調査レポート

大企業とスタートアップの調査から大企業のDX推進の遅れが浮き彫りに

コロナ禍のスタートアップの新サービスに対しての目利き力やスピードの欠如も明らかに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と共存する社会においてデジタル技術を活用した事業変革であるDXの推進が官民・業界問わず求められる中、スタートアップと大企業のDXにおける連携等の現状を調査した結果を発表します。本調査は「ネクスト・ノーマル社会構築に向けたDX推進の現状調査」と題したもので、6月に実施した国内スタートアップ305 社と国内大企業271社へのアンケートを基に分析しました。

主な調査結果

大企業とスタートアップともに大企業のDXの遅れを認識

大企業のDXの進捗については、9割近くが自社のDXについて加速させる必要があると回答しており、さらにこれらの企業の7割以上がDX推進に課題や遅れがあるか、計画が立っていないと評価しています。
 

図表1 大企業のDX推進の必要度と推進状況について
※クリックまたはタップして拡大表示できます

大企業のDXの遅れはスタートアップからも指摘されています。本調査では約9割のスタートアップは民間企業や官公庁・地方自治体と連携したDX推進に関心があると回答しています。しかし、DX導入の準備が整っていると思う組織の割合については「4割未満」と回答したスタートアップが、大企業に対して約6割となりました。スタートアップは大企業と連携したDXに関心があるものの、多くの連携先のDX導入の準備が不十分と考えているといえます。
 

図表2 スタートアップが考えるDX導入準備が整っている大企業の割合(%)
※クリックまたはタップして拡大表示できます

コロナ禍で大企業のDXの具体的なニーズは鮮明になるもののスタートアップとの連携には課題

大企業にDX推進にあたり重要と感じるアプローチ・技術について聞いたところ、「データ化(情報の可視化・管理・運用)」(80%)が最多となり、続いて「遠隔・リモート技術」(55%)、「AI」(47%)、「IoT」(42%)が挙げられました。また、具体的にどのような領域でのDX施策が必要かについては「在宅勤務環境整備」(55%)、「営業活動・商談」(52%)を過半数の回答者が挙げており上位となりました。大企業では、AIやIoT等の新技術導入やデータ利活用による価値創造を目指す従来からのDXに加えて、コロナ禍における非接触型の経済活動への移行を踏まえたより具体的な課題へのDXニーズも高いことが分かります。

スタートアップにコロナ禍における取組みを聞いたところ、61%が「新しいプロダクト・サービスの開発を実施した」と回答しており、変化を捉えた新商品・サービス開発に対して積極的であることが分かりました。具体的には飲食店に対するデリバリー・テイクアウト対応支援、企業に対する省人化・遠隔化対応支援、個人に対するオンライン教育・医療・レジャー支援といったサービスなどが挙げられます。こういった中で、大企業がスタートアップ企業のサービスを活用したDX推進に際して課題と感じる要素は「スタートアップ提供サービスの信頼性判断が困難」(51%)、「スタートアップサービスの目利き機能が十分でない」(47%)となり、スタートアップの供給能力、将来性、財務健全性といった項目を20ポイント超上回っています。スタートアップ自体よりもサービスそのものの判断が難しく目利きができないことが、スタートアップと連携したDX推進の大きな課題となっています。さらに、大企業の意思決定・対応スピードについても、スタートアップの84%が「課題と感じる」と回答するとともに大企業自身も69%がスタートアップとの連携の課題として挙げています。
 

図表3 スタートアップのサービスを活用したDX推進に際して、スタートアップ側への課題と感じる要素
※クリックまたはタップして拡大表示できます
背景にある多岐にわたる大企業のDX推進の課題

大企業のDX推進について、課題と感じる事項を確認したところ、「組織・従業員のデジタルリテラシーが低い」(49%)に次いで、「DX推進に向けたガバナンス・指揮系統が存在しない」(40%)、「DX計画・戦略が不在」(39%)、「レガシーシステムからの切り替えが難しい」(39%)となり、変革が停滞する背景には、人材面、マネジメント面、技術面と多様な課題があることがうかがえます。
 

図表4 大企業のDX推進の課題
※クリックまたはタップして拡大表示できます

総評

DTVS 代表取締役社長の斎藤祐馬は、今回の調査結果について次のようにコメントしています。「大企業のDXの課題が多様である状況においては、それを打破するための戦略や計画、指揮命令系統といったリーダーシップに関する課題に着目すべきです。本格的にデジタルに強い若手を登用するなど大胆な突破口を検討することも必要です。このままでは大企業がコロナ禍の非接触型社会へのシフトにおいてもDX施策のスピードが追い付かなくなるリスクとともに、大企業がスタートアップのサービスのユーザーとなって日本経済の活性化を後押しする役割も果たせないでしょう。」

 

調査概要

実施主体:デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
調査方法:インターネットを通じたアンケート調査
調査期間:2020年6月19日~2020年6月28日
回答社数:国内スタートアップ 305社
     国内大企業(Morning Pitch会員) 271社
*図表は小数点第1位について四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

 

調査レポートPDF

調査レポート全文は添付のPDFをご覧ください。

ネクスト・ノーマル社会構築に向けたDX推進の現状 [PDF:1.2MB]