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連載【保険ERM基礎講座】≪第3回≫

「保険ERMと温故知新」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(10月29日発刊号)

≪第3回≫ 保険ERMと温故知新

1. ガバナンスとは

ガバナンス(Governance)という言葉を目にすることが多い。その対象とする領域によって、
コーポレート・ガバナンス、グループ・ガバナンス、ITガバナンスなどとさまざまに使われている。
一般に統治(組織をまとめて治める)と訳されている。ガバメント(Government)は、例えば、政府が上の立場から行う法的拘束力のある統治システムであるのに対し、ガバナンスは、組織や社会に関与するメンバーが主体的に働き掛け、意思決定をしたり、合意形成をしたりするシステムのことである。株式会社においては、株主総会において役員の選任・解任権を行使するといった組織型アプローチや、株価を通じて経営にプレッシャーをかけるといった市場型アプローチというモニタリング・システムと、経営にインセンティブを与え、自己統治させるインセンティブ・システムから成っている。取締役会が承認したリスクアペタイト(Risk appetite:リスク選好と訳されることもある。内容は後述。)に基づく業務執行がなされているかを監査委員会がモニタリングしたり、経営報酬がリスクとリターンの関係で適切なインセンティブとなっているか検討したりするなど、ガバナンスとERMの関連は深い。

2. コーポレート・ガバナンス論議の歴史

これまで企業の破綻や不透明な財務報告の問題が発生するたびに、ガバナンスが検証されてきた。これらの事態の真因は何か、それを適切に統治できなかった要因は何か、が検証され、ガバナンスは強化されてきた。今日のガバナンスの枠組みは、米英での論議に大きく影響を受けている。
コーポレート・ガバナンスに対する伝統的な議論としては、会社の所有者である株主や他の利害関係者に対して、企業の健全な運営を担保するために、どのようなシステムが適切であるかが論点となった・・・

3. コーポレート・ガバナンスとERMの関係について

英国では、80年代に相次いだ企業の破綻や財務報告の不透明性への批判に対応するため、コーポレート・ガバナンスと内部統制(Internal control)の枠組みが議論され、92年に「キャドバリー委員会報告(コーポレート・ガバナンスの財務的側面)」が公表され、その後、複数の報告書が公表された。それらを統合するものとして、「統合規範(The Combined Code)」が98年に作成され、翌99年には、統合規範を補足するガイドラインとして、「内部統制―統合規範に関する取締役のためのガイダンス(通称「ターンブル・ガイダンス」)」が公表されている。
このガイダンスでは、内部統制およびリスク管理を企業目標の達成を支援するものとして位置付け、企業がリスクベースで効果的な内部統制システムを採用することを強調し、その内部統制の効果のレビューや開示を求めている・・・

4. ガバナンスとERMの連結環: リスクアペタイト

ガバナンスとERMを明示的につなぐものとして、「リスクアペタイト」がある。これは、文字どおり「企業がリスクを取ろうとする意欲」のことである。能動的なリスクテイクは、リターンの源泉の獲得を意味し、経営目標の達成と戦略遂行に直結する。しかし、リスクの発現は資本の毀損を招く。仮に、200年に1度程度の割合で発生する予想最大損失に対しても十分耐え得る水準の資本を確保しておこうとする場合、リスクをその範囲に収めるよう財務健全性を管理することとなる。このように収益機会と損失機会をいかにバランスさせるかといった経営方針を明らかにした文書が、「リスクアペタイト・ステートメント」である。いわば、企業が将来、どのようなリスクをどの程度取り、健全性を確保しつつ、収益性を追求するかといった基本方針を明示するものである。そして、これを実現するための活動や進捗状況のモニタリング、例えば、リスクリミットの設定やリスク対比のリターン率(Return on Risk: RoR)を設定し管理することなどを盛り込んだ枠組みのことを「リスクアペタイト・フレームワーク」と呼ぶ・・・

5. 保険グループのガバナンス

日本の保険グループは、グローバル展開を活発化させた結果、多国籍の事業体で構成されている。保険取引は、保険契約者と保険会社との間での直接のキャッシュフロー取引であるため、各国の保険市場単位で規制とビジネスプラクティスが発展した。保険会社がグローバル展開を図る場合、市場ごとに固有性のある規制とプラクティスを踏まえた商品を設計し、販売網を構築する、いわゆるマルチ・ドメスティックな戦略を採っている。
多くの海外現地法人や支社を傘下に持つグループ持ち 株会社や事業本社の場合、グループとして統括機能を果たし、かつ各国のグループ会社の固有性も尊重する、グループ経営の整合性と柔軟性をいかに確保するかが重要な問題となる。これが、グループ・コーポレート・ガバナンスである。一般に、戦略と指示、監視、日々の事業執行、独立した統制(リスク管理、コンプライアンス、内部監査、保険数理)といった保険会社にとっての主要な役割を機能させ、適切に分担しなければならない・・・

 

※つづきは、PDFよりご覧ください。

(PDF、1,556KB)

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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