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サービス

CRM:コンタクトセンターの人手不足とスキル育成の遅れ

コンタクトセンターの未来を変えるデロイト トーマツのAIチャットボット

より複雑化する市場、多様化する社会において、企業活動を支えるコンタクトセンターは、近年その重要性がさらに注目されています。お客様からのお問い合わせに24/7迅速かつ正確に応えるデロイト トーマツのAIチャットボットの登場が、コールセンター業務の未来を切り開きます。

1. はじめに

コンタクトセンターは、企業活動を支える重要部門の1つです。顧客から寄せられる様々な「声」に、いかに迅速かつ的確に応えるか、その品質が、顧客満足度や企業の社会的信用に直結しているからです。ところが、この“すぐにつながる”を実現するのは簡単ではありません。そこで現在、デジタル技術の活用が加速しています。「チャットボット」による顧客対応は、その中核を成すものの1つといえます。顧客からの電話の問い合わせが殺到し、オペレーターの話し中や電話回線が逼迫した際に、チャットボットが代わりに対応することで顧客の不安を解消することが期待されます。

2. クライアントの課題

商品やサービスを取り扱う企業のコンタクトセンターのオペレーターには、電話応対や商品知識などの高度なスキルが求められます。商品やサービスの種類が多岐に亘り、販売における条件やサービス提供の条件が変動する場合は、コンタクトセンターでの対応は極めて難度の高いものになります。本稿で紹介する企業(以下、クライアント)は、オペレーター着任までに最短でも2カ月の研修期間を設けており、ただでさえ慢性的な人手不足なのにも関わらず、戦力になるまでに時間が掛かるため。労働力人口が減る中、人手のみに頼る戦略には限界を感じていました。

近年、クライアントは自動応答システムのチャットボットを導入し、自動応答の実現に向けた動きを進めていました。しかし、チャットボット導入の際には、「どんな質問にどんな回答を返すか」についてあらかじめ膨大なルールを準備する必要があったため、システムを稼働するまで手間と時間がかかってしまうという課題がありました。

3. 提供したソリューション

そこでDeloitte Analyticsは、同社が対話型AI 製品の導入を検討するに際し、PoC(Proof of Concept:概念実証)を実施しました。PoCを実施する技術を選定するにあたり最新の自然言語処理AI技術である「BERT」を採用することで、顧客からの問い合わせや社内スタッフから日々寄せられる質問の履歴をもとに、高精度なチャットボットを短期間で開発することを可能にしました。

一般的なチャットボットは会話の内容を実用に足るレベルまでAIに認識・理解させるには、日常的な会話に加えて専門用語や頻出単語も学ばせる必要があります。しかし、今回開発されたチャットボットをクライアントが利用する際には、上記のような複雑な学習を伴わず、かつ、プログラムを一切書くことなく、データを入れ替えるだけで顧客のお問い合わせに答えられるようにしました。

4. 成果

  • 従来のチャットボットにおける正答率の大幅な改善
  • コールセンターのみならず、他部門が持つデータに置き換えることで幅広い用途に横展開することが可能
  •  データサイエンティストではないユーザでも使えるように、複雑な学習を伴わず、かつ、プログラムを一切書くことなく、データを入れ替えるだけで顧客のお問い合わせに答えられるようにした

5. まとめ

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」により、デジタルを導入することを主目的とした変革から、デジタルを道具として駆使し、ビジネス自体を根本的に変革するフェーズに移行しています。ニューノーマルの時代を迎え、人々の生活様式は大きく変わり、企業の顧客接点もドラスティックな変化を余儀なくされています。これまで対面接客を重視してきた業種においても、リアルな店舗に加えて、ECなどによるリモートでの購買体験を強化する企業が増加しています。両チャネルにおいて高品質な接客や顧客体験(CX)を提供することが不可欠になっています。このように、AIドリブンによるタスクの自動化や高度化、業務プロセスそのものの変革により、現在のタスクが陳腐化して時代遅れになることは避けて通れません。一方でテクノロジーの進歩や市場の変化に依ることなく社会的課題・文化的背景を深く理解し、新しいテクノロジーを創造的に適用することは人にしか出来ないことです。例えば、AIのひとつである自然言語処理の技術的進歩は目覚ましく、人間同様に文章から自然言語の構造を学び、文書から感情を読み取る必要があるような作業にも対応できるようになってきました。しかし、テクノロジーの進歩や市場の変化に依拠することなく社会的課題・文化的背景を理解し、新しいテクノロジーを創造的に適用することは、AIにはできない、人ならではのことです。DXが進行する中でも、AIと協調してリアルな接点と対応し、顧客の満足度を上げることで、人は「特別」であり続けることには変わりはないと筆者らは考えています。

執筆者プロフィール

毛利 研 (もうり けん)
有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス
マネジャー

国内トップシェアの事業サービス企業にて、機械学習および自然言語処理に関する研究開発を経て現職。人工知能関連の実装能力、業務経験が豊富だけでなく、Bitcoin/Blockchainを含む最新技術に関する調査・戦略立案・投資実行の経験も有する。大手メーカー時代は、防衛事業関連部署にて各種解析サービスを提供する情報システムの開発や事業戦略立案に従事。米国拠点にて、国防省・諜報機関における先端技術動向調査と事業戦略立案なども経験を有する。

関本 和穂(せきもと かずほ)
有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス

大手IT企業にて金融機関向けシステムの設計及びコアアルゴリズム開発、データ分析を担当。また、製造業向けクライアントに対しては製造物検査技術に使用するシミュレータに必要なコアアルゴリズムの設計から開発までリード。トーマツ入所後、金融機関向けにマーケティング分析や、Blockchainのトランザクション集計サービスの実証実験、自然言語処理を用いたサービス提供に関わる。数学科出身、代数幾何学を用いた多項式因数分解の効率化および非線形ソルバーの最適化が専門。

プロフェッショナル

神津 友武/Tomotake Kozu

神津 友武/Tomotake Kozu

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー パートナー

有限責任監査法人トーマツ パートナー。物理学の研究員、コンサルティング会社を経て、2002 年から有限責任監査法人トーマツに勤務。 金融機関、商社やエネルギー会社を中心にデリバティブ・証券化商品の時価評価、定量的リスク分析、株式価値評価等の領域で、数理統計分析を用いた会計監査補助業務とコンサルティング業務に多数従事。 現在は金融、エネルギー、製造、小売、医薬、公共等の領域で、デロイト トーマツ グ... さらに見る