Posted: 30 Jan. 2024 5 min. read

ビジネスを通じ社会 に価値ある貢献をしたい!そんな想いが繋がって社会を変えていく

―シティグループとデロイト トーマツ グループがチームを組み、若手社会起業家に対して合同メンタリングを実施

社会をよりよくしたい!を叶える、デロイト トーマツ グループの強み

―今回はデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下:DTC)の波江野武さん、三由優一さんにお話しを伺いました。


波江野さんのDTC内における担当業務

戦略ユニットのユニットリーダーを担当。
民間事業者を対象とした戦略コンサルティングを中心に活動。
公的機関政府等と専門分野である健康・ヘルスケアを通じ、課題解決に向けた取り組みも多数経験。

三由さんのDTC内における担当業務

金融領域を中心に戦略から実行支援までを担当。
官公庁、金融機関に加え、 楽天のような金融を活かして経済圏を作っていく異業種のクライアントとの業務や、金融を梃(てこ)にした新しい社会の在り方や価値の創造についても活動。最近は、これに加えてPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)*向けを中心としたビジネスデューデリジェンス、その後の統合支援についても担当。

*複数の機関投資家や個人投資家から資金を集め、それで未公開株を取得し、株の価値が十分高まった後に売却することで、収益を上げることを目的とした投資会社

―一昨年開催された Youth Co:Lab(ユース・コーラボ) (国連開発計画(UNDP)・シティファウンデーション共催のプログラム)のSDGsビジネスコンテスト、「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2022」で受賞した3組の社会起業家チームに対し、シティグループとデロイト トーマツ グループが合同メンタリングを実施されたということですが、どういう経緯でデロイト トーマツ グループが関わることになったのかその背景や経緯を教えてください。

波江野)もともとGlobal Health等の文脈で幅広い国連機関といろいろな形で連携させていただいていた経緯があったのですが、そんな中、我々のWebサイトをご覧になったUNDPの方からコンタクトをいただきました。お互いに「社会に貢献していきたい」という思いが根底にあり、それをどのように社会にアプローチしていくことが可能なのかということについて、ブレストする機会がありました。

その際にこのコンテストについてご紹介いただきました。もともとシティグループがスポンサーをしていたので、「シティグループの強み」とこれにプラスして、我々の「“デロイトらしいプロフェッショナルファーム”としての強み」を活かして連携することが、メンティの立場からすると有益なのではないかということや私達メンバー自身で関心があるメンバーについても大きな学びがあるのでは、ということで、デロイト トーマツ グループとシティグループが合同でメンタリングを実施することになりました。
 

―今回、三由さんは実際にメンターとしてご参加されたそうですね。実際メンタリングを実施されてデロイト トーマツ グループとシティグループの強みの違いはどのようなところなのでしょうか。

※今回のメンタリングにデロイト トーマツ グループからメンターとして参加されたのは、三由 優一さんの他、Daniel Arielさん、奥平 浩二郎さんの計3名。

三由)メンティであるスタートアップの皆さんは、Willの部分を非常に強く持たれていました。それに対し、我々は数あるビジネス戦略を立ててきたという実績を活かし、ビジネス戦略の視点でアドバイスをしていきました。

一方で、スタートアップの皆さんが非常に悩まれている課題の一つに資金調達の面があり、その課題については日々、様々な企業に投融資をされているシティグループならではの実務家の視点がとても参考になりました。投資家に対してのエクイティストーリーをどのように語ればいいかなどの具体的なアドバイスもありましたし、例えばスタートアップの成長を考えるにはPL(損益計算書)だけではなく、BS(貸借対照表)やキャッシュフローの部分まで拾いにいく必要があるなかで、彼・彼女らの視点・考え方は、改めて私たちの気付きにもなりました。

あと、私がご一緒したシティグループの方は、ベンチャーキャピタル(以下VCと略)とのリレーションをお持ちの方で、彼自身が持っているネットワークを駆使しながらメンタリングをすすめていく点などは、特に印象に残っています。今回のスタートアップのエクイティストーリーをリアルなVCからみたらどう映るのか? 壁打ちの機会を提供し、実際にアプローチしているVCから資金援助してもらえるようなストーリーを磨き上げていく上で、実効性のあるアドバイスをされている点には私自身、大いに刺激を受けましたし、シティのご担当者の貢献は大きかったですね。
 

―三由さんがご担当されたプロジェクトを合わせ3組の社内起業家チーム全てに対し、同じように資金面やどうビジネスを展開していくかという部分でのアドバイスをされていたのですか?

波江野)そうですね。地域やテーマは違えども、1年、3年、5年、10年とそれぞれのスパンでどう事業を進めていくのか彼らの悩みを壁打ちしたり、アイデアや専門知見を出していったりというところは同じですね。我々はビジネス面からのアプローチ、シティグループは投資家目線でのサポート。その構造自体も同じです。
 

―どのテーマも非常に難しいテーマであると思いますが、3者でメンタリングしていて煮詰まってきた時はどのように乗り越えていたのですか?

波江野)本件に際して、3人の管理職メンバーに業務時間の外でボランティアとして関与いただきました。デロイト トーマツ グループのその3人のメンバーは一人ひとりが、難しいテーマに対応できる能力をお持ちだとアサインする前から知っておりましたし、そういう意味で自信をもってアサインしました。とはいえ、やはり対応しきれない問題は出てくることがあったそうで、そういう時は我々グループの強みを生かし、専門家に連携したり相談したりして解決していったと聞いております。
 

―波江野さんは今回メンタリングには参加されなかったそうですね。どういったお立場からこの合同メンタリングに関わっていらっしゃったのでしょうか。

波江野)私の大きな役割は全体の統括の部分です。

メンタリング前後に、UNDPやシティグループとの調整を目的・期待値・役割分担のすり合わせをしたり、あとは各デロイトのメンバーとどの社会起業家をマッチングさせるかという部分を検討したり、社会起業家、シティのメンター、そして我々と3者が組むことでどうプラスに動かしていくのか、どういう交流の仕方がいいのか、どのくらいの期間をかけるべきなのか、という大きな方針を固めていくことが私の役割でした。

メンタリングに関しては、メンターの方々がビジネススキルはもとより、リーダーシップ、他者との連携に非常に長けており、実務面は安心してお任せしておりました。
 

―今回の合同メンタリングを通して感じたプロボノ活動の魅力や気付きなどがありましたら教えてください。

三由)私が今回メンターをさせていただいたスタートアップの企業は、アフリカの農村部に対し、デジタルプラットフォームを構築するというビジネスでした。我々は常々“本当に変革の気合があるクライアントと一緒に仕事をしたい”と思っておりますが、想定以上の熱いpassionをお持ちの方々でした。また前述でもお伝えしたように新しい視点を得たことは気付きでもありましたね。

ですが、何より自分が感銘を受けたのは、彼らのattitudeです。

メンタリングを実施した時点では既に、彼らは企画を立ち上げ、実際にアフリカの農村部にまで足を運び、アフリカでのビジネスを展開し始めている段階だったのです。資金調達に向けたビジネスプランはコンサルさながらのものでしたし、実ビジネスを通じて得た手応えもひしひしと伝わってくる内容でした。そのような中で、実際アフリカにも足を運んだことのない我々メンターがいろいろアドバイスをし、厳しい指摘もする。普通なら「現場を知らないあなた達に何が分かるのか?」とムッとなりますよね?にもかかわらず、それについて反論することなく、真摯に私たちの指摘を受け止め、ブラッシュアップしていくための議論を前向きにしていくのです。そして実際に、次のメンタリングまでにしっかり磨きこんだ形で持ってくるのですよ。でも根っこの部分にはぶれない芯を持っていて、その芯はしっかりと持ちつつも、アフリカ事情について彼らのように知識のない我々からの意見を受けいれ、より社会に価値あるものを作るために自分たちの事業を発展させていこう!という姿勢や態度は本当に素晴らしい!うちの会社のメンバーにもぜひ見習って欲しいなと思います 笑 

こういう姿勢を学ぶことって、通常業務だとなかなか味わえないことなので、プロボノ活動の大きな魅力だと思います。

写真右から三由さん、シティグループのご担当者、スタートアップの方々

―合同メンタリングを別の角度からご覧になっていた波江野さんはどのようにプロボノ活動の魅力を感じられていましたか?

波江野)私たちは戦略ユニットの中で、戦略的事業を進めていくことを考える一方で、日々社会や世の中をよりよくすることに貢献したい、ということを強く、意識しています。そのような意識の中で、三由さんからもお話がありましたが、自分の人生をかけて、限られた期間の中で質の高いアドバイスを求められるということは、我々プロフェッショナルにとっても非常に勉強になりますし、ユニット全体にとっても非常に刺激になります。

また、社会に貢献したいというだけでは十分ではなく、持続的に貢献していくためには、ビジネスという側面を考える必要があります。ビジネスとして成立していなければ、持続的に活動することは不可能ですし、スタートアップの彼・彼女たちは小さいビジネスなので、この案件がうまくまわらなければ「会社が潰れてしまうかもしれない」という危機感の中で、ある程度スピード感を求められます。我々は無料でお引き受けしているとはいえ、社会起業家の貴重な時間にたいしての責任もある。その限られた時間の中で彼らにとって意味のあること、アドバイスができなければ失望させてしまう。いい意味で我々のプロフェッショナルとしての腕前を試されているようなそんな気持ちもありました。

今回はUNDPやシティグループにも我々デロイト トーマツ グループの貢献は評価をいただいており、おかげさまで、ぜひまた来年もお願いしたいと言われるに至っています。
 

―アフリカの農村部で新しい通信環境を拡大させていくというのは想像しただけでも大変だと思いますが、具体的にどのようなアドバイスをされたのですか?

三由)状況としては既にアフリカでビジネスを開始していて、複数の農村部で実際にサービスも展開されており、無償トライアルを経て有料化にチャレンジしているというところでした。

そこでもっと多くの農村部に広げていきたい!でも、事業を展開していくためには費用がかかりますよね。ではその費用を集めるためには、VCをはじめとする投資家からどうやってお金を出してもらうのかというポイントが一番の課題でした。また、資金繰りという課題に加えて、資金を集めてもそれをどう有効に使うのか、という面についても課題が山積みでした。

彼らは、どういう順番でどのように目標をクリアしていくか、また次のステージに進めていくにはどうすればいいのかなど、5年後、10年後このビジネスをどう発展させていくかというための大きなロードマップを描いていました。それに対し、我々はプロフェッショナルの視点から、この数値目標って達成できるの? どう実現するの? と、絵に描いた餅ではなく、現実を見据えた具体的なアドバイスをしていきました。

例えば、今回のビジネスは小さな基地局を各村において、疑似的にインターネットを繋ぐ環境を作っていくというアイデアなのですが、アメリカの起業家であるElon Mask氏は地球上のあらゆる場所での高速インターネットアクセスを目指すというプロジェクトを計画していたりもします。そういった話が今後具体化していったら、今回のようなビジネスは必要なくなるのではないか? とか、結局、アフリカの農村部の人たちにどのような価値を届けることがこのビジネスの本質なのか? などもっと突き詰めていく必要があるねと、踏み込んだ部分にまでいろいろと相談に乗っていました。

あとは、実際に資金を集めた後の使い方も重要で、使い方を間違えれば事業もうまくいかなくなります。その部分についても我々が中心となってビジネス戦略を磨きこんでいくためのアドバイスをしました。

一方で資金面の調達、エクイティストーリーについてはシティグループが中心となり、コラボしながらメンタリングを実施していったという流れです。

メンタリング成果発表会にて

Photo: UNDP Tokyo

チャレンジしたい!が叶えられる環境
 

―話はガラッと変わりますが、お2人が感じるWell-beingなひとときをプライベートでもお仕事についてでもいいのでぜひ教えてください。

三由)私は今、日々、Well-beingを感じています!

Well-beingって、仕事においていえば私の場合は「働き甲斐」だと思っています。もう少し詳しく言うと、「働き甲斐」というのは、私にとって三つあり、「どういう仲間と仕事をするか」「どういったテーマに取り組めるか」あともう一つは「取り組んだテーマに対してのクライアントからの評価」というところですね。二つ目の「どういったテーマに取り組めるか」という部分についてはデロイト トーマツ グループに入社して大きく変わったなと思う部分です。

デロイト トーマツ グループは自立分散型を指向しているような組織体系に私は見えています。当然やるべきことというのはありますが、それ以外に自分がやってみたい! やりたい! ということに対し積極的にサポートしてくれる環境であり、それが全てのメンバーに与えられている機会だという点が非常に「働き甲斐」を感じる大きなポイントです。私はそれを最大限使用していて、Well-beingに繋がっていると感じています。

波江野さんがこの場にいるからということではなく、私の本音です 笑
 

―波江野さんはいかがですか?

 波江野)私自身は長く海外に住む機会があり、その国に永住するか日本に帰るかを迷いつつも、最後帰ってきた大きな理由の一つは、日本の「ヘルスケア」産業や多くの企業の当該領域のビジネス化に貢献したい! という気持ちがあったからです。このビジネス面とやりたいこと(「ヘルスケア」事業に貢献する)の双方を鑑みて、合理的に機会を提供してくれる、これこそがPlanetaryやSocietal Well-beingに繋がっていると思っています。やりたいなと思うことはメンバーそれぞれあると思いますが、舞台を整えれば、チャンスや機会を提供してくれる=Well-beingを提供してくれる企業・チームであると思います。Personal Well-beingということに関しても、人それぞれ大事にするものは違う中、そのことを皆お互いに理解しようとし、その中で全体にとって一番良い方法は何かを考えることではないかと考えています。

理解しようとしなければ誤解が生まれ、誤解が生まれるほどWell-beingとは離れていく。信頼関係というのが大事ですよね。私たちの組織にはそういった意識が高いメンバーが多いことが幸せだと思うところです。

私個人としては、少なくとも今のライフステージにおいて、夕方5時に業務を終えて他のことをやりたい! というようなことにWell-beingは感じないですが、休みが急遽必要になれば、どうすれば休みがとれるのかを考えてくれる環境にあります。一人一人違う環境にある中で、自分の働き方をコントロールできることが多ければ多いほど、多様なそれぞれの価値観のWell-beingに対応できると思うし、そういうFlexibilityがあることがこの会社・メンバーのいいところなのではないかなと思っています。
 

―プライベートな時間にWell-beingを感じるひとときもお聞きしたいです。

 波江野)プライベートでは旅行が好きですね。違うものをみたり、違う文化にふれることでいろいろなことを考えたり・リフレッシュできますし、Well-beingなひとときだと思います。

昔と違い、ワーク・ライフ・バランスというよりは、ワーク・ライフのintegrationを希望すればうまくできるような環境になったので、旅行もしやすくなったし、便利になっていると感じます。昨年はサッカーのワールドカップも行きましたし、今年は海外では、イギリス、ベルギー、デンマーク、ドイツ、シンガポール・国内でも金沢とか、九州とかですかね。
 

―お忙しいのに、いろいろなところに行かれているのですね!

波江野)ありがたいことに、時間は作ろうと思えば環境にあるので。違う環境に身を置き、いつもと違う景色をみて、違うものを食べて、それは本当にリフレッシュになりますね。 
 

―コロナを挟んでワーク・ライフ・バランスというよりは、ワーク・ライフのintegrationをうまくしながら仕事を楽しそうにやっている方が多い気がしています。情熱を注いでいる仕事があったときに、9時-17時で絶対離れちゃダメっていうよりは、疲れた時は休む、大きなプロジェクトのあと2週間休んでリフレッシュなど今までとは違うフレキシビリティが求められている気がしますが、いかがですか?

波江野)おっしゃるとおりですね。私はデンマークで5年強働いていたのですが、その際は年間6週間ぐらいお休みがありましたし、夕方も16時頃にはオフィスを離れる人も多いです。それがいいとか悪いとかではなく、やはり一人ひとりどうしたいのか、どういう時間の使い方をしたいのか、どれだけFlexibilityがあるか、仕事面でいえば、その中において国際社会で戦っていくうえでの生産性が高いのかというのが重要だと思います。

自分の1日=24時間、1年=365日をどうコントロールできるのかと考えたときに、自分が使いたいように時間が使えることって重要ですよね。

ただ、このワーク・ライフのintegrationの前提には、仕事が楽しくなくてはいけないですし、プロフェッショナルとしての高い意識が必要だと思います。仕事が苦痛だったとしたら、だれもインテグレートしたくないですよね。また、いい仕事をお客さんに対して提供したい、そういった経験を通じてより素晴らしい経験ができるようになりたいという意識がなければ、やはりうまくインテグレートできないかなとも思いました。

この部分、「”高いマインドセット“を持ったうえで、楽しくかつしっかり働ける仕事環境“」を提供すること自体が、私たちのすごく大切な施策だと考えています。本人が意気に感じる仕事があればあるほど、勤務時間を質高く・そして楽しく充実した時間にできる。そういった環境作りが我々パートナー陣にとって重要なことだと思っています。

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社会に貢献したい、社会をよりよいものにしていきたい、という言葉を何度となくお二人が話されていたのがとても印象的です。
社会がより良くなるために、デロイト トーマツ グループならではの強みが活かされる。そんなプロボノ活動の内容に迫ることができる貴重な時間でした。そしてそんな活動にチャレンジできる環境そのものがWell-beingと語っていた生き生きされているお二人の姿に感銘を受けました。

(インタビュアー:デロイト トーマツ グループ C&I/BM インターナルコミュニケーション 森谷梨永)

デロイト トーマツ グループのWell-being(ウェルビーイング)