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新型コロナウイルスによる非常事態下の国際人事異動:税務上の取扱いFAQ

グローバルモビリティ~国内税務~ 2020年5月

現在、新型コロナウイルス感染症COVID-19 (以下「本感染症」)の対応策が各国で進められていますが、本稿は、本感染症に伴う各国の注視すべき対応策を国際人事税務の観点からQ&A形式でまとめてみました。この非常事態における海外勤務者に係る税務上の取扱いに悩まれている方は、ぜひご一読ください。

1. 日本から海外へ赴任している従業員に関する取扱い

(1) 海外赴任者が日本へ一時帰国する場合

Q1. 較差補填を行っている赴任先については、海外勤務期間中、弊社(日本本社)から海外赴任者へ留守宅手当を支払い、負担していました。また、従来は留守宅手当に対する日本の源泉所得税は徴収していませんでしたが、一時帰国中の取扱いに変更はありますか?

A1. 留守宅手当について短期滞在者免税は適用されないこととなるため、現行制度上は一時帰国中に対応する留守宅手当は日本で課税されることとなります。

Q2. 本感染症対策における一時帰国に要した航空券代を弊社が負担しています。税務上どのように取り扱うべきでしょうか?

A2. 合理的な交通手段によるものであれば、給与課税しないことについて一定の抗弁が可能と考えられます。

(2) 日本へ一時帰国していた海外赴任者が、赴任先国へ戻れずそのまま赴任を終了する場合

Q3. 日本へ一時帰国していた海外赴任者の中に、赴任先国へ戻ることができないまま3月末をもって赴任を終了した者がいます。3月末日をもって帰任発令を出し、4月1日からは弊社(日本本社)所属として弊社の業務を行い、弊社規程の国内勤務者給与に切り替わっています。税務上の取扱いは一時帰国中とその後で何か変更がありますでしょうか。

A3. 4月1日から日本居住者となり、居住者に対する給与として源泉徴収が必要になります。

Q4. 赴任期間終了後の日本居住者期間に赴任先国の所得税の支払が発生し、弊社(日本本社)の負担により納税を行いました。何か対応する必要がありますか?

なお、対象となる元海外赴任者は日本国籍を有しています。

A4. いわゆる帰国後納税として日本で給与課税が必要となります。

(3) 入国規制のため、新規海外赴任者が赴任先国へ渡航できない場合

Q5. 4月1日付で米国へ赴任予定の従業員が、米国側の入国規制により渡航ができておらず、4月1日以降は日本に居ながら赴任先法人の業務を行っています。4月分給与からは海外赴任者としての給与を支給する必要があり、米国法人と弊社(日本本社)の両社から当該対象者の口座に支払われます。何か税務上の留意点はありますか?

A5. 米国法人からの支給は、国外払いの国内源泉所得となり、確定申告での納税が必要となります。

 

2. 日本へ赴任している外国人エキスパットに関する取扱い

(1) 赴任元国へ一時帰国していた外国人エキスパットの日本赴任期間を短縮し、日本へ戻ることなく赴任を終了する場合

Q6. 赴任元国へ一時帰国していた外国人エキスパットの赴任期間は残っているのですが、本感染症に伴い、赴任期間を短縮して日本へ戻ることなく赴任を終了し、赴任元法人の業務に戻ることとなりました。

日本においていつから税務上の非居住者として扱うべきでしょうか。

A6. 赴任を終了することが明らかになった日から非居住者となります。

(2) 入国規制のため、日本への赴任ができないケース

Q7. 4月1日付で弊社へ入社した外国人の新卒社員ですが、入国規制対象国に居住していたため、日本へ入国できておりません。現在は海外の自宅からリモートで研修を受講していますが、4月分の給与は支給しなければなりません。支給時に源泉徴収は必要でしょうか?

A7. 非居住者に該当し、国内源泉所得が発生しないため、源泉徴収は不要です。

 

3. 一時帰国期間が長期化する場合

Q8. 海外赴任者の本国への一時帰国期間について、当初1カ月の予定でしたが、3カ月に延長することとしました。今後さらに延長する必要がでてくる可能性がありますが、何か留意することはありますか?

一時帰国期間中は、赴任先法人の業務を行っています。

A8. 帰国が長期化することでPE(”Permanent Establishment = 恒久的施設)認定リスクが考えられますが、本感染症により世界的な非常事態であるため、今後の日本および海外各国の税制上の措置や緊急対応策に注視が必要です。
 

 

各質問の答えの詳しい解説はPDFよりご確認ください。

 

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

 

(374KB,PDF)

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