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中国:年間一回性賞与及び外国籍個人が適用する免税手当に関わる個人所得税の優遇措置を2年間延長

グローバルモビリティ~国際税務~ 2022年2月

2021年12月29日に開催された中国国務院常務会議において、年間一回性賞与に係る個人所得税優遇政策が延長されることが決定されました。さらに、2021年12月31日に、財政部及び国家税務総局が実費精算あるいは現物支給形式で支給される外国籍個人への住居手当、語学研修費、子女教育手当に対する優遇政策の適用期限を2023年12月31日まで延長するための第43号公告を追加で公布しました。

はじめに

年間一回性賞与に関わる優遇税制及び外国籍個人が享受できる免税手当ての規定について、2019年1月1日から施行された個人所得税法の改正に伴い、2019年から2021年までの3年間の過渡期が設けられ、2022年より廃止されることが決まりました。特に免税手当ての適用廃止について、外国籍個人に関わる個人所得税が大幅に増加すると予想されています。

今回、2021年12月31日に満期予定であった上記政策を延長する決定は、納税者の期待に沿い、所得税の負担を軽減し、税金と手数料の削減、国民に利益をもたらすという国の決意と力強さが反映されています。



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1. 年間一回性賞与に関わる優遇税制について

年間一回性賞与を取得する場合、総合所得に合算して税金を計算するか、または合算せず単独で課税するか、納税者自身が選択できます。単独で計算する場合、先ずは賞与を12カ月で按分した金額に基づき、月次総合所得税率表を適用して、該当する税率と速算控除額を確認してから、賞与の納付税額を計算します。この場合、従来より低い税率を適用することが可能です。一方、総合所得に合算して個人所得税を計算する場合、月給などの総合所得と合算し、総合所得税率表を適用して個人所得税を計算します。

上述の政策では、納税者がより相応しい税金の計算方法を選択し、納税負担を軽減することができます。一般に、総合所得が高い納税者は、単独課税方式を選択すると全体的な納税負担が低くなる可能性があります。一方、総合所得が低く、各種の控除額を享受していない居住者にとっては、年間一回性賞与を総合所得に合算した方が有利であると考えられます。

年間一回性賞与を取得した際、どちらの選択がより有利であるかを判断しにくい場合があります。このような納税者については、まず単独で計算する方法を選び、確定申告時に、年間一回性賞与の計算方法を調整するか判断する方法が考えられます。

 

2. 外国籍に関わる免税手当ての措置延長について

従来、外国籍人員は、会社払い、または実費精算の形で住宅手当、語学研修費、子女教育費などの合理的な手当を受け取る場合、免税措置が享受できます。2018年、個人所得税法の改定があり、専門付加控除の制度が導入されました。それと同時に、経過措置として2019年1月1日から2021年12月31日までの期間に、免税手当または専門付加控除のいずれかの選択が認められましたが、2022年1月1日以降は外国籍個人が適用できる免税措置は廃止される予定となっていました。今回の第43号公告によって、上記政策の実施期間は、2023年12 月31 日まで延長されることになりました。

外国籍人員手当に関する免税政策の延長問題は、中国で勤務している外国人から大きな注目を集めています。今回の政策継続は外国籍人員の個人所得税負担を安定させる結果となります。外国籍従業員が多い企業に対して、外国籍従業員が優遇政策を享受しながら、課税項目に関わる申告漏れがないよう、関連する個人所得税コンプライアンスを確保するため、短期的には、免税手当に関わるポリシーの作成、実施及び届出(所轄税務局の要求等のため)、経費精算及びサポートドキュメントの検証プロセスなど、外国籍人員手当に関する免税政策に係る社内管理ポリシーとプロセスを具備することが求められます。
 

まとめ

本稿では、年間一回性賞与に関わる優遇税制及び外国籍個人が享受できる免税手当ての延長について説明しました。今回、優遇税制が2年間延長されることになりましたが、中長期的には、早期の計画立案のため、政策の有効期限が切れた後の報酬・福利厚生ポリシーの移行及び外国籍従業員とのコミュニケーションに留意する必要があると考えます。

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