一人ひとりのPersonal Well-beingを追求する環境づくり

自分ごととするマインドセットを推進し
公平な機会と価値の多様性を成長戦略に

#Ethics #Integrity

デロイト トーマツ グループが描くWell-being社会。
その中核を成す個人レベルのPersonal Well-beingを組織としていかに後押ししていくのか。多様な人材が個性を発揮し、周囲との共感を持ちながら生き生きと働ける環境づくりに、積極的に関わるプロジェクトがある。取り組みの意義を含め、推進への思いを聞いた。

唯一無二の財産である人材

―Ethics&Integrityについて、聞かせてください。

デロイト トーマツ グループ Ethics Officer(エシックス担当パートナー) 久保陽子 氏

久保 公共の利益に資するプロフェッショナルとして、私たち全員はIntegrity(インテグリティ、誠実さ、高潔さ)を個々人として保持する必要があります。またそれを組織として担保するための基盤としてEthics(エシックス、倫理観)推進活動があります。そして働きがいのある職場環境づくりに向けて、「Integrityを絶対視する組織風土」を構築し、サステナブルなエシカルカルチャーを醸成していくのが、Ethics Officerである私の役割です。

 一般に職業倫理強化は、罰則規定で〝やってはいけないことをやらせない〟印象が強いものですが、私たちのそれは、自分ごととして認識することを底辺に据えています。グループ共通の仕組みであるDeloitte Speak Upが、大手プロフェッショナルファームとして初めて消費者庁所管の「内部通報制度認証」適合事業者として登録されるなど個々人が安心して働ける仕組みの整備はありますが、本質的には組織としての意識付けが不可欠です。人材は我々にとって唯一無二の財産です。急激な成長を続ける中で、2年ほど前から人材が働く職場環境について改めて見つめ直す必要があるという課題意識が共有されるようになり、トップマネジメントのコミットを得て、本腰を据えて取り組んでいます。

―具体的な活動やこれまでの成果を教えてください。

久保 全員必須参加でワークショップを行ったり、社内外の声を交えたニュースレターを様々なテーマで発行しています。また、共同経営者にあたるパートナーには行動変革宣言をしてもらい、その組織への浸透度をアンケートで測り組織単位の相対比較評価をフィードバックすることで、組織及び個々人の変革が加速しています。

 今では、Ethics & Integrityが各種会議での冒頭のテーマとなり、トップの意識が相当に変わってきています。また年次のEthics Surveyの結果も昨年大幅に改善し、社職員のほとんどが「デロイト トーマツはEthicsを重視する職場である」と回答しています。日本の取り組みはデロイトのグローバルネットワークの中でも評価され、ロールモデルとして他国に事例共有されるようになりました。

多様性の輪をエコシステムとして

―DEIの取り組みについて、聞かせてください。

デロイト トーマツ グループ パートナー DEIリーダー 大久保理絵 氏

大久保 最近の大きな動きとして、多様性の確保とそこから得られるベネフィットの実現に向け、D&Iに公平を意味するEquity(エクイティ) を加え、Diversity, Equity & Inclusion(DEI)と呼称を変更しました。デロイト トーマツではDEIをビジネス戦略として位置づけていますが、平等(Equality)ではなく公平(Equity)にこだわるのは、多様な人々がいる中、同じ形のモノ(支援)を万人に与えることが、必ずしも個々人に最適な価値発揮の機会を提供していることにならないからです。これまで多様性の確保とインクルーシブな環境づくりを目指して取り組んできましたが、これからは、「個々人が生き生きとその価値を発揮できる機会が公平に与えられている」組織と環境作りにも力を注ぎます。この点はまさにDEIがPersonal Well-beingとリンクする部分で、これを端的に表す図も制作して説明しています。

 具体的な活動は様々あり、認定や表彰も多数頂いていますが、中でもユニークな施策に「パネルプロミス」があります。大きなイベントや会議等の登壇者の比率を男性40%、女性40%、多様性枠20%にするというもので、これをルール化して展開しています。このバランスによって参加者が目にする人物の多様性を確保し、人物像に関する組織の経験を変えていくと共に、発信されるメッセージの質を高めていくことが狙いです。

―取り組みが目指すべき方向性を聞かせてください。

大久保 企業文化やリーダー像を変え、様々な人の違いを強みとして発揮できる組織を作るには、見えない課題を発掘し、新たなイノベーションを起こすことが求められます。それを社会に還元することで、社会全体の持続可能性を高めることにつながり、私たちも様々な形でその恩恵を被ることになるでしょう。自社に閉じることなく、あらゆるステークホルダーを巻き込みながら、多様性の輪がエコシステムとして広がっていくことを願い、またそれを目標に積極的な発信を行っています。

―Personal Well-beingとのつながりについて、どのようにお感じですか。

久保 EthicsとIntegrityは、ウェルビーイングの根幹を成すものです。デロイトでは一本の木に模して語られ、幹や葉となる企業活動やDEIを実らせ、永続的に存在するために不可欠な存在です。最終的には個人に帰結する価値観であるため、他人から言われてやるのでは意味がありません。私も発信時は、「私たちに協力してください」ではなく「ご自身で尽力ください」と言うようにしています。

大久保 先に挙げた〝個々の価値発揮の機会〟は、配慮をする側と配慮を受ける側によって成立する関係を求めるのではなく、自分のニーズが主張でき、それに対して会社もカスタマイズされた支援が提供できるという関係性が求められます。身の回りで当たり前となっている環境やスタイルを変える強い意識が必要で、〝言うは易く行うは難し〟です。しかし、それがあって初めて個々人がPersonal Well-beingを自分のものとすることができ、その集合体である会社の文化が変えられるのです。




日経MOOK『グリーン・トランスフォーメーション戦略』(日本経済新聞出版)より転載。

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