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サステナビリティと取締役会

2018年、取締役が認識すべき事柄は何か

環境・社会・ガバナンス(ESG)課題を含むサステナビリティ(持続可能性)が、次第に取締役会の議案の最重要事項になりつつあります。サステナビリティが取締役会の最初の議題になるとは想像しがたいかもしれませんが、今ではそれが、企業の競争力であり、経営の継続力となっています。サステナビリティには従来から環境災害、労働関係、安全上の問題、不祥事などさまざまなトピックが含まれ、すべてのセクターに影響し、最も先駆的な取り組みを行う企業や最も思慮に富んだ取締役にとっても課題になります。

はじめに

サステナビリティに関心を向ける投資家が増えるにつれて、ESGの「G」に相当するガバナンスの要素と、企業の戦略、リスク、資本配分を監督する取締役会の受託者責任が重視されることが多くなります。環境・社会の動向や変化するステークホルダーの期待により生じるリスクは、徐々に企業の戦略目標達成能力に影響を及ぼすようになってきています。全社的リスク管理(ERM)は、これらのリスクについて企業の検討範囲を拡大するための中心的な手段です。ESGリスクを織り込んでERMを広げることにより、リスク、戦略、意思決定を結びつけられるようになり、企業のレジリエンスや競争力をさらに高めることができます。ESGリスクをより広範なERMの実務に堅実に統合することで、重要なESG情報の測定と開示を促進し、経営陣と取締役会が、全体的に必要なリソースを評価し、資本配分をより効果的に行うことができるようになります。

デロイトがサステナビリティについて、取締役会での議論により多くの時間を要すると考える理由の一つは、ESGを取締役会での事業戦略やリスクに関する議論に盛り込むための単一かつ標準的なアプローチが存在しないためです。対応を怠ることの危険は大きく、取締役は今やサステナビリティを自らの受託者責任や信認義務の基本要素として認識して行動する必要があります。

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なぜ今なのか

サステナビリティの物理的・経済的な影響を軽視する企業は、自社の危機も覚悟しなければなりません。サステナビリティの要素が財務リターンに影響し、長期的な価値を高める機会を提供することを示す根拠はますます増えています。

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2018年1月に発表された世界経済フォーラム(WEF)の「グローバルリスク報告書」1で、環境問題が再び世界で一番のリスクであることが示されました。環境分野の5つのリスクすべてが、今後10年間における発生確率の高さと影響の大きさの両面で平均以上と位置づけられています。2017年にデロイトとフォーブスが共同で実施した調査2では、サステナビリティが、企業幹部が挙げるリスクのトップとなっています。

機関投資家は、その受益者に対する受託者責任に呼応して、事業戦略、ガバナンス、リスク評価、測定と開示実務において、ステークホルダーの期待の変化などの環境・社会動向に企業がどのように取り組んでいるかについてより透明性を高めるよう求めています。投資家は企業に対し、サステナビリティがいかにして価値を生み出し、価値を保護するかについて、信頼の置けるコミュニケーションおよび継続的なエンゲージメントを通じて報告することを求めています。またこうした投資家は、取締役会がESGを長期的戦略に組み込むうえで積極的な役割を果たすことも求めています。

 

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