Posted: 06 Sep. 2023 3 min. read

GXリーグがもたらす社会変革と企業に求められる対応(前編)

2023年4月、カーボンニュートラル(CN)に挑戦する企業群が率先して排出削減と新たな市場創造に取り組む場として、GXリーグが「本格稼働」1した。9月現在、我が国の温室効果ガス(GHG)排出量の4割以上を占める企業2が参画する大きな枠組みとなっているが、これに伴って企業を取り巻く環境はどのように変化するだろうか。変化に対して、どのように対応すればよいのだろうか。前編ではGXリーグの概要とそれがもたらす社会変革について、後編ではそれを踏まえて企業に求められる対応について論じていく。

1  経済産業省HP等における表現を踏襲。なお、排出量取引は2026年度からの「本格稼働」が目指されている。
2 GXリーグ公式ホームページ(https://gx-league.go.jp/)を基に記載

 

本稿のポイント

  • GXリーグは、GXに挑戦する企業群による産官学の連携プラットフォーム。参画することで、排出量取引制度に対応する代わりに、市場ルール形成への関与や、ビジネス機会の協創が期待できる。
  • 現時点では参画した企業間の自主的な枠組みだが、これから参画企業の拡大や排出量割当の有償化など、更なる発展が見込まれる。早期から参画し、今後の動向について最新情報を入手しつつ、対応を進めることが望まれるのではないか。
  • GXリーグは、CNに向けて変わりゆく市場への対応を進める好機。同制度を国内外の規制対応に活用する“守り”の発想と、野心的な排出削減を進めることで新たな機会創出に繋げていく“攻め”の発想を掛け合わせた戦略が必要ではないか。(後編に記載

GXリーグとは

2022年2月、経済産業省は我が国におけるグリーントランスフォーメーション(GX)実現のための産官学連携プラットフォームとして「GXリーグ」を設立する構想を発表した。 GXとは、企業がCNへの移行を実践しつつ、これをビジネスの勝機とすべく経済社会システム全体の変革に繋げることを目指すコンセプトだ。GXリーグとは、GXに挑戦する参加企業が、自ら率先して排出削減に行うとともに、こうした活動が市場で評価されるようなルール形成やビジネス創発に取り組む場である。参加企業数は700社を超えており、製造業、サービス業を中心に、情報通信業や金融業、保険業といった幅広い業種が参加している。経済産業省による1年間の準備期間を経て、2023年4月から「本格稼働」した。具体的には、下図に示す4つの活動を柱として取組みが推進されていく。

排出量取引制度がもたらす変革とは

ここまでGXリーグおよびGX-ETSの概要について解説したが、制度開始によって、企業のビジネスを取り巻く環境はどのように変化するのだろうか。

GX-ETSが始動すると、GXリーグに参画するすべての企業はプレッジ&レビューの一連の実務に対応し、排出削減に向けた取組みを推進していく。また、排出削減に資する製品・サービスを提供できる企業は、これを事業成長の機会としていくことが期待できる。さらに、こうした企業を投資家が評価したり、消費者が積極的に製品を購買したりすることで、社会全体が脱炭素化しながら成長していく好循環が生まれていくだろう。

但し、こうした好循環を現実のものとするには、各企業がGX-ETSをリスク要因ではなく、チャンスと捉えて活用していく姿勢が不可欠である。言い換えれば、制度に忠実に対応する“守り”の発想のみならず、企業戦略の一環として同制度への対応方針を位置づける“攻め”の発想が求められるだろう。では、具体的な“守り”と“攻め”の戦略とはどのようなものだろうか。具体的な対応の方向性について、後編にて論じていく。

執筆者

川村 淳貴/Junki Kawamura

デロイト トーマツ コンサルティング所属。民間シンクタンクでの環境・エネルギー部門における温室効果ガス削減目標やカーボンプライシングに関する官公庁・民間企業への支援を経て、2021年にDTCに参画。DTCでは主に次世代エネルギー(水素・合成燃料)やエネルギー需給シミュレーションを用いた官公庁・民間企業への支援に従事。

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