ナレッジ

速報!RCEP(地域的な包括的経済連携協定)が2022年1月1日に発効

関税ニュースレター 2021年11月05日/2021年12月06日アップデート

11月2日、オーストラリアとニュージーランドにおける批准手続きが完了し、ASEAN事務局に寄託されたことにより、RCEP(地域的な包括経済連携協定:Regional Comprehensive Economy Partnership Agreement)の発効要件(※)が満たされ、日本、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、ラオス、ニュージーランド、シンガポール、タイ、ベトナムの計10カ国について、2022年1月1日にRCEPが発効する運びとなった。

(※) RCEPは、少なくともASEAN加盟国の過半数を占める6カ国、及びASEAN加盟国外のうち3カ国以上が批准手続きを完了させ、ASEAN事務局長に寄託した日の60日後に当該寄託国について効力を生ずるとしている。

 

12月06日 RCEPに関する最新情報のアップデート(韓国・中国・日本商工会議所)

韓国議会での批准手続きが完了。2021年2月初旬に発効

2021年12月2日、韓国議会においてRCEP(地域的な包括的経済連携協定:Regional Comprehensive Economy Partnership Agreement)が批准された。 これにより、2022年2月初旬に、韓国においてもRCEPが発効する運びとなった。

RCEPは、既に批准手続きが完了している日本、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、 中国、ラオス、ニュージーランド、シンガポール、タイ、ベトナムの計10カ国について、2022年1月1日に発効することが決定しているが、 約1カ月遅れで韓国が加わることになる。

RCEPは、日本と中国、韓国の間で締結された最初の自由貿易協定であり、韓国の発効により、中国、韓国の双方において効力を発することになる。

 

中国における原産地手続きを規定した法令が公布

2021年11月23日、中国税関当局は、RCEPにおける輸出入産品の原産地証明手続きを規定した税関総署 第255号令を公布した。来年1月1日より施行される。

本法令においては、第三者証明制度と認定輸出者制度に係る手続きが言及されているが、第三者証明制度における原産地証明書の様式については、別途、公表するとしている。また、認定輸出者制度の運用に係る規定については、税関総署 第254号令として公布されており、来年1月1日より施行されることになっている。

 

日本商工会議所が原産地証明書の発給手続きを公開

2021年12月3日、政府の指定発給機関である日本商工会議所は、RCEPに基づく第一種特定原産地証明書の発給手続きを公開した。

詳細は日本商工会議所のウェブサイトの通りとなるが、主要なポイントは以下になる。

  • 2022年1月4日より、申請の受付及び判定依頼を開始する
  • 発効当初は企業からの依頼が集中する可能性があり、処理が大幅に遅れる可能性がある
  • 第一種特定原産地証明書は、PDF形式での発給となる(発給手数料はクレジット払い/事前振込等の方法で事前支払い)

 

RCEPの概要と企業における留意事項

RCEPは日本が中国・韓国と初めて締約する通商協定である。税関手続並びに貿易円滑化、サービス貿易、投資、知的財産、電子商取引、政府調達、紛争解決等の多岐の分野に渡るが、取り分け企業にとって影響が大きいのは、やはり物品貿易、即ち関税の引下げとなる。特に、我が国の重要な輸出物品である工業品につき、14カ国全体で約92%の品目について関税の撤廃が実施されることとなった。

中国及び韓国において関税が撤廃される品目の割合は、中国は従前の8%から最終的に86%に、同じく韓国は19%から92%へと大幅に上昇している。つまり、これだけの品目につき、即時撤廃若しくは段階的な引下げにより関税コストの削減が可能になる。

大きな関税コスト削減の可能性を秘めたRCEPであるが、無条件で関税の引下げが可能になる訳ではない。協定が定める条件(原産地基準、直送基準)を満たし、必要な手続きを踏まえた上で、初めて関税引下げのメリットを享受できることになる。特に、”Made in RCEP参加国”となるための原産地基準については、品目(HSコード)毎に適用される基準が異なるため、先ずは輸入国におけるHSコードを確認した上で、必要な条件を確認する必要がある。

一方で、中国や韓国の税関当局は、協定上の利用条件を満たしているか、また、HSコードや通関申告時の課税標準(関税評価額)が適正か、という点について厳しく確認を行う傾向があり、RCEPの発効に伴い、これらの対応が更に厳格化することが懸念される。税関当局が輸入通関時の申告内容やRCEPの利用可否について疑義を持つ場合には、税関事後調査や検認が行われ、追徴課税や罰金の賦課、更にはサプライチェーンへの影響やレピュテーションリスク等にも繋がる可能性がある。

各企業においては、自社の現在及び将来のサプライチェーンを踏まえたRCEPによる関税コストの削減メリットを確認すると共に、上述のコンプライアンスリスクを念頭に置き、協定発効前の今のタイミングで、早々に、自社の原産地の判定結果やHSコード、関税評価額が適正か否かを確認することが強く推奨される。

 

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

 

お役に立ちましたか?