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決済とモビリティの未来

進化するモビリティエコシステムにおける決済プロバイダーの価値創造と機会獲得の方法とは?

消費者は、日常のトランザクションの大半を占めるシームレスな決済に慣れています。このため、移動やサービスの決済に関して、統合されたセキュアな方法を求めています。決済プロバイダーにとって、これは、課題と機会の両面を意味します。

イントロダクション:決済の対象者と方法とは?

先進的なリテーラーやテクノロジー企業は、従来の銀行業務、決済およびその他の関連アクティビティをもっと簡単にできるようにするエクスペリエンスの向上、さらにはシンプルで、シームレスな統合を金融サービス業界が生み出すよう、高いハードルを課しています。オムニチャネルコマースの発展と先進的なテクノロジー企業の存在によって、金融サービス業界のオープン化と決済エクスペリエンスの向上の実現が飛躍的に加速しています。そして、決済はすでに、容易なものになりつつあります。大半の商用サイト、ブラウザ、さらにスマートフォンは、クレジットカード情報の保存ができ1、マーチャントや窓口へのインスタントペイメントや送金を可能とし、先進的なショップやレストランはキャッシュレスになりつつあります2

このため、人や物品を運ぶモビリティエコシステムが進化するにつれ、消費者が同等以上のレベルの容易さと便利さを求めることは、不思議ではありません。レンタルバイク、タクシーの乗車、荷物の引き取り、さらにはフードデリバリーといったアプリの利用者は3、あらゆる移動やサービスの支払いのための統合された、プライベートでセキュアな方法を求めていきます。

現代のショッピングと請求書支払いの舞台裏では、さまざまな取引が生じています。スマートフォンユーザーが利用するのは2、3個のワンタッチ決済アプリ4であっても、そのシンプルなインターフェースの下には、新しい手法で提携した新しいエコシステムを構築している企業による、変化を伴う複雑なインフラが存在しています。

そして、モビリティの未来は、このエコシステムをさらに拡大することが予測される、一連のまったく新しいプレイヤーとサービスと共に到来しつつあります(囲み記事「未来のモビリティエコシステム」を参照。大方の予測では、新しいモビリティエコシステムのトランザクションは、複数の交通手段だけでなく、補助的サービスまでを網羅する、ひとまとまりのサービスになります。このようなモビリティアズアサービス(MaaS)プラットフォーム用の決済フローの促進が重要なコンポーネントの一つとなる5 ということは、すなわち、決済プロバイダーが成功するには、新しいモビリティエコシステムの形成における自社の役割を見出さなければならなくなるということです。さもなければ、現在の顧客にとっての重要性を失う恐れがあります。

本稿では、モビリティの進化が決済プロバイダーに及ぼす影響、さらにはこの急速に変化を遂げるエコシステムにおいて成功すべき機会について考察していきます。そのゴールは明確です。未来のモビリティエコシステムにおける決済は、目に見えない、シームレスで、統合され、極めて便利になることが求められています。

モビリティの未来は、このエコシステムをさらに拡大することが予測される、一連のまったく新しいプレイヤーとサービスと共に到来しつつあります。

未来のモビリティエコシステム

人々や物品がA地点からB地点まで移動する方法は、技術面と社会面の一連の集約的な勢いに推進されて、劇的に変化しています6。この移行のスピードと経路の詳細は依然として不明瞭ですが、2040年までに、シェアード自動運転車は、米国の走行距離の半分以上を占めると予測されています7。将来的には、特に都市部において、シェアード自動運転車による移動は、現在の従来型交通と同じように、複数の乗り物を経由して移動できるようになるでしょう。さらに、この新しいモビリティエコシステムは、オンデマンドのインターモーダル移動の提供(図1)に加えて、移動中に製品やサービスを提供するようになります。そのうえ、乗客は、現在のように、各ステップで対応することなく、迅速かつ安全に、シームレスに、バックグラウンドで、これらの製品やサービスの支払いができるようになることを求めていくでしょう。実際に、このエコシステムの要素の多くは、シェアードモビリティプロバイダーから、新しいタイプのコネクテッドインフラまで、すでに存在しています。(モビリティの未来がさまざまな業界を広げ、これらに影響をもたらす内容に関する全体的な考察については、完全版のDeloitte Insightsリサーチコレクション(英語)をご覧ください。)

未来のモビリティシステム
出所:Deloitte analysis

脚注:

  1. Val Srinivas, Stephen Fromhart, and Richa Wadhwani, “Default” payment methods, Deloitte University Press, Oc- tober 21, 2016.
  2. Henry Grabar, “No shirt, no swipe, no service,” Slate, July 24, 2018.
  3. Deloitte University Press, The future of mobility: Ben’s journey, video, November 4, 2016.
  4. Christian de Looper, “Sending money to a friend? Which is the best app for that?,” Digital Trends, August 30, 2018.
  5. Warwick Goodall et al., “The rise of mobility as a service,” Deloitte Review 20, January 23, 2017.
  6. Scott Corwin and Derek M. Pankratz, Forces of changes: The future of mobility, Deloitte Insights, November 16, 2017.
  7. Scott Corwin, et al., Gearing for change, Deloitte University Press, September 29, 2016.

プロフェッショナル

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パートナー 執行役員
田邊 愛貴

金融機関をはじめとし多くの業種において、財務会計・管理会計を中心とした経営管理基盤の整備を数多く手がけている。

また、戦略立案・組織再編・全社システム導入・業務改革など、関連したテーマに関しても幅広く経験を有する。>>さらに見る。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
アソシエイトディレクター
赤星 弘樹

IT系コンサルティングファームを経て現職。

『Blockchain & Payment』領域のリーダーとして、グローバル動向把握、FinTech/Paymentを活用した事業企画、ブロックチェーン実証支援等に従事。
Fintech・デジタル領域で新聞や専門雑誌等への寄稿、セミナー登壇実績等、多数

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