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M&Aストラクチャリング(バイサイド)

M&Aにおいて、複数のストラクチャーのそれぞれのメリット・デメリットを会計・税務など様々な観点から比較検討し、最適なストラクチャーを選択することがM&Aを成功に導く重要なポイントといえます。

最適なストラクチャーを選択するために

ストラクチャー選択の位置づけ

ストラクチャーとは、一般的に構造・組織などと訳されますが、M&Aでは対象会社(事業)を買収・合併する際の手法として用いられます。

そのため、ストラクチャーは買い手が事業戦略上の一定の目的を実現するためにM&Aを利用する際、M&Aを実現するための手法と位置づけられます。

M&Aは、売り手、買い手のほか、対象会社の経営陣・従業員、取引先や金融機関等の多くの利害関係者に重大な影響を与えますが、各利害関係者の全てのニーズを満たすことは実務上困難です。そのため、各利害関係者のニーズに優先順位を設定し、利害調整を行いながらストラクチャーを選択することが重要となります。

買い手において検討すべき事項

買い手においては、買収後の事業運営についての検討事項として①取得する事業の範囲(対象会社全体か特定事業か)、②事業統合の形態(子会社化、合併等)、③買収対象事業に対する買収後の支配レベル(取得する株式の割合)が挙げられます。

その上で、④コスト(税務コスト、資金コスト等)をできる限り少なく、不確実性(訴訟リスク、簿外債務、税務否認リスク等)をできる限り小さくすることが可能なストラクチャーを検討し、最終的には⑤相対取引(株式の取得等)か組織法上の手法(合併等)を利用するかなどの買収手法を検討することになります。

トーマツグループでは、上記検討事項を踏まえ、日本および海外の会計、税務の専門知識と豊富な経験を有する専門家が、最適かつ実現可能なストラクチャーの検討をご支援します。

国内M&A取引の会計ストラクチャリング

ストラクチャーの手法と特徴

M&Aのストラクチャーには、株式の取得、株式交換、株式移転、合併、会社分割、事業譲受および現物出資等の手法があり、単独のストラクチャーの選択だけでなく複数のストラクチャーを組み合わせる場合もあります。

各ストラクチャーには、①買い手の取得対象の観点(対象会社全体を取得対象とする株式の取得や合併等、特定事業を取得対象とする事業譲受や会社分割等)、②相対取引(株式の取得等)か組織法上の手法(合併等)等の特徴があります。

選択したストラクチャーによって、各々法的手続きが異なり、また税務上の取扱いの相違等により交渉価格への影響や、デューデリジェンス等で調査すべき項目や範囲に影響すること等があります。

会計上のポイント

買収後の経営陣の評価指標は、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書等の財務諸表であり、ストラクチャー実行後、いつ、どの段階損益で、どのような損益が生ずるかをあらかじめ把握しておく必要があります。これは、適時開示制度でも求められている事項です。

またストラクチャーによって会社法上の分配可能額に与える影響についても重要な検討事項となります。

さらに近年ではIFRSの影響についても留意が必要です。

会計上の主な検討事項として、企業結合会計の適用にあたっては、取得会社の決定、取得対価の範囲、取得原価の配分、またその結果生じたのれんの発生金額・償却期間・減損の可能性等があります。また、連結実務では、会計方針の統一、決算期の統一・決算スケジュールへの影響等があります。

M&A取引が連結財務諸表に与える影響を理解する事は、投資意思決定を行う上で必要不可欠です。

国内M&A取引の税務ストラクチャリング

ストラクチャー選定における課税関係の重要性

M&Aのストラクチャーはその目的を達するために構築されるものですが、税務上の要素が多分に考慮されていることが多く、また、M&A当事者の利害が対立しやすい分野であるため、税務専門家の果たす役割は大きいといえます。

M&Aの形式・形態は多種多様ですが、買収・統合ストラクチャーにより買収側および被買収側双方の税額が大きく異なる場合があります。M&Aの実行に伴って当事者に不測の課税が起こる場合もあり、採用する手法の当事者の課税関係を整理することは非常に重要です。

例えば、非課税取引である適格組織再編が税務上は有利な手法と思われがちですが、再編当事者の繰越欠損金や含み損益の状況、今後の利益計画によっては、意図しない結果をもたらす場合があります。この点はグループ内再編でも同様であり、グループ内取引といえども慎重なプランニングが必要となります。さらに昨今では租税回避行為等についての税務当局からの否認事例も発生していることから、行き過ぎたタックス・プランニングの有無についても把握しておくことも重要である場合があります。

税務上のポイント

ストラクチャー策定に当たっては、M&A実行時の課税関係のほか、過去の税務申告に起因する税務リスクや買収後の再編やPMIにおける課税関係、さらに取引相手先との交渉を円滑に進めるため取引相手先の課税関係も含めて検討、把握しておくことが望ましいですが、その手法を採用することによってもたらされる会計・ビジネスなど税務以外の影響等も念頭におくようにする必要があります。

クロスボーダーM&Aの会計ストラクチャリング

人口減等に伴い将来的に大幅な成長を望むことが難しい国内市場に対し、数多くの日系企業が更なる成長のため海外企業の買収・合併に積極的に取り組んでいます。

クロスボーダーのM&A取引では、買収方法、買収資金の調達方法、買い手および対象会社の所在国、適用する会計基準等により、さまざまな会計・税務上のインパクトが発生します。

 

クロスボーダーのM&A取引での会計上のポイント

クロスボーダーのM&A取引では、買い手と対象会社が異なる会計基準を適用している場合が多くあります。買い手が、日本基準を適用している場合、対象会社の財務諸表は、①日本基準、または、②対象会社がIFRSまたは米国会計基準を採用している場合には、実務対応報告18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」に基づき、買い手の連結財務諸表に取り込まれます。そのため、取り込み方法により連結財務諸表に対する影響額が相違する可能性があり、留意が必要です。

また、直接投資で、パーチェス・プライス・アロケーション(PPA)を日本基準に基づき行うか、現地法人を介しての間接投資で、現地基準に基づいてPPAを実施した上で、連結に取り込むかによっても、連結財務諸表に与える影響額が異なる可能性があります。

さらに、エクイティ投資か融資か等の出資形態の相違によっても、連結財務諸表における為替変動リスクの影響が異なる点に留意が必要です。

M&A取引が連結財務諸表に与える影響を理解することは、投資意思決定を行う上で、必要不可欠です。

クロスボーダーM&Aの税務ストラクチャリング

クロスボーダーのM&A取引での税務上のポイント

M&Aの形式・形態は多種多様ですが、買収・統合ストラクチャーにより買収側および被買収側双方の税額が大きく異なる場合があり、M&Aの実行に伴って当事者に不測の課税が起こる場合、その手法を採用し得ないこともあるため、採用する手法の当事者の課税関係を整理することは非常に重要になることが多いといえます。

特に、クロスボーダーのM&A取引は、日本および海外税務上の論点が絡み合い、高度化・複雑化する傾向があります。そのため、M&A実行後、想定外の巨額の税務コストが発生する等、国内のM&A取引と比べ税務上のリスクについて、より留意が必要となります。

主な検討ポイントとして、買収方法(株式買収/資産買収)、買収主体(直接投資/間接投資)、買収に係る資金調達方法(資本/借入)のみならず、事業継続時における資金還流の課税関係(配当源泉税、外国子会社配当等の益金不算入等)、撤退時のキャピタルゲイン課税等があり、日本及び海外税務双方の観点から、複数の買収ストラクチャー案の論点を整理する必要があります。

Form F-4 ~M&Aに伴う財務諸表の作成

Form F-4 とは

米国証券取引委員会(SEC)に外国企業が登録する書類のことで、日本企業の公開会社同士の統合において作成されることがあります。F-4は作成から発効まで半年以上の期間と、相当な労力を要する作業であり、F-4を意識したスケジュール作りとストラクチャーの検討を、早い段階から進める必要があります。私たちは統合の成立からF-4用の財務諸表の作成まで、一貫したサポートをします。

登録が必要となる大まかな条件は、①株主に対して株式の割当が行われる統合(例えば株式移転、合併)で、かつ②割当対象の株主に株式数で10%以上の米国居住者が存在する場合となります。その反対に、①現金を対価とする買収であるか、あるいは②株主に占める米国居住株主が10%未満である、という場合はF-4の登録義務を免除されます。このため、買収ストラクチャーの検討と、実質的な米国居住株主数の調査が必要となり、統合の成否を左右することもあります。

F-4に求められる財務諸表と作成作業

買収側・被買収側それぞれの連結財務諸表をUSGAAPまたはIFRSで作成したものを、過去2年分にわたり監査を受ける必要があります。また、仮に過去に統合をしたと仮定したプロフォーマ財務諸表が過去1年分、さらに、統合を決議する株主総会と決算日のタイミングによっては直前の半期連結財務諸表(USGAAPまたはIFRS)も、それぞれ監査は不要ですがF-4に含める必要があります。また、財務諸表以外の項目でも、日本の有価証券報告書にて開示される情報より、多くの開示が求められる傾向にあります。

M&Aに伴う財務諸表の作成

Form F-4の作成義務がないM&Aにおいても、リスクを把握する目的で、対象会社の財務諸表をUSGAAPまたはIFRSで作成して会計監査を受けることを、買い手が売り手に対して求めることがあります。私たちの経験はそのような場面でも役立っています。