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連載【保険ERM基礎講座】≪第33回≫

「アイスブレイキング(その4)」(最終回)

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(1月26日発刊号)

≪第33回≫ アイスブレイキング(その4)

1. 動態的リスク管理

今日のERM体系は、経営環境の変化を捕捉し得る仕組みを備えている。しかし、ERMの体制構築と、その実効性とは別の問題である。リスクカルチャーと連動するからである。つまり、組織の各レイヤーごとのリスクカルチャー(リスクセンス、リテラシー、コミュニケーション、コンダクト)が浸透していなければ、創発型の戦略を誘発して、当初の戦略を修正し、リスク処理(リスク制御、リスク財務)の実効性を高めるといったリスクに対する組織活動の好循環(図表1)を実現することは難しい。

2. 時間軸と不確実性

人は意思決定において、一定の枠組み(フレームワーク)を自分の脳に持っているといわれている。ただ、このフレームワークは、なかなか形に表せないものであり、普段意識することは少ない。例えば、絵画のように画家の視覚的枠組みが形になって現れると、われわれはあらためてその違いを確認できることがある。西洋絵画の遠近法と違い、日本の伝統的絵画はフラットだといわれる。日本画には、遠近法のように中心がないので、左右方向には自由に移動できることから、左右方向に導線が広がる。このように、西洋とは違う空間認識(フレームの違い)があるという。われわれの意思決定における時間軸も、一つのフレームワークを構成している。実際に、リスクに対して具体的な処理を検討する場合、特定の時間軸を想定している。その事業の特性によっても大きく影響を受けるが、企業活動の成果は、四半期に1度は財務諸表として公表される。3カ月、半年、1年といった時間軸が意識される。保険会社の場合、異なる特性を持つ危険を自社のポートフォリオとして保有している。これらの危険を、保有期間と信頼水準を同一条件下で、リスク量(発生頻度と損害強度の積)で計測して統合することで、ポートフォリオ全体のリスク量を把握し、資本の十分性を確認している。・・・

3.ガバナンスの強化

三つの防衛線は、保険会社のガバナンスにとって定着した枠組みである。金融安定研究所(FSI)のレポートでは、一つのグループ、会社に閉じた防衛線では、その本来の機能が十分発揮されない可能性もあるため、監督当局や外部監査人といった外部の目線も加えた四つの防衛線の検討を勧めている(図表2)。・・・

おわりに

将来はランダムで、不確実である。企業活動は、不確実な将来に対する働き掛けといえる。収益機会を追求し、損失機会を管理するために、将来を予測し、合理的な選択を追求する。それが、企業の戦略であり、リスク管理の実務である。この二つの機能を統合して管理する枠組みがERMといえる。・・・

(図表1)リスクカルチャーの浸透とERM実効性の向上

(図表2)四つの防衛線モデル

出典:金融安定研究所(FSI)(2015) “The ‘four lines of defence model’ for financial institutions”

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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