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会計基準の見直し(1)

新地方公営企業会計制度への対応(その2)

地方公営企業会計制度の改正は、「資本制度の見直し」と「会計基準の見直し」とに大きく分けられる。今回は「会計基準の見直し」について具体的内容やそれらにどのように対応していけばよいかについて解説していく。

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会計基準の見直し

1.会計基準見直しの意義
今回の会計基準の改正は、公営企業が提供するサービスの基礎としてのインフラの維持更新時代を迎え、企業としての経営管理に必要不可欠な財務情報を適確に把握するために行われたものであると考えられる。
現在の民間企業の会計基準や病院会計を中心に移行している地方独立行政法人の会計基準の考え方を取り入れると同時に、インフラとしての機能を維持するために適切な投資をしつつ黒字を達成しなければならないという民間企業とは異なる公営企業の特性を織り込んだものとなっている。

2.会計基準見直しの具体的内容と実務的対応策
会計基準改正に伴い、図表にあるように、多くの項目は資産が減り、負債が増える方向での貸借対照表の変化が想定される。そこで本稿と次稿にて、これらのうち多くの公営企業に大きな影響を及ぼす可能性の高い、借入資本金、補助金等により取得した固定資産の償却制度等、引当金、リース取引に係る会計基準に加え、キャッシュ・フロー計算書について概説する。

(1)借入資本金
すでに公営企業の経営分析で用いられている「自己資本構成比率」で実質的に負債として捉えられていた借入資本金について、形式的にも負債の部に計上するという見直しである。建設改良等に充てられた企業債や他会計長期借入金を計上する場所が、従来の「資本の部」から「負債の部」に変わり、かつ1年以内に償還する金額と1年を超えて償還する金額を流動負債と固定負債とに分けて計上することになる。
これに加え、企業債の償還にあたって一般会計からの繰入が見込まれる場合には、その負担部分を注記しなければならないこととなった。実務的には、自治体財政健全化法の健全化判断比率の1つである将来負担比率の算定基礎である「一般会計等繰入見込額」との整合性を図る必要があると考えられる。そのため、当該金額の注記に当たっては、財政部局との調整・協議を行うとともに、監査委員による決算審査や健全化判断比率審査にあたって両者の整合性に焦点を当てる必要があると考えられる。
(2)補助金等により取得した固定資産の償却制度等
国庫補助金等を財源に整備した償却資産について、補助金分は減価償却しなくてもよい「みなし償却」という制度があったが、これは廃止されることとなった。一方で、補助金等の金額を長期前受金として負債に計上したうえで、償却資産の減価償却に合わせて収益化していくこととされた。この改正は、新基準適用後に国庫補助金等を財源に取得する償却資産のみならず、基準移行時に保有する全ての償却資産で対応が必要となる点に留意するとともに、その対応に相当程度の手間と時間を要することが想定されるため、周到に準備を進めていくことが求められる。
なお、簡便な処理方法によっても移行処理が困難と判断される場合に、長期前受金に振り替えずに資本剰余金のままとする従前どおりの取扱いが認められているが、たとえば過年度の決算統計等のデータを活用すれば多くの時間をかけずに合理的な金額を算定した移行処理が可能と考えられることから、安易に従前どおりの取扱いを継続することのないよう留意が必要である。
※本文中の意見に関わる部分は私見である。
以上

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