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連載【保険ERM基礎講座】≪第7回≫

「意思決定の科学(その1)」

近年、企業経営を取り巻く環境が大きく変化し、リスクが複雑になりつつあります。デロイト トーマツ グループでは、保険毎日新聞に保険会社におけるERMつまり、「保険ERM」を分かり易く解説した連載をスタートしました。(執筆:有限責任監査法人トーマツ ディレクター 後藤 茂之)

出典:保険毎日新聞(12月24日発刊号)

≪第7回≫ 意思決定の科学(その1)

第7回目からは、意思決定に介在するリスク(バイアス)への対処と合理性の担保について考察いたします。

1. なぜ今意思決定なのか

前章(不易流行)で、保険ERMの実効性を高めるため、リスク文化の浸透、組織構成員各人の意思決定・行動に注目が集まっていると述べた。また同時に個人責任のモニタリングについても監督上の関心が高まっていることに触れた。本章では、ERMの枠組みが現実に実践される局面に着目した場合、組織構成員の意思決定を重要せざるをえない。なぜなら個々の適切な意思決定なくしては、組織としての整合性ある活動、経営目標を達成するための企図した活動は期待できないからである。しかし、一方で、個々人のリスクに対する認知を共有し、整合的な意思決定を実現することは容易でないのも事実である。組織内でリスクアペタイトが明示され共有されていたとしても、現実の意思決定段階においては、判断上のリスクが介在する可能性もあるからである。このような現実的な観点からリスクに対する意思決定について考えてみたい。

2.二つの意思決定方法

適切な意思決定の問題を取り上げる場合、人の心の中で起こる認知プロセスを問題にする必要がある。さらに、その対象をリスクとする場合、リスクに対するわれわれの認知の問題に直面することになる。人は、相反する多様で複雑に絡み合った要素を脳で整理し、瞬時に非常に多くの事柄についての意思決定を行っている。判断に必要な情報の量とその処理に必要な能力を比較すると、圧倒的に処理能力が不足していることが知られている。

3. 判断上のリスク

イソップの寓話の中に、塩を運ぶロバの話がある。これは、塩を背負って川を渡っていたとき、滑って水中に倒れると、塩が溶けて身軽になった経験に味をしめ、海綿を背負って川のほとりにやってきたとき、わざとすべったが、海綿が水を吸って重くなり立ち上がることができず溺れてしまった、という物語である。リスクを十分確認せず、誤った判断から、重大な事態を招くことの教訓が述べられている。

 

※つづきは、PDFよりご覧ください。

(PDF、1,538KB)

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デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

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