Posted: 11 Nov. 2022 10 min. read

AIは変革のエンジンで、データはその燃料

Deloitte AI Institute │Spirits #2

長年にわたる研究の成果が花開き、いよいよ本格的な社会実装が進みだしたAI技術。人と社会をより豊かにする存在として、積極的な導入を望む声は日々高まっています。ただし、実際のAI導入の場面では、それ自体が目的化してしまい、DXによる社会やビジネスモデルの変革という真の目的にたどりつけていないケースもあるようです。

デロイト トーマツ グループのDeloitte AI Instituteには、人とAIが協調する社会「The Age of With」の実現に向けて、日夜精魂を傾けつづける先駆者たち「AI Spirits」が多数在籍しています。このインタビューシリーズでは、そんなデロイト トーマツの「AI Spirits」1人ひとりに焦点を当て、AI導入の最前線とその魅力についてお伝えします。

第2回である今回は、長年、データの利活用による企業と社会の変革を推進するコンサルティング業務に従事し、さらに、昨今は社内のキャリア開発タスクフォースで次世代のAI Spiritsたちの育成を担っている、デロイト トーマツ コンサルティング AI&Dataユニットの清水さんに話を聞きました。

 

 

デロイトであれば、社会の変革につながるプロジェクトに関わることができる

 

--まずは自己紹介をお願いします。

 

デロイト トーマツ コンサルティング AI&Dataの清水です。AI&Dataは、AIとデータに関わる戦略策定から実装・運用まで、幅広いコンサルティングサービスを提供する組織です。

 

この組織での私の役割は、大きく分けて次の二つとなります。一つはコンサルティングサービスで、AIをコアにした変革を実現するための戦略策定や構想策定、加えてデータ管理手法の策定やデータ仕様の策定も扱っています。もう一つは組織メンバーのキャリア開発や育成です。

 

また、デロイト トーマツ グループの横断的なAI専門組織であるDeloitte AI Instituteにも所属しています。こちらでは、AI分野でのソートリーダーシップを発揮し、AIに関する知見を積極的に発信するなどの方法で、デロイトのビジビリティを高めることを目的とした「エミネンス活動」を行っています。
 

 

--2020年からデロイトで活躍されているとのことですが、それまでの経歴を教えてください。

 

元々はグローバルIT企業のソフトウェア開発研究所で、ソフトウェアエンジニアやアーキテクトとして、トランザクション管理やビジネスプロセス統合のための製品を開発していました。

 

その後、ITコンサルタントとなり、データインサイトやデータアナリティクスを主軸に構想策定やオペレーション策定に従事しました。「データからインサイトを得ること」という意味で、この頃からAIと同じ領域に取り組んでいたと言えます。

 

2020年に縁があり、デロイト トーマツ コンサルティングに入社しました。現代は、AIやIoT、量子コンピュータなど、さまざまな先進的技術が社会のあり方を大きく変えている転換期、第4次産業革命の真っ只中にありますが、デロイトであれば、これらの技術を活かし、社会をより良くする活動に関わることができると考えたからです。


 

AIは道具。顧客や社会のニーズをとらえ、どのように変革して競争優位性を高めるか

--昨今、DXやAIが注目されていますが、これまでのテクノロジーの変遷や現在の状況についてどうご覧になっていますか。また、これらにどのような立場で関わっていますか?

 

企業がITの活用をはじめてから数十年が過ぎました。最初のフェーズはデジタイゼーション(データのデジタル化・自動化)であり、次のフェーズはデジタライゼーション(データ処理のデジタル化・自動化)でした。そして、ここ数年で突入したのがデジタルトランスフォーメーション(DX)のフェーズです。

 

言葉は似ていますが、DXとそれ以前の2つには大きな隔たりがあります。デジタイゼーションやデジタライゼーションはIT化、それ自体が目的でしたが、DXではIT化は大前提で、その上で、データやテクノロジーの力を用いてビジネスや社会を変革することに目的が変わっています。

 

AIは変革のエンジンであり、データはその燃料です。ですが、エンジンも燃料も存在しているだけでは鉄の塊とべとついた液体でしかありませんよね(笑)。よりよい世界や社会を作るためにそのエンジンで何を動かすのか、より高いパフォーマンスを達成するにはどんな燃料を与えるか。ここが人間の思いや知恵が必要になる部分であり、頭の使いどころでもあり面白いところです。

 

こうした考えのもと、私はITストラテジストとして、戦略とAIをかけ算する形でコンサルティングをしています。AIの技術自体も面白いですし、データを分析して観察していると人の動きが見えてくることも面白いと感じます。さらに、AIやITの強力なパワーを駆使し、変革のための課題に知恵を絞り、クライアントの志の実現を通じて社会の変革に関われること。これこそが、この仕事の醍醐味だと思います。

 


--多くの企業がAI活用で試行錯誤していますが、成功するために着眼すべきポイントはありますか?

 

AIという言葉自体は数十年前からあり、昔はSFの世界の話でした。近年の技術の進化で現実のものとなり社会実装が本格化しましたが、まだ「AIやデータを使って何ができるだろう?」という発想を起点としている方も少なくありません。AI活用自体が目的になっているのです。しかしAIは道具であり、手段です。いったん置いておきましょう。

 

現在は、ビジネス環境が激しく変化し、先が読めない時代です。そうしたなか、顧客や社会のニーズにどのように応え、どのようにサービスモデルやビジネスモデルを変革していくか。そうした変革を実践しながら、いかに競争優位性を確立し、高めていくか。まずはこういった観点から考え始める必要があります。

 

道具については、そこが明確になってから次に考えればいいのです。最初に「ハサミがあるから、切り絵を作ろう」ではなく、「こんなアートを切り絵で作りたいから、このハサミを使おう」という順番です。

 

まずは「どんな変革を起こすか」から始めましょう。どうすれば顧客や社会ニーズに応えて、競争優位性を高められるか。そこにどういったビジネスモデルやサービスモデルでアプローチするかを考えるべきではないかと思います。

 

 

遅れているということは、同時に「チャンスがたくさんある」と見ることも

--日本におけるDX、AIの課題はどんなところにありますか?

 

ここ数年の調査などで「日本はDXやAI活用で遅れている」と指摘されています。これは事実として認めざるをえないところもありますが、本当に問題とすべきは「遅れている」ことではなく「進みが遅い」ことです。「遅い」原因がわからないと、遅れは取り戻せません。一方、遅れているということは、同時に「チャンスがたくさんある」と見ることもできます。私などは、これから加速すればたくさん進んでいけるのだと思うとわくわくします。

 

 

さて、先に述べたこととも重なりますが、日本でAI活用が思うように加速しない原因の1つには、道具や技術ありきの発想があると思います。すでにデータやプロセスのデジタル化は進んでいるので、IT技術の活用を現状の延長線上や社内での横展開でだけではなく、ビジネスにおいてどのような変革を起こし、競争優位性を確立していくか、そうした視点に基づいて考えていく必要があると思います。

 

IPA『DX白書2021」(※)によると、デジタイゼーション、デジタライゼーションにあたる取り組みについて「十分な成果が出ている」「ある程度の成果が出ている」のいずれかと答えた企業の割合は、日米で比較してもそう大きな違いはありません(下図、青枠参照)。ところが「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」や「企業文化や組織マインドの根本的な変革」など「変革」が関わる部分を見ると、日本は大きく遅れをとっています(下図、赤枠参照)。米国では「成果が出ている」という回答が約75%なのに対し、日本では約30%で半分以下です。

※  『DX白書2021日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術』IPA情報処理推進機構、2021年(https://www.ipa.go.jp/ikc/publish/dx_hakusho.html

 

これを見ると、現状の日本は「デジタライゼーションまでは達成できているが、DXは始まったばかり」と読み解けます。この状態から遅れを取り戻すには、まずは大きな目標となる「どんな変革を起こしていくのか」をしっかり設定し、そこを目指して一気に進んでいくことが重要です。そうすれば、AIやDXの取り組みもスピードアップして、世界にキャッチアップしていけると思っています。

 

 

デロイトの強みはEnd-to-Endの対応力とグローバルな連携力

--こうした背景のなか、デロイトの強みはどんなところにありますか?

 

End-to-Endの対応力とグローバルな連携力の2つです。

 

前者のEnd-to-Endの対応力については、すべての行程で対象領域に精通した専門家によってきめ細やかな対応ができるということです。変革課題の解決においては、「目的やビジョンも含めた戦略策定や構想策定」といった全体の大きな方向性を決める部分から、「どのように具現化、実装するか」といったインプリメンテーション、さらに運用開始後のオペレーションまで幅広い行程が発生しますが、デロイトであれば、これらに対しEnd-to-Endでそれぞれの課題に応えられます。

 

後者のグローバルな連携力については、先行している他国の知見や恩恵を得られるところです。海外にはAIやデータ利活用の事例が数多くあります。しかし、それらもまた、何の障壁もなく生まれたわけではありません。多くの困難を乗り越えて実現されてきたわけです。デロイトにはグローバルな連携力がありますから、海外の先行事例で獲得した「Lessons learned(学んだ教訓)」にアクセスできます。

 

これによって、日本でDXに取り組む企業が経験するであろう障壁や落とし穴が分かるので、「ここは回避しよう」「ここはこうすれば乗り越えられる」というかたちで海外の知見を活かすことができます。これは利用しない手はないと思います。

 

AI&Dataという枠組みで見た場合でも、海外に同等の組織があり、また各国のDeloitte AI Instituteの仲間との連携もあります。日本のDX推進に、こうしたデロイトのメリットを最大限に活かすようにしていきたいと思います。

 

 

 

人材育成ではアウトプットの機会が大事

--スタッフのキャリア開発も担当されているとのことですが、具体的にどのようなことに取り組まれていますか?

 

私たちが扱うAIやデータ活用は、技術の進歩が早い領域です。クライアントのビジネスモデルやサービスモデルを変革するには、この領域で一歩先、二歩先の知識やスキルを身につけてクライアントをリードしていく必要があります。そこで、AI&Dataのスタッフがより高度なスキルやノウハウを身につけキャリアを伸ばせるように、キャリア開発の立案や推進を担当しています。

 

学習の基本的なフレームワークは、インプットとアウトプットにわかれますが、昨年度はインプットを中心に社内外のeラーニング教材や書籍などの情報をメニュー化しました。ケイパビリティを身につけるには、まずは知識が必要ですからね。学習方法にもいろいろありますが、思い立った時にすぐに取り組める手軽さを考えると、時間や場所の制約がないeラーニングが有効です。

 

対象となるのは若手から中堅のスタッフ層です。プロジェクトに入っているとなかなか時間がとれない場合もありますが、人によりプロジェクトが落ち着いている時やプロジェクトの合間など、仕事が一段落した時間を見つくろって自己研鑽に励んでいるようです。

 

 


--キャリア開発においては、どのようなことを心がけていますか?

 

知識だけではスキルが身についたと言えません。得た知識を基に、自分で考えて、何らかのアウトプットや価値創出に結びつけるところまでやらないとスキルとして定着しないと思います。たとえば料理なら、動画で「かつらむき」の方法を知ったとしても、実際にやってみないとできるようにはなりませんよね。どう包丁を持てばいいか、自分なりにかつらむきのコツをつかんで、ようやくスキルとして身についたと言えると思います。そのため人材育成ではアウトプットの機会が大事です。

 

とはいえ、コンサルタントの通常の業務のなかで、学習した知識をすぐにプロジェクトに活かせるとは限りません。そのためプロジェクト以外の場面でのアウトプット機会を用意していく必要があると考えています。

 

先に申しあげたとおり、私はかつてソフトウェア開発研究所にいましたが、そこでは評価指標として論文や特許の発表数がありました。論文を書くのはすごく大変でしたが、自分が考えていることを整理し、仮説を導き出して考察して形にする行程を通して、さまざまな知識が自分のスキルとして定着していったと感じます。やっておいてよかった経験でした。自分の経験も踏まえて、今の組織でもよいアウトプット機会を作って行けたらなと考えています。

 

 

チームメンバーは主体的にアウトプットを出しバリューを発揮している

--職場やチームはどのような雰囲気ですか?

 

入社が2020年、ちょうど新型コロナウイルス感染症への対応が始まったところでした。そのため対面の場が少なく、コミュニケーションの機会も限られているのですが、本当にいろいろな人がいるなと感じています。デロイト トーマツに新卒入社してコンサルティング一筋の人もいれば、私のように事業会社やIT企業からの転職者もいます。年齢層も幅広いです。そんな多種多様な人がいるからこそだと思いますが、フラットな感じでチームが組まれているのが特徴ですね。新しいコミュニティに顔を出しても、警戒感なく歓迎してもらえる気がします。

 

今のところ、出勤は月に1度程度です。なのでオフィスでの和気あいあいの談笑や、喧々諤々の議論の機会は少ないのですが、この二重橋のビルはすごくきれいですし、居心地がいいですね。コーヒーやお茶のマシンがあり、いつでも飲めるのはうれしいです。私はコーヒーが好きなので、さらにコーヒーが美味しくなれば言うことはありません(笑)。

 

チームはプロジェクトごとに分かれています。長期のものも3〜6ヶ月のものもあって、雰囲気は構成メンバーによって分かれますね。中にはプライベートでも仲の良いチームもありますが、共通して言えるのは、みなさん主体的、自主的にアウトプットを出し、バリューを発揮することを意識しているということです。これは日々、ひしひしと感じますね。

 

 

--気分転換やリフレッシュではどのようなことをされていますか?

 

私はインドア派なので、新型コロナウイルス感染症が流行して以降、屋外でのリフレッシュは週一度のテニスだけです。ほぼ自宅にいるので、夫と二人で何を食べるかが最大のリフレッシュになります。

 

平日は短時間で料理をすませますが、週末は気合を入れておうち居酒屋をしています。まずは何を飲むか。ワインか日本酒か。「今日は日本酒を熱燗で」と決まったら「じゃあそれに合うおつまみは」と考えるのがすごく楽しいです。
 

時には自家製の燻製づくりにチャレンジすることも

 

--最後に一言、読者にメッセージをお願いします。

 

この会社は変革に向けた想いを大事にしてくれる会社だと思います。社会を少しでもよくしたい、世界を少しでもよりよいものにしていきたい。そのためにやりたいことがあるならば動くことを後押ししてくれる、そんな会社です。

ぜひ多くの方に我々の活動に興味をもっていただければと思います。