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私立学校法改正セミナー 開催報告

"変えられないを"変えるための第一歩

2023年7月24日、令和5年通常国会において「私立学校法の一部を改正する法律案」が可決され、5月8日に公布されたことを受け、「私立学校法改正セミナー ~"変えられない"を変えるための第一歩」を開催いたしました。第1部ではTMI総合法律事務所の大河原遼平氏より「私立学校法改正の概要」を解説いただき、第2部は当法人の恩田佑一より「私立学校法改正対応の実務上のポイントと他法人の対応事例」をテーマに、先行して対応が進んでいる他法人の対応事例を解説しました。

執筆者: 公認会計士 恩田 佑一

 

【第1部】「私立学校法改正の概要」

第1部は、TMI総合法律事務所の大河原遼平氏より、私立学校法の改正の概要を解説いただきました。

学校法人のガバナンス強化が叫ばれる背景、令和元年私立学校法の改正から今般の法改正に至る動きについて解説いただき、「条文数が飛躍的に増加」、「理事会は意思決定機関であり、評議員会は諮問期間との原則は堅持」、「その上で、評議員会のチェック機能を特に強化」など、今般の私立学校法改正の特徴・コンセプトについて解説いただきました。

また、私立学校法の改正の概要について、「理事・理事会」、「監事」、「評議員・評議員」、「その他」の区分で丁寧に解説いただき、特に内部統制システムの整備、内部統制システム強化のための運用方策についてご紹介いただきました。

さらに、法務・コンプライアンス体制の整備を進めること、「臨床法務」から「予防法務」へ転換の転換の必要性を紹介しつつ、学内全体のガバナンスに関する研修の迅速な実施、役員人財の確保、ガバナンスコードの対応の実質化など、改正私学法の施行に向けてすすめていくべきことについてお話しいただきました。

改正内容だけではなく、改正の背景や改正対応について、大変有用なお話を多くいただき、今後求められる学校法人の対応について改めて確認できる貴重な場となりました。

 

【第2部】「私立学校法改正対応の実務上のポイントと他法人の対応事例」

第2部は、「私立学校法改正対応の実務上のポイントと他法人の対応事例」をテーマとし、私立学校法改正の3つの要点(①多様な専門性を持つ理事から構成される理事会による法人経営の高度化、②評議員会によるチェック機能の強化、③不確実性に対応するための内部管理体制の高度化)をお示しするとともに、先進的な対応事例について説明しました。

具体的には、スキルマトリクスや次世代役員の選任・登用プランの策定、理事・評議員向けの研修の実施、内部統制システム整備への対応例、子会社管理体制の高度化について解説しました。特に、内部統制システム整備については、整備するべき内部統制の範囲についてお示しした上で、個別で対応が必要となる領域として、中計改革の実質化、全法人的なリスクマネジメント取組体制の整備、事業継続計画(BCP)について解説しました。さらに、私立学校法改正に伴って学校法人会計基準の位置づけが変わり、これまで以上に利害関係者への説明責任を果たすことが求められることを解説しました。

今回の私立学校法の改正は、学校法人を取り巻く環境の変化への対応、また、多様なステークホルダーが存在すること、補助金等の公的な資金が投入されているという公共性の観点から、よりガバナンスを強化した経営をしていく必要がありますが、それに加えて内部管理体制の高度化が求められています。

 


内部管理体制の高度化への対応は、令和7年4月1日の施行まで2年弱の期間でどのように対応していくか、どの学校法人にも共通する課題かと思います。どの程度内部統制システムが整備されているかについて、現状の整備状況をどのようにチェックすればよいかといった具体的な質疑応答もなされ、積極的に改正対応のヒントを共有する充実した時間となりました。
 

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