Posted: 15 Jan. 2021 3 min. read

「壁」ではなく「橋」を~宗教の自由の日に考えるダイバーシティ&インクルージョン~

シリーズ: Diversity & Inclusion

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宗教の自由と多様性

明日1月16日は”Religious Freedom Day”(宗教の自由の日)である。1993年にアメリカで制定されて以降、その名のとおり宗教の自由とその権利について考察し、啓蒙を高める日として認知されている。

日本であまりこの記念日が認知されていないのは、元々アメリカで制定されたものであるという理由だけでなく、日本における宗教・信仰の概念そのものが、諸外国に比べて非常にユニークな社会的位置づけにあることも関係しているだろう。

生誕時は神社で神主のもとお宮参りの祈祷を行い、大人になったらチャペルで神父立ち合いのもと結婚式を挙げ、亡くなった時にはお寺で僧侶による仏式の葬式を執り行い、戒名なるものを受ける。これは長年日本社会で生まれ育った人にとっては特別違和感のない風習のように思えるかも知れないが、ひとつの宗教・信仰が密接に家族の在り方や個々の信念・価値観につながっている文化圏の人々にとっては恐らく理解しがたい話だろう。

このような風習を違和感なく受容する日本社会の宗教観を、日本の風習に馴染みの無い人々に一言で解説するのは容易ではない。しかし、多様な宗教・信仰の独自の融合という観点が、今日にも生きている日本の伝統文化や日本独自の精神世界・価値観を形成する要素であったと言うことはできるだろう。

デロイト トーマツ グループにおける宗教の自由への尊重

デロイト トーマツ グループではあらゆる違いをもつメンバーが、それぞれの「目に見える」違い(性別、世代、民族等)に加え、「目に見えない」違い(SOGI(*1)、経験、文化背景等)を「価値」の源泉として、クライアントへの貢献はもちろん、サステナビリティやレジリエンスの高い社会へと変革を導くことをひとつの目的に、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している。

宗教・信仰に関しても多様な価値観をもつメンバーが自分自身のポテンシャルを最大限に発揮できるよう様々な取組みを行っており、オフィス内の祈祷室などの設備面はもちろんのこと、その設備を気兼ねなく活用することができるような勤務時間の配慮など、周囲がお互いの宗教・信仰が「価値観の構成要素」であることを理解し、尊重するような風土になるような機会を定期的に設けている。

特にムスリムのメンバーとの勉強会は人気も高く、在宅勤務体制以前はオフィスでハラール認証のランチを囲みながら、そして在宅勤務体制後はラマダン明けのイフタ―ル(*2)をオンライン形式で開催している。イスラム教やムスリムに関する当事者からの知見共有はもちろん、非ムスリムメンバーからはムスリムとして日本に暮らす上での苦労や、勤務上の配慮などについて質問が途切れることなく、闊達な議論がなされる。イベント後のアンケートからは、文化的興味・関心のみならず、世界のムスリム人口の増加や経済社会におけるイスラム圏の台頭等といった背景から、「活きた知見を得ること」についてビジネス面での必要性を痛感しており、「自分が当事者ではないからこその視点で積極的に学んでいきたい」といった声も多く挙がる。また一口にムスリムと言っても出身の国や地域、文化圏によって多様性があることを皆で実感し、新たな学びや視点を得ることにつながっている。

(*1)SOGI:性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字から成り立った言葉。「LGBT」よりも広い概念を指し示す概念であり、日本語では「性的指向と性自認」などと訳される)

(*2)イフタール:イスラム教で「礼拝」や「喜捨」等と併せて定められている五行の一つである断食(ラマダン)期間中、日没後のその日の断食明けにとる特別な食事のこと)

「壁」ではなく「橋」になる

宗教・信仰は、文化や文明の発展・多様化の中で人々を照らす光・そして共通の価値観を結びつける力として存在してきた。

人と人を「違い」という「壁」で遮ってしまうのではなく、人と人の「違い」にかけられた「橋」としての役割こそが、宗教・信仰であり、そしてそれはそのまま、ダイバーシティ&インクルージョンの視点につながっていくのである。

日本は諸外国に比べて多様性がないからダイバーシティ&インクルージョンはなかなか進まない、という声もよく耳にするが、冒頭で述べたとおり、日本というユニークな立ち位置・文化背景であるからこそ担える役割や、日本独自の文化や価値観を活かした推進・施策は必ずあり、それこそが「違い」を「価値」にするというダイバーシティ&インクルージョンの真髄につながっていくのである。
 

デロイト トーマツ グループ Diversity & Inclusionチーム

激変する市場環境の中、自社と顧客の成長を牽引するための経営戦略の1つとして経営層と一体になりDiversity & Inclusionを推進すべく2017年に結成されたチーム。ジェンダー・国籍・カルチャー、LGBT等の個人の多様性や違いを強みとするための施策を幅広く立案・実行し、社内外に広く発信中。

「=」をモチーフとしたロゴは、デロイト グローバル共通のDiversity & Inclusionコンセプトである「ALL-IN」をイメージしたもの。