調査レポート

調達コスト削減に関する調査結果

コスト削減に向けた体制は期待通りに構築できていない

急激なグローバル化の波に購買環境の構築や人員育成が追いついておらず、結果としてグローバルの購買管理組織が確立できていない、サプライヤとの関係を戦略的に構築できていないなどの課題意識が今回の調査に表れたと考えられる。

グローバル深化時代の調達組織のあり方

国内での少子高齢化による需要の減少、新興国市場の成長、恒常的円高と製造経費の高止まりなどにより、日本企業のグローバル化がさらに加速している。そのグローバル化を受けて、各企業の組織がより複雑になってきている。そのため、昨今のグローバル深化に対応するためには各組織において機能論を明確にすると同時に経営理念や価値観を共有する組織を作り上げていかなければならず、購買組織も同様である。

 

グローバル購買組織のあり方として、まず議論にあげられるのは中央統制型か現地主導型かという点である。その議論自体は基本方針としての議論であって、その方針に基づき、どの機能は中央で管理するか、どの機能は現地の近くでなど、機能ごとに掘り下げた議論を進めていくことが求められる、また、標準化も通り一遍等に標準化するという話ではなく、標準プロセスを定義した上で、何が例外として許容できるのか、それはなぜか(例:コストダウンに直結、その国特有の商習慣で必須など)を明確にしていくことで、共通点と相違点を把握し標準化と独自化の方向性を確定していくことが求められる。

 

弊社調査によると、昨今のグローバル購買組織の傾向としては、

・グローバル本社にて中長期的な購買戦略の立案

・現地購買組織にて発注納期管理を実施

・複数現地購買組織を統括する地域統括組織を設立し、より地域統括組織に権限を委譲した上で購買戦略・地域方針の策定

にわかれており、その中で地域統括管理型を目指している企業が増えている。

これはより市場に近い現地の需要に沿った製品開発がされている中で、購買部門においても、市場に投入される製品コストに見合った仕入れ先を選定すること、ならびに、安定的に高品質の原材料を提供できる仕入れ先を育成していくことが大きな要因になっていると思われる。ただし、グローバル一括が実現できないために地域軸での管理を行っている企業もあり今後も変化し続けると思われる。

企業によって必要な購買組織形態は異なるが、どこまで中央で統制を取る必要があるか、地域に残すべき機能は何かをゼロベースで考えてみると良い。

サプライヤリレーションシップに関する実態調査

2013年にグローバルのCPOに対して行った調査によると、戦略的なサプライヤリレーションシップに関して重要性は理解しているが、実践できていると認識しているCPOは多くないということが判明した。全体の36%のCPOはパフォーマンスを発揮するリソースが十分でないことにより、サプライヤとの戦略的協業を実践できていないという調査結果が出ている。

 

詳細を見ていくと、まず重要性の理解という点では、戦略的なサプライヤリレーションシップの実践によって、コストの最適化だけでなく、ビジネス機会の発見、リスクの早期発見、先取的なサプライヤの発掘、連携強化が可能となるという意見が出ている。また、単に調達指標の見直しのためのRFPやRFIによる情報提供依頼にとどまらず、どのサプライヤを戦略的と認識すべきなのか、自社ビジネス機能のうちどの範囲で協業してゆくべきなのかなどコストの観点だけでなくリスクの観点も含めた慎重な検討が必要という意見に対して、多くのCPOが理解を示している。

一方で実現性の観点では、戦略的なサプライヤリレーションシップが構築できていないという意見が36%も占めており、その理由としては以下のような点を上げている。

・サプライヤと中長期を踏まえた適切な信頼関係を構築できていない

・サプライヤと自社がコラボレーションする戦略を立案し、信頼できるパートナーとして認識できない。

・サプライヤと強固な関係を進めていくリソースが不足している

 

最後のリソースに関しては、自社リソースによる実践が難しい場合、アウトソースするという考え方がある。ただし、調査によると、戦略的なサプライヤリレーションシップに関し、アウトソースの比率を上げる計画をしているCPOは全体の7%にすぎず、大きな成果創出には至っていない。スキルが欠如している分野についてはアウトソースによって実践することを弊社報告では推奨している。

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