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2018年度 ブリティッシュ・コロンビア州 予算案ハイライト
Canadian tax alert
2018年2月20日
キャロル・ジェームス財務大臣は、2018年2月20日(火)に2018年のブリティッシュ・コロンビア州(以下、BC州)予算を発表した。これはNDPに政権が移行してから初めての年次予算である。2018年~2019年予算は、若干の黒字となる予定である。
BC州政府は、住宅用不動産への投機に対する税金や不動産取得税(いわゆる海外取得者税)の増税があり得ることについて重要なコメントを発表していた。そしてBC州政府はこの両方についての課税を行うこととした。
しかしながら、それ以外で重要かつサプライズであったのは、年間給与1.5百万ドルを超えた事業体に対して、給与の1.95%の雇用者医療税(Employer Health Tax(以下、EHT))が導入されたことである。EHTは個人が保険料を支払っていたメディカルサービスプラン(以下、MSP)の代替となるものであり、MSPは2020年1月1日に廃止される。
年次の景況感
NDP政権下、BC州の経済は堅調に推移している。 2018年の力強い雇用、小売販売、住宅着工および輸出データの結果、BC州財務省は2017年の実質GDP成長率を2.9%から3.4%に修正した。 また、GDP成長率の予測は2018年に2.3%、2019年に2.0%としている。BC州政府はこの強力な経済基盤の元で、主に2つのプラットフォーム、すなわち住宅価格と育児に焦点を当てた新たなプログラムを進めている。 この新しいプログラムへの支出にもかかわらず、BC州は2018年~2019年は219百万ドル、2020年~2021年は284百万ドルの継続的な黒字予算を計画している。 これらの黒字の主要因は、2018予算で示された税制措置によるものであり、2018年~2019年は793百万ドル、2019年~2020年は2,094百万ドルのネットの税収増を見込んでいる。
以下、予算の税務トピックスの要約を掲載する。
個人所得税改正
MSP(メディカル・サービス・プラン)の廃止
2017年にNDPに政権が移行した時、NDPはMSPを4年以内に完全に廃止することを表明していた。しかしながら、2018年予算によればMSPの廃止はその表明よりも早く2020年1月1日となった。MSPの保険料は徐々に減少するのではなく、廃止時点まで2017年のBC州予算で発表された減額されたレートが適用される。
不動産取得税率の増加
2018年2月21日以降、住居用不動産取引のうち課税対象となる取引について、取引額が3百万ドルを超える部分の不動産取得税率が3%から5%に引き上げられた。 不動産の市場価値が2百万ドルを超える部分について、3%の税率に追加的に2%が加算されて5%が適用されることになる。2百万ドル未満の課税関係に変更はない。
海外取得者税の範囲拡大と税率上昇
2018年2月21日以降、海外取得者税の税率は、課税対象取引の15%から20%に引き上げられる。 さらに、以前はメトロバンクーバー地区のみに適用されていた本税は、州都地域(ビクトリア)、中央オカナガン地域(ケロウナ)、フレーザーバレー地域、ナナイモ地域に拡大される。 これらの新しい課税地域においては、2018年2月21日以前に締結された取引について移行に関する免除規則が適用される。従来から課税がなされていたメトロバンクーバー地域の取引については、移行に関する免除規則はない。
租税回避行為防止規定により、すべての不動産購入者は正しい不動産取得税額を申告及び納付し、追加の不動産取得税があれば支払いを行うことが求められる。 この規定により、CRAはカナダ人が受託者として外国法人の財産を保有しているか、もしくは信託の受益者が外国法人である状況について調査を行うことができる。2018年予算においては、課税業務と情報共有を強化するためにいくつかの措置が導入された。(「その他の税制改正」を参照)。
住宅用不動産に対する学校税の増税
2019年以降、3百万ドル超4百万ドル以下の住宅用不動産に対しては0.2%の税率が適用され、4百万ドルを上回る住宅用不動産に対しては0.4%の税率が適用される。非住宅用不動産および3百万ドル以下の住宅用不動産に対する学校税は従来と同じ税率である。さらに、一定の目的のために建設された賃貸用不動産は、住宅供給を促進する政府の方針により、学校税が免除される。
新BC州介護控除の導入(旧制度の代替)
2018年以降、BC州に居住している納税者が、精神的もしくは肉体的なハンディキャップを理由として成人した扶養親族を介護している場合、税額控除を利用することができる。控除のポイントは次のとおりである。
- 税額がゼロになるまで使用できるの州税の税額控除は4,556ドル(インフレ調整あり)であり、230.53ドルを上限とするベネフィットを受領できる。
- 配偶者がハンディキャップを負っている場合、納税者はBC介護控除と配偶者税額控除の大きい方を申請することができる。
- 納税者が独身の場合、BC介護控除と扶養控除の大きい方を申請することができる。
個人所得税に関するその他の税制改正
2018年予算では、個人所得税率についての変更はない。これまでに公表された変更は全て有効のままである。
連邦税と州税を合計した個人所得税最高税率 |
|
---|---|
利息及び通常の所得 |
49.80% |
キャピタルゲイン |
24.90% |
適格配当 |
34.20% |
非適格配当 |
43.73% |
BC州政府はさらに、いくつかの税制改正を公表した。
- 持ち家の所有者が固定資産税を免除される基準が1.6百万ドルから1.65百万ドルに変更された。
- 連邦の教育税額控除は2017年にすでに廃止されているが、BC州の教育税額控除は2019年以降廃止されることとなった。未使用のBC教育税額控除は2019年以降に繰越して申請を行うことができる。
- 破産した個人もしくはその配偶者への主たる住居の移転時にかかる不動産取得税が免除された。従来は対価の移転が無い場合にのみ免除されていた。
法人税改正
EHTの導入
2018年に、政府は2019年1月1日を発効日とするEHT導入法案を提出する予定である。BS州における年間給与が50万ドル超の企業に対して、以下の税金が課せられる。
年間給与 |
年間税額 |
給与に占める税額割合 |
---|---|---|
$500,000 or less |
$0 |
0.00% |
$750,000 |
$7,313 |
0.98% |
$1,000,000 |
$14,625 |
1.46% |
$1,250,000 |
$21,938 |
1.76% |
$1,500,000 |
$29,250 |
1.95% |
Over $1,500,000 |
$29,250 plus 1.95% of payroll in |
1.95% |
法案により、予定納付の頻度や、関連企業の給与の合算基準が示される。法案はまだ提出されていないが、雇用主が支払うEHTの金額は、BS州における年間給与と適切な税率により算定される。BC州は、オンタリオ州、ケベック州およびマニトバ州に続いて、EHTを導入する。提案されているEHTレートは、次のとおりであり他の州と近似している。
州 |
EHT免除給与額 |
最低税率 |
最高税率1 |
---|---|---|---|
オンタリオ |
$450,000 |
0.98%2 |
1.95%3 |
ケベック |
NA |
2.30%4 |
4.26%5 |
マニトバ |
$1,250,000 |
4.3%6 |
2.15%7 |
1 それぞれの州において給与額の幅によって適用レートが異なる
2 年間給与200,000ドル以下
3 年間給与400,000ドル超
4 年間給与1.0 百万ドル以下
5 年間給与5.0 百万ドル超
6 年間給与1.25百万ドル超2.5 百万ドル以下
7 年間給与2.5百万ドル超、但し、1.25百万ドルは控除されない
法人税率
2018年度予算では、BC州の法人税率の改定は提案されておらず、法人税率は以下のとおり、維持される。
法人税率(2018年1月1日現在) |
||
---|---|---|
BC州 |
連邦税・BC州税合算 |
|
一般法人に適用される税率 |
12.0% |
27.0% |
製造業に適用される税率 |
12.0% |
27.0% |
中小企業に適用される税率 |
2.0% |
12.0% |
税額控除の延長及び拡張
上記の改正に加えて、2018年度予算で以下の改正が提案されている。
- BC州のマイニング・フロー・スルー税額控除を2018年末まで延長
- 農作物に係る寄付金控除を2019年末まで延長
- 双方向デジタルメディア税額控除を2023年8月末まで5年間延長
- 出版税額控除を2021年3月末まで3年間延長
- フィルムインセンティブ税額控除が、脚本の完成前までに発生したBC州で雇用されている脚本家に係る脚本作成費用まで拡張
その他の税制改正
住居用資産に対する投機税の導入
2018年中に政府は投機税を導入する予定としている。どの事業体に対してどの税率が適用されるか、住居用と商業用の両方で使用されている資産への適用範囲などの情報は限られている。なお、現在公表されている主な内容は以下の通りである。
- 年間税率は、2018年には評価額の0.5%、2019年以降は2%となる。
- 上記の税率はメトロバンクーバー、フレーザーバレー、キャピタル&ナナイモ地区、ケロウナ、ウェストケロウナの各区域のみで適用される。
- 納税義務は、BC州の所得税を払っていない、もしくは(多額の全世界所得と比較して)BC州に少額しか所得税を払っていない国外及び国内の住宅所有者に対して適用される。
- 主要住宅および適格長期賃貸物件については、事前免除が適用される予定とされているが、免除の詳細は公表されていない。
- 事前免除資格を持たない人々に対する税金コストを相殺するために、ノン・リファンダブルな所得税額控除制度(税金がゼロになるまで控除可能)が導入される。
- 州によって収集された情報は、カナダ歳入庁も利用可能となる。
新しい年間固定資産税は、ブリティッシュ・コロンビア州で所得税を納めていない国外及び国内の住宅所有者を対象とし、その範囲には空室の住宅を持っている者も含まれる。また、サテライトファミリー(多額の全世界所得があるが、BC州の所得税がほとんどない世帯)にもこのルールが適用される。当該税制は2018年及びそれ以降の年に適用され、2018年にバンクーバー市から導入された空家税(評価額の1%)に加えて課税される。
自動車燃料税と炭素税の変更
- 国際燃料税契約のライセンシーがBC州で使用した燃料に対してのみ炭素税を支払うことを確実にするため、2018年から2021年まで、毎年4月1日時点の炭素税の年間増加額を反映させることによってライセンシーへの還付率を増加させる。
- 2018年4月1日以降、海上貨物船及び沿岸貿易が禁止されている船舶で使用される海洋用ディーゼル燃料は自動車燃料税が免除される(以前はガスタービンエンジンを搭載した船のみが免除されていた)
- 2018年4月1日以降、首都地域地区(ビクトリア州等)の無鉛ガソリンと無鉛ディーゼルの自動車燃料税率が1リットル当たり3.5セントから5.5セントに引き上げられる。
- 他の精製集配業者から小売用の燃料を購入する精製集配業者は、2014年2月18日まで遡及して、燃料に対する保証金の支払義務を免除される。BC州で購入し、別の精製集配業者に販売した燃料に対して精製集配業者が払った保証金は払い戻される予定である。
州売上税(PST)の変更
一定価格以上の乗用車に対する贅沢税:2018年4月1日から新車または中古乗用車の販売に対する贅沢税が次のように増税される。
自動車販売価格 |
個人間の販売 |
(GST登録者による)商業販売 |
||
---|---|---|---|---|
旧税率 |
新税率 |
旧税率 |
新税率 |
|
$125,000 to $149,999 |
12% |
15% |
10% |
15% |
$150,000+ |
12% |
20% |
10% |
20% |
- クルーズ船内の小売業者:クルーズ船内の小売業者は、BC州の海域でのスケジュール航行中の販売物品に関して、PSTを徴収する必要がなくなった。2013年4月1日まで遡及して適用される。
- 特定ソフトウェア:必要な保守契約の一部として提供されるソフトウェアはPSTの対象となることが確認された。2013年4月1日まで遡及して適用される。
- オンライン宿泊施設プラットフォーム:法令で指定される日より、オンライン宿泊施設プラットフォーム業者は、PSTの徴収者として登録することが許可される。ユニットの所有者は登録義務から免除される。
- 鉄道サービスの提供者:サービスに対する税金の払い戻しを簡素化するために、ロイヤル・アセント(裁可に基づく法令発効日)より、BC州と他州の鉄道の納税協定に鉄道サービスを含めることが許可される
- 雪崩用エアバッグパック:2018年4月1日以降、全ての雪崩用エアバッグパックはPSTを免除される。
タバコ税率の引き上げ
2018年4月1日以降、次のタバコ税率が適用される。
製品 |
新税率(2018/4/1) |
旧税率 |
---|---|---|
タバコ1本あたり |
27.5 cents |
24.7 cents |
タバコ200本のカートンあたり |
$55 |
$49.40 |
ルースタバコ |
37.5 cents per gram |
24.7 cents per gram |
行政、執行、情報共有に関する措置
- ロイヤル・アセント(裁可に基づく法令発効日)より、不動産取得税法が改正され、不動産取得税の査定期間が6年間に延長された(現在は外国のバイヤータックスと一致)。この改訂は、ベア・トラスト(およびその受益所有者)の識別情報の収集を可能にし、違反に対しては行政処罰を適用する。また租税回避行為防止ルールの適用範囲が広がり、不動産取得税法の全ての目的に対して適用される(以前は特定の限られた状況のみ)
- 法令で指定される日より、州外の監査に関連する費用を回収するために、納税者への料金課税を可能にする様々な法令の改正が含まれている。
- 2018年2月21日以降に完了する取引や一連の取引に対して、「報告可能取引」制度が所得税回避取引のために導入される予定である。これは以前に導入された連邦の制度と並行して行われた改正である
- これらの所得税法と土地税猶予法を施行するために、ロイヤル・アセント(裁可に基づく法令発効日)より、レギュレーション機関間で情報共有が許可される。
- 州政府は、石油・天然ガスに関するロリヤリティ情報の収集と精度を向上させるために、Petroleum Information Network(Petrinex)システムを導入する。石油・天然ガス法の改正により、ロイヤリティの不払い、その他のコンプライアンス違反、報告ミスに対する罰則を課する権限を財務省が持つこととなる。
本内容は、デロイトカナダから配信されたCanadian tax alert の日本語参考訳です。原文(英語版)はこちらをご参照ください。詳細な情報はブリティッシュ・コロンビア州のウェブサイトをご参照ください。
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