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気候関連財務情報開示タスクフォースが最終報告書を発行

IFRS in Focus

2017年6月29日、気候関連財務情報開示タスクフォースが最終報告書を発行した。最終報告書は任意の提言をまとめたものであり、G20の付託に対応し、現時点の資本市場における情報開示の要求事項に適合している。最終報告書の目標は、投資家、債権者、アセットオーナーおよび保険会社が、重要な気候関連リスクを理解できるように有益な、明確で一貫性のある気候関連財務情報開示が行われることである。

最終報告書の要約

2015年に、金融安定理事会より設立された気候関連財務情報開示タスクフォースが、最終報告書を発行した。最終報告書で目的としているのは、投資家、アセットオーナー、資産運用会社、債権者、保険会社が、重要な気候関連リスクを理解する上で有益な、一貫性のある気候関連財務情報開示を行うことである。

提言では、財務報告の枠内で、市場主導のインダストリーを中心とした取組を奨励し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標を取り上げている。提言は、すべての組織で適用可能となっている。

提言された情報開示では、気候関連のリスク(物理的リスクおよび移行リスク等)および機会(資源の効率的利用等)、キャッシュフロー、資産および負債、当期純利益ならびにその他の指標に関連する財務的影響を重視している。

提言が効果的に実行されると、定量的な財務情報が増え、特に、気候関連のリスクによる実際および潜在的な財務的影響についての指標を報告することで、透明性が高まるはずである。また、財務諸表項目も直接的な影響を受けると考えられる。

タスクフォースによって描かれた情報開示に関するガバナンスのプロセスは、既存の公表財務情報開示に対して使用されているものと同様のものになると考え、最高財務責任者や監査委員会のレビューを受けるものであると考えている。

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方針の背景:気候変動による財務的影響

2017年6月29日、気候関連財務情報開示タスクフォースが最終報告書を発行した。最終報告書は任意の提言をまとめたものであり、G20の付託に対応し、現時点の資本市場における情報開示の要求事項に適合している。最終報告書に先んじて、2016年12月にタスクフォースの提言に対するコンサルテーションが公表されたが、最終報告書の内容はコンサルテーションとほぼ同じである。最終報告書は一つの簡潔な目標を掲げており、それは、投資家、債権者、アセットオーナーおよび保険会社が、重要な気候関連リスクを理解できるように有益な、明確で一貫性のある気候関連財務情報開示が行われることである。そして、このような情報が、気候関連のリスクおよび機会の価格決定の向上につながる。

気候変動の脅威に対して地球規模での対応を強化するために200近くの政府が採択した、2015年12月のパリ協定のすぐ後に、G20の要請を受けて、金融安定理事会は、マイケル・ブルームバーグが率いるインダストリー主導のタスクフォースを設置した。

タスクフォースは、気候変動関連リスクを、組織が現在直面している最も重大で、おそらく最も誤解されているリスクの一つであると考えている。パリ協定は、経済が低炭素経済へ移行する際に、短・中・長期的な影響や混乱を与えることになるだろう。この移行リスクは、グローバルな金融システムの安定性および回復力(レジリエンス)に関心のある政治家にとっては重要である。エネルギー使用量の急激な変化による経済影響および炭素集約度の高い資産の再評価が効果的に管理されるには、グローバルな金融市場は、十分な情報に基づいた投資、貸付、保険付与を裏付ける一貫したより良い情報を必要としている。

情報開示に対する責任

最終報告書の主な提言は、気候関連財務情報開示が、国内の情報開示の要求事項に則って、証券市場の規制当局に提出される一般的な(つまり、公表される)財務報告(年次財務諸表および関連する開示書類)に含まれるべきであるということである。G20の国や地域の多くでは、すでに重要なリスクおよび不確実性見の説明を求めており、これらには重要な気候関連リスクも含まれる。

最終報告書は、財務報告に含まれるほとんどの情報が重要性評価の対象になることを認識している。しかし、気候関連リスクは、ほぼ全ての業界に影響を及ぼす分散不可型のリスクであるため、多くの投資家は、このリスク固有の側面には特定の対応が必要であると考えている。結果として、最終報告書では、組織のガバナンスおよびリスク管理プロセスと手続きは常に開示すべきであるが、戦略および指標と目標についての開示は、通常のも重要性評価の対象とすべきであると提言している。

最終報告書の提言が実行されると、定量的な財務情報が増え、特に、気候関連リスクによる実際および潜在的な財務的影響についての情報の報告になる可能性が高い。さらに、財務諸表項目(営業キャッシュフロー、資産評価、当期純利益、自己資本比率)に直接影響を及ぼす可能性がある。結果として、(タスクフォースは、)気候関連の財務情報もその他の財務情報の内部統制と類似した内部統制の対象とすべきで、「ガバナンスのプロセスは、既存の財務報告に対するものと同様のものとし、かつ必要に応じて最高財務責任者や監査委員会のレビューを受けるもの」考える。

見解

タスクフォースは、早急に規制を変えようとしているわけではない。それよりも、「ソフト・パワー」によって、財務報告の枠内で、市場主導のインダストリーを中心とした取組を推奨している。このため、タスクフォースが、信頼性のある、検証可能で、客観的なデータを生成する適切なシステムが必ずあるように、最高財務責任者や監査委員会の関わりを求めていることは当然である。

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