事例紹介

税務調査・係争対応に関するよくある質問

税務調査・係争対応に関するよくある疑問に対し、Q&A形式で解説します。

Q: 修正申告と更正処分の違いは?

Q: 修正申告と更正処分では、どのような違いがありますか?

A: 調査官は、税務調査の結果申告所得が過少であると判断した場合は、通常、修正申告書の提出を求めるという形で課税提案がなされます。修正申告書を提出しないことを選択することも可能ですが、その場合には職権による更正が行われます。

更正の内容に不服がある場合には、再調査の請求や審査請求(これらを総称して「不服申立て」と呼びます。)といった救済手段に訴えることができます。いったん修正申告書を提出してしまうと、更正処分について不服申立てを行うことはできません(なお、別途、更正の請求をすることはできます。)。調査官から課税提案がなされた場合には、修正申告をするか、または、更正を受けた上で不服申立てを行うか(この場合は、訴訟まで行くことを前提にするか)、メリットとデメリットを考慮して、慎重に検討する必要があります。

Q: 国際取引の課税の場合、留意すべき点は?

Q: 国際取引の課税の場合、何か留意すべき点はありますか?

A: 租税条約の適用対象取引について更正が行われた場合には、不服申立てと同時に租税条約上の相互協議による救済を受けることも可能なケースがあります。租税条約が適用される取引の典型的な例である移転価格課税が行われた場合には、更正を受けるとともに相互協議申立てを行うと、相互協議の結果が出るまで追徴税額の納付を猶予されます。国際取引がらみの課税案件でもタックスヘイブン対策税制の適用のように租税条約の適用がない場合もあり、一見条約の適用がないように見える場合でも、租税条約上の問題として扱うことが可能な場合もあります。

国際取引がらみの課税案件については、条約の適用の可否や、相互協議が可能な案件かどうかの判断ならびに国内法上の救済手段やそれぞれの手続きに係るコストを含むメリットおよびデメリットを考慮した上で、どのような解決策を追求すべきかを慎重に検討すべきといえます。

Q: 更正処分内容に不服の場合の救済手段は?

Q: 更正処分内容に不服の場合、どのような救済手段がありますか?

A: 更正が行われた場合の国内法上の救済手段としては、不服申立てと税務訴訟の2段階があります。租税条約が適用になる場合には、これらとは別に、相互協議の申立てが可能です。

不服申立ては、行政上の手続きで、処分をした行政庁の長に対する再調査の請求と、国税不服審判所長に対する審査請求の2つがあります。一方、税務訴訟は司法手続きです。更正を受けた場合、ただちに税務訴訟を提起することはできず、まず不服申立てを経なければなりません。これを不服申立前置といいます。それぞれの概要は、以下のとおりです。

1. 再調査の請求
更正処分に係る通知を受けた日の翌日から3カ月以内に更正を行った税務署長等に対して再調査の請求ができます。審査請求の前にこの再調査の請求をするかどうかは、請求人の選択によります。税務署長等は、審理の結果、却下、棄却、原処分の全部もしくは一部の取消しまたは変更のいずれかの再調査決定を行います。再調査決定は、主文と理由を記載した再調査決定書によりなされます 。

2. 審査請求
更正処分に係る通知を受けた日の翌日から3カ月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。

また、審査請求の前に再調査の請求をした場合において、再調査決定に不服のときは、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から1カ月以内に国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。

なお、再調査の請求をした日の翌日から3カ月を経過しても再調査決定がないときには、決定を経ずに審査請求ができます。

審査請求に対する国税不服審判所長の判断が裁決です。裁決には、却下、棄却、原処分の全部もしくは一部の取消しまたは変更があります。裁決には必ず理由が付されます。原処分の全部または一部の取消しの裁決は、行政庁を拘束するので、行政庁は、その裁決で排斥された理由と同じ理由で再更正処分をすることはできず、また、その裁決の内容を不服として訴訟を提起することもできません。

3. 訴訟
裁決があった後の処分になお不服があるときには、裁判所に訴訟を提起することができます。また、審査請求の翌日から3カ月を経ても裁決がなされないときにも、訴訟を提起できます。

通常、訴えの類型は、原処分の取消しを求める取消訴訟になります。

訴訟を提起したい場合は、訴状を第一審の管轄裁判所である地方裁判所に提出します。訴状は、審査を経て、被告(国)に送達されます。被告はそれを受けて答弁書を作成します。通常、税務訴訟における主張・立証は、ほとんど準備書面という書面の裁判所への提出および相手方への送付により行われます。その後、口頭弁論が開かれますが、「口頭」といっても、実際には、「準備書面のとおり陳述します」といった簡単なやりとりだけです。

課税処分の取消訴訟の判決の種類は、訴訟判決(却下)または本案判決(請求棄却、請求認容)のいずれかです。請求認容判決がなされると、処分庁による減額更正を待たずに、原処分がなかったことになります。

第一審の判決に不服の場合には、高等裁判所に控訴することができ、最終的には最高裁判所に上告または上告受理申立てをすることもできます。

 

Q: 税務調査が行われる法的根拠は?

Q: 税務調査はどのような法的根拠に基づいて行われるのですか?

A: 国税調査官等は、所得税、法人税、地方法人税または消費税に関する調査について必要があるときは、納税者等に質問し、その者の帳簿書類その他の物件を検査する権限があります(国税通則法74条の2第1項)。この質問に対して答弁しなかったり、偽りの答弁をしたり、検査を拒んだり、妨げたり忌避した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとされています(国税通則法127条第2号)。
 

Q: 不服申立て・訴訟に進む場合の注意点は?

Q: 現在調査が行われており、不服申立て・訴訟に進みたいと考えていますが、その場合、調査対応上とくに注意しておくべき点はありますか?

A: 通常の調査の場合でも、調査官に提出した文書や質問への回答の内容は、後日紛争になった場合に備えて、調査初日から詳細に記録し整理・保存しておく必要があります。不服申立てや訴訟を行う場合には、そうした記録が極めて重要な証拠になる可能性がありますので、注意が必要です。調査の際にどのようなやりとりがあったかが問題になり、そうした記録が大いに役立つことがあります。調査官側は詳細な記録を取っています。税務係争になった際に記録の保存状況が不十分だったばかりに、不利になるケースはあり得ます。調査期間中は日々できるだけ詳細な記録を残しておくことが必要です。

Q: 納税者の主張が認められる割合は?

Q: 不服申立てや訴訟において納税者の主張が認められる割合はどのくらいですか?

A:
平成28年度

1. 再調査の請求
平成28年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)における異議申立て及び再調査の請求の発生件数は、合計で1,674件で、前年度(異議申立てのみ)に比べて47.5%減少しています。処理済件数1,805件のうち、請求が一部または全部認められた件数は123件で、割合は6.8%となりました。うち、全部取消件数が23件、一部取消件数が100件です。全部取消しのうち、申告所得税が7件、法人税が2件、相続税が5件です。

(第1表)再調査の請求の状況

区分

申立て件数

伸び率

処理済件数

請求認容件数

割合


平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
平成28年度


4,795
5,103
3,803
3,424
2,358
2,755
3,191
1,674


△10.5
6.4
△25.5
△10
△31.1
16.8
15.8
△47.5


4,997
4,746
4,511
3,286
2,534
2,745 
3,200
1,805


591
476
375
325
253
256
270
123


11.8
10.0
8.3
9.9
10.0
9.3
8.4
6.8

(注)平成27年度以前は、全て「異議申立て」であり、平成28年度は、「異議申立て」および「再調査の請求」の合計である。
(出典:国税庁ウェブサイト)

2. 審査請求
平成28年度における審査請求の請求件数は2,488件で、前年度に比べて18.6%増加しました。処理済件数1,959件のうち請求が一部または全部認められた件数は241件で、割合は12.3%となっています。全部取消しが49件、一部取消しが192件でした。全部取消しのうち、申告所得税が7件、法人税が1件、相続税が19件でした。1年以内処理割合は98.3%と前年度の92.4%から上昇しました。

(第2表)審査請求の状況

区分

審査請求件数

伸び率

処理済件数

認容件数

割合


平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
平成28年度


3,254
3,084
3,581
3,598
2,855
2,030
2,098
2,488


14.8
△5.2
16.1
0.5
△20.7
△28.9
3.3
18.6


2,593
3,717
2,967
3,618
3,073
2,980
2,311
1,959


384
479
404
451
236
239
184
241


14.8
12.9
13.6
12.5
7.7
8.0
8.0
12.3

 (出典:国税庁ウェブサイト)

3. 訴訟
平成28年度に国を被告とした訴訟の発生件数は230件で、前年度に比べて0.4%減少しました。終結件数は245件で、うち原告が一部または全部勝訴した件数は11件で割合は4.5%となりました。うち申告所得税が4件、法人税が7件でした。

(第3表)国側を被告とした訴訟状況

区分

訴訟提起件数

伸び率

訴訟終結件数

原告勝訴件数

割合


平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
平成28年度


339
350
391
340
290
237
231
230


△4.5
3.2
11.7
△13.0
△14.7
△18.3
△2.5
△0.4


320
354
380
383
328
280
262
245


16
27
51
24
24
19
22
11


5.0
7.6
13.4
6.3
7.3
6.8
8.4
4.5

(出典:国税庁ウェブサイト)

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