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連載【保険ERM基礎講座】≪第25回≫

「ERMの実効性(その3)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(9月29日発刊号)

≪第25回≫ ERMの実効性(その3)

1. 実効性担保とERM

企業の将来は、いわば不確実性の宇宙の中にある。いかに適切に不確実性に対処するかがERMの目的である。ERMの実効性向上を戦略的に捉えようとするなら、まずポジショニング理論(注1)の枠組みを活用することが有用である。つまり、自社がどのようなハザード・リスク環境の下で、いかなるポジションに身を置いているかを認識すること、その上でリスク戦略を立て、的確なリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を設定する必要がある。・・・

2. グローバリゼーションと実効性

国際展開する保険グループにおいては、ポートフォリオがグローバル環境下において、どのようなポジションにあるかを意識した戦略、リスク管理が不可欠である。 金融危機以降の世界経済の特徴は、①経済の低成長②財政赤字の拡大③低金利の継続④コモディティ価格の低下とインフレの抑制―などといえる。一方、保険市場のここ数年の特徴は、①資本の流入による保険キャパシティーの拡大②資産運用収益は低下しているものの巨大保険事故が相対的に少なかったため、過去の責任準備金のリリースの影響もあり収益性の水準が維持されていること③巨大な自然災害が比較的少ないことや資本市場からキャット・ボンドなどの代替的リスク移転のキャパシティーが拡大したこともあり、再保険市場はソフト化していること―などである。・・・

3. 個人責任とリスクカルチャーの醸成

保険会社においてERMは経営のコアとなる枠組みである。従ってその基本方針たるRAFはトップ・ダウンで提示する必要がある。ただ企業活動の成果は組織構成員すべての活動の結果といえる。ERMの実効性は、このトップ・ダウンと、ミドル・アップアンドダウン、ボトム・アップそれぞれの動きが連動しなければ総合的な機能発揮はできない。その意味でも、各業務を担っている個々人の活動へ注目が高まっている。・・・

4.リスクガバナンスの新たな視点

前述のEIOPAの枠組みからも明らかな通り、今後の保険会社のリスクに対するポジショニングは重層的である。自らの立ち位置を客観的に確認するためにも、環境の下で従来の枠組みにはない新たな視点を組み込むことも大切である。視点を変えたとき、これまで見えなかったものが見えてくるように、時代にふさわしいフレームワークがなければ捕捉が難しいこともある。これまで、リスクガバナンスの典型的な枠組みとして「3 本の防衛線( 3 Lines of Defense)」という考え方が定着している。金融安定研究所(FSI)が公表したレポート(注6)は、金融危機の教訓を踏まえると、「三つの防衛線」が不十分であると指摘している。例えば、①第1線の評価に対するインセンティブと内部統制システムとの間に矛盾が存在すると十分機能しないこと②第2線の独立的機能が次第にリスクテイク部署の意見に染まってしまうとうまく機能しないこと③複雑な商品とモデルに関する知識が要求されることから、第2線のスキルと経験が不足すると第1線を制御できないこと④第1線に、より上位ランクの人材が配置されると第2線の反論が困難になりやすいこと―などが例示されている。・・・

 

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(PDF、1,740KB)

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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