防衛装備品輸出の実現に向けて ブックマークが追加されました
ナレッジ
防衛装備品輸出の実現に向けて
事前準備からアフターサポートまで一連の流れと検討事項
期待をもって迎えられた「防衛装備移転三原則」の成功に向けては課題も多く、それら課題の解決に向けた積極的な対話と取組みが必要とされる。本稿は防衛装備品輸出に向けた官民連携を進めるための論点の整理を行い、具体的な議論の推進の一助としたい。併せて、輸出に際して各企業が直面する課題についても概説する。
概要
2014年4月の政府による「防衛装備移転三原則」は、日本の防衛産業を取り巻く環境の大きな変化を巻き起こした。上記三原則の策定は、これまで原則的に禁止とされていた防衛装備品の輸出や国際共同開発を、平和貢献・国際協力に資する又は日本の安全保障に資するといった条件を満たすことにより許可することとなった。以降、地対空ミサイル(PAC-2)用部品の対米輸出や日英による空対空ミサイル共同研究に必要な技術情報の提供の許可、複数国との防衛装備品・技術移転協定への署名といった具体的な動きが進んだ。
技術の高度化に伴う研究開発や生産コストの上昇への対処や安全保障協力への参加を背景とした新三原則の策定は、同時に装備品を製造する企業にとっても、これまで自国政府だけを顧客としていた市場が拡大する機会であり、既に企業によっては積極的な市場調査や受注活動を進めている。また、企業の市場拡大につながる可能性は、我が国の産業基盤の維持・強化の観点からも期待が持たれている側面もある。
しかしながら、これらの環境変化や複数の関係者の期待にも関わらず、現時点では大型の案件機会を認識し受注活動を行いつつも本格的な装備品輸出が始まっているとは言い難い。成功に向けては課題も多く、課題解決に向けた積極的な対話と取組みが必要である。