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規制を俯瞰したとき、見えてくるもの

EUの規制改正が世界のライフサイエンス業界に与えるインパクト

最近実施されたり、また現在進行中にあるの欧州の規制改正は、世界のライフサイエンス業界にとって最も影響の大きいものの一つとなると言われています。本稿は、これら規制について解説するとともに、EUに製品を供給するすべてのライフサイエンス企業が取るべき次のステップについて、2017年1月にDeloitte 米国および英国がとりまとめ、解説したものを和訳しました。

本稿の構成

サマリー
医薬品識別(IDMP)データ標準
医療機器規則
臨床試験規則
強化されたEudraVigilanceシステム
医薬品偽造対策指令
ICH Q12
付属文書21 医薬品の輸入
製造品質指標
動物用医薬品規制法案
ライフサイエンス業界は今何をすべきか
問い合わせ先
(PDF, 1,781KB)

本稿のサマリ

ライフサイエンス業界は世界でも最も規制された環境におかれている業界の一つです。ライフサイエンス関係組織は、業界標準や規範だけでなく、きわめて複雑な世界、地域、国そして業界固有の指令や規則を遵守していかなければなりません。こうした規制は医薬品や機器の開発や販売のサイクルにも影響を及ぼします。

最近実施されたり、また現在進行中にあるの欧州の規制改正は、世界のライフサイエンス業界にとって最も影響の大きいものの一つとなると言われています。現在、欧州連合(EU)内で製品を販売または提供している製薬企業、バイオテクノロジー企業、医療テクノロジー(メッドテック)企業は、医薬品の開発/サーベイランスプロセス内の規制プラットフォームを強化し、EU域内の規制の整合性を図ることを目的とした一連の改正の影響を受けることになります。新設または改正されたEUの法規制は、ライフサイエンス企業全体に変化をもたらし、現在の組織構造、ガバナンス、プロセス、そしてテクノロジーに影響を与えることになると予想されています。

現在の業務モデルと将来の規制要件をどう管理していくか、企業が一体となって費用効率の高い迅速な対応をとることができるか、その能力が試されることになるでしょう。これまで以上に社内の部門の枠を超えた協調、そしてデータ管理とデータインテグリティが必要となっていくでしょう。

ライフサイエンス企業が販売許認可維持のための規制遵守モデルは、これまでも新たな法規制に対応して発展してきました。最近のコンプライアンス部門は、サポート先のビジネス部門に応じて縦割り業務になっていることが多いようです1。多くの企業がコンプライアンス戦略とガバナンスを一体的にとらえる視点に欠けています。このような状態は次のような弊害を招く恐れがあります。
 

  • コンプライアンス違反の可能性(例:監督が不十分または監督が行き届かない分野が生じる)
  •  重複した取り組み、冗長なプロセスや構造
  • 標準化思考の欠如
  • コンプライアンスの取り組みについての総合的・全社的視点が得にくくなる
  • 新たな規制やコンプライアンス課題への迅速な対応への妥協


業界をリードする大手企業は、この業界の複雑な規制環境に対応していくために、基本的な部門レベルのコンプライアンス要件への取り組みにとどまらず、その先を見据えています。具体的には、コンプライアンスの仕組みと全社的な活動を十分に理解することにより、企業はコンプライアンスが機能するよう、モデルを合理化し簡素化する機会を見いだすことができます。最終的には、この業界の最も本質的なリスク(安全上の問題や医薬品供給の中止など)の軽減を目標とすべきでしょう。

医薬品識別(IDMP)などの大規模で複雑な規制の中には、何年もかけた規制内容の最終化までに段階的な展開がなされるものがあります。その場合、企業には猶予期間があるといえますが、IDMPもその他の新しい規制も、単体、あるいは他の規制と切り離して対処すべきではありません。企業はEUの規制改革(図1)の一環である他の法規制の新設/改正と関連させながらこうした新しい規制の要件を知り、理解する必要があります。一連の新規制は、製薬企業内の多くの部門に影響が及び、求められる変革を実現するためには、これらの部門からのインプットが必要となるからです。

 

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