Posted: 16 Mar. 2021

アジア太平洋地域の次世代ファミリービジネスには外部専門家の知識が必要

ファミリービジネスは、ある素晴らしいビジョンを体現しています。それは、これまで何世代にもわたって存続し、この先何世代にもわたって受け継がれていかなければならない、壊すことのできない一連のコアバリューです。

これらのコアバリューが、ファミリービジネスと顧客、従業員、サプライヤー、地域社会との信頼の絆を、ほとんどの他企業が達成することのできないレベルへと高めているのです。

世界的なパンデミックによって、この絆が試されています。アジア太平洋地域(APAC)の第一世代のファミリービジネスの多くが転換期を迎え、創業者や次世代後継者が後継者計画のプロセスを開始するにあたり、デジタルトランスフォーメーションやガバナンスの実践のほか、自身の経験を超えた事柄について検討を始めていた時期に、パンデミックが発生しました。

APACの次世代ファミリービジネスは、ステークホルダーの物理的信頼、感情的信頼、デジタルへの信頼、および財務的信頼を管理・構築しながら将来の計画を立てるために、パートナーや顧客のニーズの客観的評価に加えて、自社の寿命や到達範囲を超え、家族の利害を重視した専門的な知識に目を向けるようになってきています。
 

今後の道のり

パンデミックが続く中、信頼を得ているレガシーおよび後継者計画を維持・構築する継続的なプロセスが最優先事項となり、ファミリービジネスの感情的信頼と財務的信頼の絆を強化する上で不可欠な要素となっています。

しかし、さまざまな理由から、APACのファミリービジネスの約半数しか、明確な後継者計画を策定していません。例えば、創業者が生涯にわたって会社をリードし続けたいと考えている場合や、新しい世代がリーダーシップを担うにはまだ早いと感じている場合などが考えられます。そのため、ファミリービジネスは、複数の承継シナリオについて青写真を描く際に、家族関係や利害を考慮した、偏りのないガイダンスを必要としています。

ファミリービジネスの場合、将来を定義するには、単に名前と役割・責任を組み合わせる以上のことをする必要があります。計画策定では、全世代の家族メンバーをはじめ主要アドバイザーや経営陣が、企業の未来を築く上での自分の役割や進化する戦略的ビジョンに与える自身の影響力について安心感を持てるようにする必要があります。つまり、このプロセスでは、家族の目標とビジネスの目標を融合させる必要があります。
 

明確な信号を送る

APACのファミリービジネスの多くは、組織の内外でパンデミックによる大きな混乱を経験しています。困難な時期であると同時に、この出来事は、今後数十年にわたる従業員、パートナー、顧客、地域社会との信頼関係を強化するまたとない機会を提供してくれています。

危機の瞬間には、常にあらゆるレベルで透明性の高い継続的なコミュニケーションが求められます。企業は、共感を示し、戦略的対策を伝達し、リーダーに意思決定権限を与え、後継者計画、開発、売却、または新規株式公開に関する即時計画を発表することで、危機に先んじることが不可欠です。
 

手綱を握る

APACの次世代ファミリービジネスにとって、手綱を握るための準備における重要なステップは、自社のメッセージ発信管理を支援し、コアバリューをサポート・強化してくれる、信頼できる外部専門家を導入することです。

後継者計画によって、ファミリービジネスの新たな使命が明らかになる可能性があります。自動車、モバイル、不動産、ホスピタリティ、エンターテイメント、教育、ヘルスケアなどさまざまな分野に子会社を持つベトナム最大の民間コングロマリットであるVingroupは、次世代リーダーが同社のデジタルトランスフォーメーションに着手するにあたり、子会社VinSmartを設立しました。

顧客ニーズの変化に対応するために、外部専門家は、Vingroupの次期リーダーがスマートデバイス、AI、自動化などの分野で新たなテクノロジーリーダーとして自社を確立することを支援しています。この客観的な専門知識を得ることは、Vingroupが将来に向けてリブランディングを行う上で役立ちます。

リーダーシップのもう一つの重要な検討事項は、買収による成長管理です。オーストラリアに本社を置く紙・包装・リサイクル企業であるVisyは最近、大規模なガラス製造事業を買収し、持続可能な包装ソリューションの提供におけるリーダーとして、アジア太平洋地域での存在感を強化しました。

Visyは、この変革的買収において信頼できるアドバイザーとの協力を通じて、セクターリーダーとしての認知度を高め、価値の高い製造業に対するコミットメントを示し、持続可能なものづくりの精神を広め、ファミリービジネスの創業者の世代を超えた願望を実現しました。

APACのファミリービジネスの多くはまだ創業者が経営しているため、パンデミックの予期せぬ広範囲にわたる混乱により、一部の組織は不意を突かれました。多くのファミリービジネスで次世代が主導権を握る準備を進めるにあたり、すべての次世代リーダーは次の混乱に対応する準備を整える必要があります。

組織の内外で移行を経験しているファミリービジネスにとって、今こそ外部専門家を受け入れるべき時です。客観的なパートナーの視点、洞察、専門知識は、企業がこの先何世代にもわたって信頼の絆を広めていく上で役に立つことでしょう。

 

本記事は、Harvard Business Reviewによる記事をDeloitte Privateが提供しています。