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FATF対日第4次相互審査の結果について(速報)

本邦AML/CFT態勢の評価と課題

FATF第4次対日相互審査の結果が漸くリリースされ、監視対象国(いわゆるグレーリスト候補)入りは回避できたものの、非監視対象国の重点フォローアップ国に相当する厳しい評価となった。指摘事項は官民を含めて多岐に亘り、事業者側の課題としては「継続的顧客管理(取引管理)」、「取引モニタリング」、「実質的支配者の管理」等が指摘されている。今後5年間の重点フォローアッププロセスにおいては、政府の取り組みを確りと受け止めつつ、事業者自身も自律的なリスク管理態勢の整備に向けた不断のコミットメントが求められる。

要旨

  • コロナ禍で延期を重ねていたFinancial Action Task Force(FATF)第4次対日相互審査の報告書が、8月30日、漸くリリースされました。
  • 内容は下表の通りで、監視対象国(いわゆるグレーリスト候補)入りは回避できたものの、下位2段階評価の合計が勧告40項目のうち11項目、直接的効果11項目のうち8項目となり、非監視対象国のうちの重点フォローアップ国に相当する不芳な評価結果となりました。

 

【表1】FATF第4次対日相互審査の結果(集計表)

勧告(Recommendations)

評価(遵守の度合い)

項目数

Compliant

4

Largely Compliant

24

Partially Compliant

10

Non-Compliant

1

N/A

1

合計

40

 

勧告(Recommendations)

評価(有効性のレベル)

項目

High Level(HE)

0

Substantial Level(SE)

3

Moderate Level(ME)

8

Low Level(LE)

0

合計

11


【出所】FATFリリースよりデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が作成

 

  • 事前の報道等でも言及されていた通り、政府に向けられたものを含め指摘事項は多岐に亘りますが、事業者側の主たる課題としては「継続的顧客管理(取引管理)」、「取引モニタリング」、「実質的支配者の管理」等で改善の余地があるとされています。
  • 本邦では戦後以来の政治環境等から当局の法執行権限強化には容易ではない側面もあり、加えて省庁間の連携といった課題も見え隠れする中、今後5年間の重点フォローアッププロセスにおいて事業者による自律的なリスク管理を推進していく上で、政府の取り組み姿勢が改めて問われています。他方、事業者としてはそうした政府の動きを見極めつつも、自律的なリスク管理態勢の整備・強化に向けた不断のコミットメントが求められることになります。

漸くリリースされた相互審査報告

2019年に実施されたFinancial Action Task Force(FATF、金融活動作業部会)第4次対日相互審査は、当初、翌年6月のFATF総会で討議・採択され、同年8月前後にリリースされる予定であったところ、コロナ禍で相互審査全体のスケジュールが順延された結果、討議・採択が今年6月のFATF総会に持ち越され、品質や一貫性のレビューを経て、8月30日に相互審査報告(Mutual Evaluation Report、MER)が公表されたものです。

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執筆者

小島 英一/Kojima, Hidekazu
パートナー
(金融犯罪リスク管理/金融フォレンジック 統括責任者)

邦銀G-SIF最大手で内外AML/CFTを統括、Wolfsbergで唯一のアジア代表も歴任。ガバナンス、グループ管理、大手米銀の経営管理等を幅広く経験。
 

郷田 建二郎/Goda, Kenjiro
シニアヴァイスプレジデント
(ACAMS Japan Chapter Director、CAMS資格保有)

メガバンクで現場目線を重視したAML/CFTを推進、制裁対応やコルレス管理等を含むAML/CFT分野で数多くの全行施策を主導、WolfsbergやSWIFTの活動にも深く関与。
 

杉田 潤/Sugita, Jun
シニアヴァイスプレジデント

地銀大手でAML/CFTを統括、反社対応からコルレス管理までの幅広いAML/CFT分野で実務に根差した統括経験を蓄積、地銀協の活動にも深く関与。

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