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部門確認書

有価証券報告書等の適正性向上

わが国では各証券取引所規則に基づき、2005年1月期または同年2月期有価証券報告書等からその内容の適正性に関する確認書の提出が義務付けられた。一方、米国では2002年に施行された企業改革法に基づき、米国上場会社のCEO及びCFOは年次報告書等の内容の真実性に関する宣誓書及び財務報告に係る内部統制の有効性に関する評価報告書の提出が義務付けられ、多くの会社で各部門の代表者が部門確認書の提出をしているといわれている。

部門確認書とは

部門確認書とは、各部門の代表者(例えば部長職)が、所定の事項に関する確認を実施し、その確認結果について記載した書面を指す。通常、当該書面に部門代表者が署名する。

 

わが国では、各証券取引所規則に基づき、2005年1月期または同年2月期有価証券報告書等からその内容の適正性に関する確認書の提出が義務付けられた。また、任意の制度として、企業内容等の開示に関する内閣府令に基づく、代表者による有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する確認書を有価証券報告書等に添付することができる。これらの制度では、経営者は有価証券報告書等の内容の適正性を確認することが求められている。

 

一方、米国では2002年に施行された企業改革法に基づき、米国上場会社のCEO及びCFOは年次報告書等の内容の真実性に関する宣誓書及び財務報告に係る内部統制の有効性に関する評価報告書の提出が義務付けられている。その際に、多くの会社において各部門の代表者が部門確認書の提出をしているといわれている。これは、それぞれの部門における部門財務諸表等の真実性や内部統制の有効性について、プロセスオーナーである各部門の代表者が責任を有するとの考えに基づくものである。各部門の代表者の責任の所在を明確にし、もって年次報告書等に関する宣誓・報告を円滑に行うために有効な手段と考えられている。

 

わが国においても、各証券取引所規則や開示内閣府令に基づく有価証券報告書等の内容の適正性の確認を経営者が円滑に行うために、各部門の代表者による部門確認書の提出を実施することが有効と考えられている。

部門確認者の役割と責務

米国での企業改革法実務においては、部門確認者はその役割として、それぞれが主管する拠点や業務に関する内部統制の有効性について確認することが期待される。

部門確認者の責務は主に次のような点にあると考えられる。

•内部統制の有効性の確認及び報告

•確認の結果発見された内部統制上の不備及びその改善策の内容の妥当性検

•実行されている改善策の進捗状況の把握

•内部統制に重要な変更があった場合には、その変更の内容の確認

部門確認書に記載される事項(一例)

部門確認書に記載する事項は、上記の部門確認者の役割と責務を考慮して決定する必要がある。

 

米国公認会計士協会では、そのホームページにおいて企業改革法に基づいた部門確認書のサンプルを実務参考例として掲載している。

 

以下は当該サンプルのうち、わが国における適正性確認書の提出の上で関係の深いと思われる事項を抜粋要約したものである。

 

1.私は部門財務諸表のレビューを実施した

2.私の知りうる限りにおいて、部門財務諸表に含まれている情報は、全て重要な側面において、財務状態、業務の結果、キャッシュフローを校部門財務諸表には重要な事実に関する不実記載や脱漏は生じていない

3.私の知りうる限りにおいて、部門財務諸表は一般に公正妥当と認められる会計原則に準拠して公正に表示されている

4.私の知りうる限りにおいて、部門財務諸表には、重要な事実に関する不実記載や脱漏は生じていない

5.私は自部門の内部統制を自らの監督の下で構築し維持する責務を有している

6.私は自部門の内部統制を自らの監督の下で構築させ、〔対象となる会計年度〕において維持している

7.私は自部門の内部統制の有効性の評価を実施し、評価結果をレビューした

8.上記有効性評価結果に基づき、以下の事項を除き、自部門の内部統制における重要な不備や重大な欠陥は存在しないことを確信している(発見された不備の説明)

9.以下の事項を除き、自部門の内部統制に重要な変更は生じていない(変更の生じた事項の説明)

etc.・・・

各証券取引所へ提出する代表者確認書への対応

各証券取引所への代表者確認書の提出は、有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出後、遅滞なく行うこととなっている。確認作業は各部門または業務単位で行われることが多いため、各部門または業務の責任者の確認作業における責任を明確にし、有価証券報告書等の作成にかかる内部統制の評価活動を促進する意味でも、部門確認書の入手実務の導入の検討が望まれる。 

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