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開かれた社会へ:ダイバーシティとインクルージョンの手段としてのAI

Opening doors of opportunity AI as a vehicle for diversity and inclusion

AIがその可能性を最大限に発揮するには、通常、多様なバックグラウンド、生きた経験、そして現実世界での経験を持つ人々からのインプットが必要です。この取り組みは、企業や地域社会にとって非常に大きな経済的機会であり、生産性や効率性の向上、そして革新的なイノベーションの可能性を秘めていることは言うまでもなく、ダイバーシティとインクルージョン推進につながります。

AIにおけるダイバーシティ&インクルージョン

ドットコム時代初期、コンピューター、ソフトウェアおよびシステムを構築していたイノベーターや専門家には、ある共通点がありました。彼らは全員がコンピューターコードを書くことができました。JavaScriptからC++まで、難解そうなコンピューター言語の習得には、専門的な学習、実験およびプログラミングの経験が必要でした。結果として、コンピューターエンジニア、プログラマーおよび開発者らは、テクノロジー分野で実入りが良くエキサイティングなキャリアを見つけました。一方で、他のスキルを持つ人々はこの分野へはほとんどアクセスできませんでした。大抵の場合、彼らは必要とされませんでした。

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今日のAI時代は異なります。AIは定義上、人間の思考や意思決定に近づくことを目的としているため、幅広い専門知識を必要とします。知能を自動化するということは、実際には人間の経験を自動化しているということです。AIがその可能性を最大限に発揮するには、通常、多様なバックグラウンド、生きた経験、そして現実世界での経験を持つ人々からのインプットが必要です。この点において、AIはダイバーシティを促す手段となりえ、あらゆる業界や職業の人々に機会の扉を開きます。

AIのメリットを実現し、AIツールを開発・展開し最大の利益を得るには、あらゆる人々が参加する必要があります。しかし、だからといって、誰もがAIの専門家や博士号を持つデータサイエンティストにならなければいけないということではありません。

必要なのは、あらゆる分野から人々の知識や労力を集結し、活用することです。数学に傾倒している人は必要ですが、そうでない人も必要です。実験者やデータセットをラベル付けする人も必要です。また、倫理や慈善活動、企業戦略、そしてAIの影響を受ける(あるいはすでに受けている)すべての業界の役割について検討することが必要です。さらに、すべての性別、すべての民族的伝統および社会経済的階層からの視点やガイダンスが必要です。
 

バックグラウンド、経験、およびアイデアを組み合わせることは、有用で信頼できるAIの材料となる

患者の病院での摂取評価をレビューし、関連するすべての医学文献を参照し、可能性のある病気と最善の治療方針について医師に推奨するAIツールを検討してみてください。確かにこれは複雑なシステムであり、価値のある推奨を行うには、データサイエンティストやAIエンジニアがアルゴリズムやデータ、インフラを組み合わせる必要があります。しかし、AI開発の意思決定に関わる者が、AIのコード化に関する狭い専門知識を持つ者に限られる場合、開発されるツールはAIの潜在的価値を十分に引き出せない可能性があります。開発には、医療の専門家や病院の管理者、また患者擁護や情報プライバシーに関する専門家など、その他多くの人々からのインプットが必要です。

こうした広範囲にわたる人々の参加は、潜在的にあらゆるAIシステムに必要です。バックグラウンド、経験、およびアイデアを組み合わせることは、有用で信頼できるAIの材料となります。連鎖的なメリットとして、こうした取り組みに多くの人々を引き込むことは機会を生み出し、新興の専門分野において、IT業界がしばしば苦戦するダイバーシティとインクルージョンを推進できるということがあります。

AIを最大限に成長させる

誰もがAIの影響を受ける可能性があります。仕事が変化し、新たなサービスや製品が登場し、メリットが増大していきます。しかし、AIが平等に価値を提供するには、AIを開発・展開・管理・使用するチームが、サービスを受ける人々の多様性を考慮する必要があります。データサイエンス分野での多様性が現在進行中の課題であると同時に、データサイエンスの周辺分野においても、多様な非技術的チームを形成し、促進する機会があります。

この点において、AIはユニークなテクノロジーといえます。テクノロジーに精通していないプロフェッショナルに機会を提供するだけでなく、実際に彼らのインプットを必要とする唯一のテクノロジー分野かもしれません。それを知っていると、AI時代の早い段階から、AIの可能性を最大限に引き出すために必要な多くの人々を呼び込むことができます。そして、今後のAI分野の基準と期待を設定することができるでしょう。AIはすべての人にとってメリットとなりえ、誰もが果たすべき役割を持っています。
 

AIはテクノロジーに精通していないプロフェッショナルに機会を提供するだけでなく、実際に彼らのインプットを必要とする唯一のテクノロジー分野かもしれません。

プロフェッショナル

神津 友武/Tomotake Kozu

神津 友武/Tomotake Kozu

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー パートナー

有限責任監査法人トーマツ パートナー。物理学の研究員、コンサルティング会社を経て、2002 年から有限責任監査法人トーマツに勤務。 金融機関、商社やエネルギー会社を中心にデリバティブ・証券化商品の時価評価、定量的リスク分析、株式価値評価等の領域で、数理統計分析を用いた会計監査補助業務とコンサルティング業務に多数従事。 現在は金融、エネルギー、製造、小売、医薬、公共等の領域で、デロイト トーマツ グ... さらに見る