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事例紹介
重工産業のニューノーマル(国際的な税務環境調査報告)
税政策の一貫性と予測可能性の低下・複雑化が浮き彫りに
世界金融危機の影響により歳入の減少を経験した各国がその確保のために積極的に課税ベースの拡大を行ってきたこと、加えて新興国や新しいビジネスモデルの出現もかつてないほどの圧力となって税政策に影響した結果が今回の調査に表れたと考えられる
重工産業の「ニューノーマル」
世界経済の成長に沿い、日本の重工各社の業績が好調である。とはいえ、足元の業績は果たしてその競争力を反映したものなのか、数少ない輸出型ビジネスモデルがもたらした突風なのか、世界の「インフラジャイアント」を中心に、重電重工業界を取り巻く大きな再編の第二幕が始まろうとしている昨今、あらためて冷静に見つめなおす必要があろう。
<重工はメーカーか。リクワイアメントと競争>
その技術力は一部、中韓からの追い上げはあるにせよ、世界でも冠たるものであることは間違いない。重工各社のバリューチェーンは長く、かつ、また関連プレイヤーも多い。何百万もの膨大な部品の大半を調達していることに鑑みると、もともと「インテグレーター」としての側面をもつ。本業の製造やEPCのみではない。前工程としての「ビジネスコントラクター」としての役割はさることながら、昨今では、後工程としての「サービスオペレーター」までも視野に入れることが求められている。特に、新興国ではその色合いが濃くなる。加えて、アジア市場のみならず、中東アフリカなどのインフラ需要も中長期的に取りこぼすことがあってはならない。兵站はタテにヨコに伸びる一方である。
<バリューチェーン進化に向けた覚悟>
そんな中で、「現地化」が言われて久しい。曰く、コスト競争力をつけるためにいくつかのファンクションを「外注」するのでなく「パートナー」と密に連携を行う。曰く「・・・」確かにそうかもしれない、では果たしてその具体的なビジネスの姿は、と問われると答えに窮するのではないか。とりわけ、新興国の定義が中東・アフリカにまで広がる中で現地パートナーの具体的なイメージがどこまで湧いているか。ホワイトハウスのブラックリスト(正式名称確認)にオンリストされていない「パートナー」は限られているのが実情なのだ。local contentを満たす技術水準はあるのか。雇用規制はどうか。国営企業は発表されている計画通りに本当にRFPを出すのか。アフリカのマーケットに旧宗主国でない日本企業が入っていけるのか。賄賂などへの対応をどうするか。後ろ向きなことばかりを言っているようだが、それだけの制約や逆風があっても、それでも、バリューチェーンを進化させなければならない。それが重電重工企業である。
<フランス企業とアメリカ市場とメキシコ拠点>
皆さんは「メキシコ」と「トルコ」と聞くと、どのような印象をもつだろうか。一人当たりGDPが1万ドルを超えていることや高いGDP成長率など、マクロ経済環境についてはすでに御存知なのだと思う。もしくは中国、ASEANの次はメキシコやトルコかよ、といった穿った見方をする方もおられるかもしれない。怪しげなコンサルタントがまた次の商売道具を出してきたか、と思われるかもしれない。
半分YESであり、半分NOである。では、こう言うとどうだろうか。メキシコやトルコに良質な人材を求めて、サプライチェーンの一部をまかなうために、また、巨大な市場アクセスに近いために拠点強化を行っている。よくよく考えていただきたいが、これはすでに起こっている現実なのである。
例えば、航空産業における「メキシコ」の事例がそれである。巨大市場アメリカに地理的に程近く、BASA(相互認証協定)を結んだことにより、メキシコはいまやアメリカの第51番目の州、日本で言うと「特区」の位置づけのように、それを目当てに大挙してフランスのいわば「エアバス村」が出来上がっているのである。実際に視察に赴かれた方もいるかもしれないが、Tier2レベルの非常に高品質な部品を、例えば、ブガッティメシエダウティの現地法人などは手がけている。下請けでで製造しているだけではなく、設計から関わっているのである。背景には、国を挙げての「理工系」大学生の育成があるうえ、企業が講座を設けて人材育成に積極的に関与しているのである。2008年時点、ケレタロ州だけで約11,000人の理工系学生が在籍している。