要があります。

2. 予算で作成する書類と留意点

公営企業の予算に記載する事項は地方公営企業法施行令(以下、「令」といいます。)第17条第1項各号に定められています。予定収入及び予定支出のような財務情報のほか、業務の予定量のような非財務情報も予算事項とされています。

予算書の様式(地方公営企業法施行規則(以下、「則」といいます。)第45条、別記第1号様式)として、以下の第1条から第14条までが列挙されていますが、継続費や債務負担行為等、当年度の予算に該当する項目がないものについては、予算書への記載を省略することができるものとされています。

予算で作成する書類

さらに、首長が予算を議会に提出する場合には、以下の「予算に関する説明書」を予算書に併せて提出することとされています(法第25条、令第17条の2、則第46条、別記各号様式)。これらの資料は、予算書を具体的に説明した明細資料等であり、議会で審議される際の参考資料として提出されます。

予算で作成する書類

公営企業の予算は発生主義で作成されるため、官庁会計の予算では計上されない非資金項目(例えば、減価償却費等)が計上される点に留意が必要です。また、予算書の各項目間の金額等の整合性にも十分留意する必要があります。

3. 予算の弾力的な取扱い

公営企業は、一般会計等と同様に予算制度を採用しながらも、機動的な経営状況に対応できるように、弾力的な予算の運用が認められています。

例えば、公営企業の予算は、職員給与費等の一部の科目を除いて、予算書で定めることにより、支出経費のうち各項間の経費を流用することが認められています。

さらに、業務量の増加に伴い収益が増加する場合には、当該業務に直接必要な経費に限って、予算を超えて支出することが認められています(地方自治法第218条第4項、法第24条第3項)。ただし、予算制度の趣旨を踏まえると、予備費または予算の流用を先に適用し、予算を補正することが可能な状況においては、予算を補正して対応すべきといえます。

4. 予算執行に関する留意点

公営企業の予算執行は、発生主義によって権利または支払義務の確定時点に行われます。収入であれば調定、または費用であれば検収時点に予算執行を行います。そのため、例えば、前金払や概算払については、現金の支出は生じますが、予算の執行は行わず、前払金による支出として会計処理を行う点に留意が必要です。そして、実際に役務提供を受けた時点に予算執行を行うとともに、前払金から本勘定である経費科目に振替えます。

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