連載【保険ERM基礎講座】≪第4回≫

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連載【保険ERM基礎講座】≪第4回≫

「保険ERMと不易流行」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(11月12日発刊号)

≪第4回≫ 保険ERMと不易流行(1)

第4回目からは、現在のERMの構造の特徴と直近の強化事項を確認いたします。

1.リスクナレッジのバージョンアップ

温故知新の章では、現在のERMの基本事項について過去の経緯を含め振り返った。保険制度は、昔から変わらない仕組み(プールによる管理)で運営されており、リスクに対し定量的・定性的アプローチによって継続的にモニタリングすることにより、リスクへの対応力を高めていくプロセスがERMの中に組み込まれている、と述べた。俳諧の世界に、「不易と流行」という言葉があるが、ある伝統的な枠組みが時代を経ても色褪せず実効性を保っている裏には、常に本質的なものを守り、変化に対して新たな対応と補強を繰り返してきた事実がある。

2.自然災害モデル

自然災害は、英語でAct of Godと表現される。まさに人の予測を超えた神のなせる業と表現したくなる要素を秘めている。2011年の東日本大震災、タイの洪水、2014年の首都圏の雪災、さらに今年9月の鬼怒川の洪水等、従来経験しなかった災害が起こっている。
たとえば地震や噴火は、日本に住むわれわれにとって身近であるが未だ解明されていない部分が多い。地震と噴火、両者とも、究極的な原因は地球内部の熱エネルギーであることは明らかであるが、この両者の関係についても十分解明されていない。

3.モデルの限界

リスク分析者は、多様な情報源から知識を集め、それを統合する。また、計測の結果を解釈するには、リスクと結果の因果関係を明確にするための分析を実施する。このような分析によっても取り除けない不確実性は確率で表現してモデルに組み込む。同様のプロセスを経て、自然災害モデルは、工学モデルと統計的モデルの併用の形で作り込まれているが、その中には不確実性の要素が残る。

4.モデルガバナンス

内部モデルは、経営のツールであり、グループ内で整合性ある経営判断や業務管理に幅広く活用される。しかし限界を有する点は前述のとおりである。そこで、使用するデータ・手法・計算前提が妥当であること ( 「統計的品質」と呼ぶ ) や恣意性を排除した強固な統治の下で開発・運営されているか ( 「モデルガバナンス」と呼ぶ )を常に問う必要がある。そして実際に使用することによって常にその有用性を検証する必要がある( 「ユーステスト」と呼ぶ )。

 

※つづきは、PDFよりご覧ください。

(PDF、1,522KB)

保険ERM態勢高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

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保険セクター関連サービス
(ブロシュア、PDF、316KB)

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