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コロナ禍における一時給付金に関する留意事項
グローバルモビリティ~海外税務~ 2020年6月
新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「本感染症」)に対する個人向け経済支援策として、日本では2020年4月20日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、一律10万円の個人向け一時給付金の支給が実施されています。また、ほかにも同様の性質の給付金の支給を発表している国や、国の施策とは別に会社独自での給付金の支給を決めた企業も見受けられます。本稿では税務、及びポリシー上の論点から、本感染症における一時給付金の支給で生じ得る様々な、国際人事としての留意点について解説していきます。
1. コロナ禍における各国政府の個人向け経済支援
現在、各国政府は様々な経済支援策を打ち出しています。
(個人向けの一時給付金を実施している国の例)
国名 | 対象者 | 支給額 | 個人所得税上の取り扱い |
---|---|---|---|
日本 | 基準日(2020年4月27日時点)で住民基本台帳(住民票)に記録されている者 | 一律10万円 | 非課税 |
米国 | 米国居住者または米国での社会保障番号番号(Social Security Number: SSN)保有者(帰任者除く) | 調整後総所得(AGI)がUS$75,000未満(夫婦合算申告* US$150,000未満)の場合大人1人につき US$1,200(夫婦合算*でUS$2,400 ) 調整後総所得が上記を超える場合には減額あり *夫婦合算申告で配偶者が納税者番号(ITIN)を保有している場合は給付対象外 |
非課税 |
17歳未満の子供1人につき US$500 | |||
シンガポール | 21歳以上のシンガポール国籍を有する者 | 一律SG$600 | 非課税 |
2. 個人向け給付金に関する税務上の論点と留意事項
個人向け給付金は「赴任者の所得として現地で課税対象となる可能性がある」、「課税・非課税の判定及び課税のタイミング(支給月の源泉徴収/年次確定申告)の確認が必要」、「赴任者ごとに受給のタイミングが異なることにより、受給の実態のトラッキングが難しい」などのポイントから、事前に受給権者である赴任者にコンプライアンス上の義務を説明し、受給した場合には速やかに人事に申告するよう伝えておくことが大切です。
3. 個人向け給付金に関するポリシー上の論点と留意事項
(1) 赴任者間の公平性の考え方
国によって本感染症の拡大状況や深刻度が異なるため、各国が打ち出す経済支援策も当然のことながら様々です。また、米国の給付金のように、赴任地国の政府の方針に基づき支給される給付金や手当の場合、往々にして赴任者全員ではなく一部のみに受給資格が発生するのが一般的です。そのため、国際人事としては、公平性やポリシーの一貫性の観点から、下記の点について留意しながら会社としてどのように対応すべきかを判断する必要があります。
- 同じ国の赴任者間での不公平感
- 異なる赴任地国の赴任者間での不公平感
- 日本にいる従業員との間での不公平感
(2) 赴任先で支給された給付金は誰のモノ?
ネット保証を実施しているのが一般的である日系企業で赴任者が現地の一時給付金の受給者となった場合、現場の混乱を招かないように、当該給付金は赴任者と会社のどちらに帰属させるべきかを事前に統一した方針で赴任者及び現地法人の担当者へ伝達しておくことが重要です。
3. 企業としてどのように対応していくべきか?
今回のような特殊な状況下では、ある程度の不公平感が存在するのは仕方のない面もありますが、これらの不公平感を可能な限り緩和していこうという国際人事としての姿勢は大切です。例えば自社でタックスエコライゼーションポリシーを整備している企業であれば、この枠組みの中で負担関係や従業員間の公平性を整理していくという方法が考えられます。
より詳しい解説はPDFをご確認ください。
※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。
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