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連載【保険ERM基礎講座】≪第20回≫

「グローバリゼーションとERM(その2)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(7月7日発刊号)

≪第20回≫ グローバリゼーションとERM(その2)

第20回目からは、グローバリゼーションとERMの関係性について考察いたします。

1. 監督のハーモナイゼーション

各国の保険制度は大数の法則という同じ仕組みの下で運営されているものの、保険ビジネスの特徴は各国によって違いがある。これは各国における保険制度の歴史的生成過程が異なっているためである。そのため、現実の保険監督・規制も各国によって違いがある。

保険会社の活動が多国籍化するに伴い、グローバルに整合的で効果的な保険監督を促進すること、そして、グローバルな金融(システム)安定に貢献することの重要性の認識が高まってきた。1994年には、IAIS(International Association of Insurance Supervisors: 保険監督者国際機構)が国際的な基準策定団体として設立された。現在約150カ国の200を超える管轄区域から、保険監督者および規制者からなる組織となっている。各国の監督者が国境を跨る保険会社の活動を意識し、金融システム安定化に関するモニタリングや契約者保護に関する監督を実施する際、IAISとの間で、また関連する各国間で協力したり、情報を共有するための国際情報交換合意(MMoU: Multilateral Memorandum of Understanding)を交わしている。現在、55の国・地域がこれに参加し、全世界の保険料ベースで約65%がカバーされている状況にある 。

2. システミックリスク

2008/09年の金融危機において、ほとんどの保険会社はシステミックリスクに対して、他の金融機関よりも相対的に強い耐性を証明した。その要因として、(1)伝統的な保険引受リスクが一般に金融市場リスクと相関しないということ(2)資産側は銀行と同様、市場リスク、信用リスクに晒されるが、投資ポートフォリオが、保険負債の特性にマッチして選択されている(ALM管理)こと(3)一般に投資の資金源が保険料収入を主としており、過大なレバレッジを使用しないこと―などが挙げられている。一般に巨大な保険事故が発生しない限り、保険金支払いによる極端な資金流出を免れるため、流動性を損なうことにならなかった点は銀行の状況とは大きく違っていた。

3. グローバルな規制

IAISは、保険会社の事業の種類に応じて、国内で活動する保険会社、グループ、国際的に活動する保険グループ(IAIGs: Internationally Active Insurance Groups)、グローバルなシステム上重要な保険会社(G-SIIs: Globally Systemically Important Insurers)に区分し、それぞれに必要な規制・監督に関する論議を進めている。現在IAIGsやG-SIIsに対しては、ICPsに加えComFrame(国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)やICS(Insurance Capital Standard: 保険資本基準)に関する論議が進められている。また、G-SIIsに対しては、金融危機の教訓を踏まえ、監督当局によるマクロプルーデンスモニタリングの強化と資本の強化(HLA:Higher Loss Absorbency Requirement: 上乗せ資本)の論議が進められている。(図表参照)

4. システム上重要な保険会社への対策(1)

金融のグローバル化の進展と金融危機を教訓として、金融システムに重要な影響を及ぼす金融機関・保険会社への規制強化が進められている。金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図ることを通じて金融システム全体の安定を確保することをマクロプルーデンスと呼び、個々の金融機関の健全性を確保するミクロプルーデンスと対置される。保険負債は銀行とは異なる特性を持つため、金融システムとの関わりは同じでない。しかし、例えば複数の保険会社の健全性が悪化し、保険市場自体の信頼性に不安がもたれるような事態に至ると、保険が果たす経済や金融への役割から、それらへの悪影響が懸念される。

 

つづきは、PDFよりご覧ください。

(PDF、1,541KB)

IAISの国際的な監督要求の構造

出典:IAIS、Newsletter April 2015、P.2を基に作成

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デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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