事例紹介

トルコ・中東・北アフリカ地域における事業展開

次なる成長エンジンへの進出に求められる事業推進体制

トルコはここ数年の高い経済成長や政府間での経済協定協議などを背景に、アジアに次ぐ成長エンジンとして日本企業の注目を集めているが、欧米企業各社はすでに、トルコの経済的、地理的特性に着目し、地域統括拠点を設置し現地の状況に迅速に対応する体制を築いている。今後、日本企業が進出を図る上で留意すべきポイントを事例を通じて説明する。

トルコ及び周辺地域の魅力

トルコでは、2023年に世界第10位の経済規模を目指すという政府方針に代表される経済成長戦略により、輸出促進とそれを支える電力・エネルギーインフラ整備を中心とした積極投資と高い経済成長が見込まれており、グローバルの多くの企業が事業成長の次なる地域と位置付け、積極的な事業展開を遂げている。また、周辺地域である中東や中央アジア、北アフリカ各国も豊富な鉱物資源を背景に、外国資本の投資による資源開発やインフラ整備が期待されており、いずれの地域も高い経済成長が予測されている。(図)

もともと、欧州と隣接する豊富で優秀な労働力の供給地域として、欧州向の低価格工業製品の供給拠点として位置づけられてきたが、近年は、欧州と中東、中央アジア、北アフリカと隣接する地理的特性を活かして、周辺地域への供給・物流拠点、更にはビジネス進出のためのアクセスポイントとしての位置付けを強めている。
また、トルコでは複数の財閥(ホールディング)によるコングロマリットがビジネスの中心である。それらの企業は外資と提携しながら、国内のみならず周辺地域における、製造や金融、建設業や資源投資、エネルギー(電力・ガス)インフラ事業まで幅広く事業展開している。

トルコ・中東・北アフリカ地域における事業展開 図

地域統括拠点としての位置付け

この地域の有望性に着目して多くのグローバル企業がトルコに積極的に進出しているが、それらの多くは、このトルコの特性を最大限活かすべく、調達・生産・販売機能に加え、地域での事業管理や経営機能、リスク管理機能を有する地域統括機能をトルコに設置している。それにより、現地での買収や合弁などの意思決定において、現地の状況に即して迅速に対応できる体制を築いている。(図)

トルコに地域統括拠点を有する外資系企業

  企業名   管理国数
1 COCA COLA 米国 90
2 GE Healthcare 米国 80
3 Microsoft 米国 76
4 Intel 米国 67
5 Unilever オランダ、英国 36
6 Velifone フランス 30
7 Glaxo Smith Kline 英国 30
8 Schneider Electric フランス 27
9 Ericsson スウェーデン 22
10 Cargill 米国 20
11 Volvo スウェーデン 18
12 BASF ドイツ 18
13 Pepsico 米国 14
14 Roche ドイツ 14
15 Henkel ドイツ 14
16 P&G 米国 11
17 BSH ドイツ 11
18 Pfizer 米国 10
19 Mastercard 米国 10
20 Novo Nordisk デンマーク 9
21 LG Electronics 韓国 9
22 Adobe 米国 9
23 Betetton イタリア 7
24 Ceva Logistics オーストリア 6


出所:JETRO トルコの最新ビジネス事情(2013年11月)

日本の重工業、産業機械メーカーにとっても次の成長エンジンとして有望な地域市場ではあるが、新興国特有の金融リスクに加え、高い政治・地政学リスクが認められる。また、中国・インド・東南アジア等と比して地域市場に関する十分な情報が提供されていないという実情もある。その中で、事業の成功に向けて、現地企業との協業・連携や地域のリスク管理、収益再投資等の方針を考慮した、事業推進体制を整備することが求められる。

トルコ及び周辺地域への参入方針検討事例

産業機械メーカーA社は、これまでは複数の事業部が独自にトルコで代理店契約を行い周辺地域で事業展開を進めていたが、海外売上拡大のために当該地域での事業伸長が求められる中、会社全体としての地域参入・事業規模拡大に向けた現地での事業推進体制を検討することとした。
我々はA社を支援するため、Deloitte トルコオフィスのコンサルティングチームと共同でのプロジェクトを立ち上げ、最新かつ具体的な情報に基づく地域のビジネス構造、商慣習や法制・税制等の分析を行い、A社の構想策定を支援した。
(1) マクロ的な市場有望性とリスク分析を通じた、A社にとってのトルコ及び周辺地域の位置付け
(2) 現地での競争環境分析を通じた、候補事業の重要成功要因
(3) 現地で求められる業務機能と、現地の法制度、税制、投資優遇策を勘案した推進体制
結果としてA社では、現地企業との合弁や買収を含めた現地事業の推進方針と、将来同様の事業展開を見込んだ地域統括拠点構想を策定し、実現に向けての具体的な制度設計を進めている。 

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