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連載【保険ERM基礎講座】≪第26回≫

「パラダイムシフト(その1)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(10月13日発刊号)

≪第26回≫ パラダイムシフト(その1)

1. パラダイムシフト

パラダイム(思考の枠組み)という概念について、トーマス・S・クーン(注1)が次の通り説明している。「あるパラダイムで説明されるべき事実が全て説明されているうちは、そのパラダイムは安泰である。しかしそのうちに、パラダイム内で説明できない変則事例が生じてくる。変則事例が無視できない重みを持ちはじめたとき、パラダイムは危機に陥る。この変則事例を説明できる新パラダイムが見いだされたとき、科学革命が起こる。やがて、新パラダイムが支配的になり、従来のパラダイムは旧パラダイムとなり、歴史の彼方に消えていく」。・・・

2. 会社価値の枠組みの変化

企業活動には資本や資金が必要である。投資家が株式や社債へ投資する見返りは、将来支払われる配当や利息という形で報われる。いずれも企業が将来生み出すであろうキャッシュフロー(経済価値の源泉)に依存している。この経済価値に関する情報は投資判断において重視される。従って、企業の業績を開示する財務情報の枠組みが変われば、企業と投資家とのコミュニケーションも変わる。・・・

3. 業務管理の変化

これまでの保険会社の業績管理は、発生した費用と実現した収益を対比させ、期間損益を安定的に確保することに主眼が置かれていた。同時に、保険会社の特徴である保険負債の将来の不確実性に対しては、例えば損保の自然災害リスクに対する支払財源を確保するための異常危険準備金や、超長期の負債を抱える生保の将来の支払財源を保守的に確保するための標準責任準備金といった制度を導入して期間損益を管理している。また他方、保険会社の抱える資産、負債の不確実性を管理する目的で、ソルベンシー・マージン比率による管理が導入され、収益管理とリスク管理が並存する管理体制が構築されている。・・・

4.リスクガバナンスの新たな視点

前述のEIOPAの枠組みからも明らかな通り、今後の保険会社のリスクに対するポジショニングは重層的である。自らの立ち位置を客観的に確認するためにも、環境の下で従来の枠組みにはない新たな視点を組み込むことも大切である。視点を変えたとき、これまで見えなかったものが見えてくるように、時代にふさわしいフレームワークがなければ捕捉が難しいこともある。これまで、リスクガバナンスの典型的な枠組みとして「3 本の防衛線( 3 Lines of Defense)」という考え方が定着している。金融安定研究所(FSI)が公表したレポート(注6)は、金融危機の教訓を踏まえると、「三つの防衛線」が不十分であると指摘している。例えば、①第1線の評価に対するインセンティブと内部統制システムとの間に矛盾が存在すると十分機能しないこと②第2線の独立的機能が次第にリスクテイク部署の意見に染まってしまうとうまく機能しないこと③複雑な商品とモデルに関する知識が要求されることから、第2線のスキルと経験が不足すると第1線を制御できないこと④第1線に、より上位ランクの人材が配置されると第2線の反論が困難になりやすいこと―などが例示されている。

 

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(PDF、1,698KB)

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デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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