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連載【保険ERM基礎講座】≪第24回≫

「ERMの実効性(その2)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(9月15日発刊号)

≪第24回≫ ERMの実効性(その2)

1. コンダクトリスクに関する国際論議

コンダクト(事業行為)は、さまざまな要素に影響を受けている。企業活動は、個々の組織構成員の行為の総体である。意図する行為に反する結果が起こり、その原因が究明されるたびに、われわれの意思決定や行為は検証されてきた。各組織構成員の意思決定・行為を組織として統合し、一つの目標に収斂(しゅうれん)させることは容易ではない。保険のコンダクトリスクに関する国際的な論議は、IAIS(保険監督者国際機構)に設置された専門グループ(Market Conduct Working Group)の中で進められている。これまで、二つのイシュー・ペーパーが発表されている。健全な保険セクターの形成をを促進し、保険契約者を保護するために必要な保険監督にあたっての基本原則を定めた監督文書として、ICPs(Insurance Core Principles:保険基本原則)がある。・・・

2. コンダクトリスク対応の戦略的意義

コンダクトリスクへの対応を怠ると、罰金、是正措置、訴訟費用、風評被害などの悪影響を生むという意味で、純粋リスクへの対策といった側面があるのは事実である。しかし、昨今議論されているコンダクトリスク対応は、保険会社の戦略性にも言及している。つまり、効果的なコンダクトリスク情報によって、上級経営陣は顧客のウォンツやニーズをより明確に理解した上で、問題により良く対応できることから、信頼を積み上げることが可能となる。それ故、コンダクトリスクモニタリングを経営情報の一つに加え、リスクカルチャー醸成の枠組みとして組み入れることが期待されている。同時に、ERMの実効性向上に大きく影響を及ぼすリスクカルチャーの醸成と結び付ける戦略的思考が重要視されている。・・・

3. ビヘイビアへの注目

従来のオペレーショナルリスク対応は重大な事故をトリガーとし、その類似の事故の再発防止に主眼が置かれる傾向があった。これに対し、コンダクトリスクへの対応は、ビジネスプロセスにおけるヒヤリ・ハットに着目し、消費者への不公正な結果に至る要因への事前対応に主眼が置かれているものと考えられる。オペレーション(アクション)の仕組みを統制するプロセスにコンダクトリスク管理の視点を付加する必要がある。その場合、そのプロセスの中に介在する人の判断、その結果取られるビヘイビアを重視しなければならない。・・・

4.コンダクトリスクのモニタリング

コンダクトリスクの有無を洗い出す際には、契約者がどのような状況にあるかを十分理解する必要がある。例えば、金融知識をあまり持っていない顧客の場合には、情報の非対称性を意識した上での対応が必要になる。さらに提供する商品が複雑な場合には、ディスクロージャーやアドバイスの質、さらにはクーリングオフ期間への配慮などが必要になろう。販売手数料の設定に偏りがあった場合、顧客のニーズとは異なる販売誘因が課せられることもある。例えば、販売量にのみリンクした手数料ベースの保険販売の仕組みが消費者ニーズとは離れるにもかかわらず、売りやすい商品をプッシュ型で販売する傾向となる恐れもある。・・・

 

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(PDF、1,677KB)

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デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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