Posted: 16 Sep. 2022 10 min. read

自身が持つAIの技術やアイディアで世の中に変革を

Deloitte AI Institute │Spirits #1

ディープラーニングなどにより飛躍的発展を遂げたAI技術は、もはや一過性のブームではなく、これからの人類社会の発展に欠かすことのできない存在です。無限の可能性を秘め、いまだ進化をつづけるAI、しかし、それらの先進的技術を様々なビジネスの場と日々の暮らしに活かすには、高度な専門的知識だけでなく経験に裏付けられた幅広い視野が必要となります。

デロイト トーマツ グループのDeloitte AI Instituteには、人とAIが協調する社会「The Age of With」の実現に向けて、日夜精魂を傾けつづける先駆者たち「AI Spirits」が多数在籍しています。このインタビューシリーズでは、そんなデロイト トーマツの「AI Spirits」1人ひとりに焦点を当て、AI導入の最前線とその魅力についてお伝えします。

記念すべき第1回では、システムコンサルティング分野での豊富な経験と、かつて大学院で専攻したAIの専門知識を巧みに活かし、ビジネス現場へのAI導入の最先鋒で活躍するデロイト トーマツ コンサルティング  AI&Dataユニットの老川さんに話を聞きました。

 

 

人とAIが協調することで、データから新たな価値を生み出すような社会を実現

 

--まずは自己紹介をお願いします。

 

デロイト トーマツ コンサルティング  AI&Dataユニットの老川です。

 

約20年前、大学院にいたときはAIを研究していたのですが、卒業後は国内系シンクタンクで、今でいうところのSaaS(Software as a Service)立ち上げのプロジェクトなどに関与しました。次に、その経験を踏まえ外資系コンサルティング会社に移り、主に金融系のお客様に対してシステムの構想策定、災害対策、システムの安全性評価支援などの経験を積みました。

 

その後、デロイト トーマツ コンサルティングに移り、同じようにシステム構想の策定などに従事していましたが、4年前(2018年)からAIを活用するコンサルティング組織の立ち上げに関わり、2021年にはDeloitte AI Instituteの設立・運営に関与しつつ、AIを活用したビジネス変革や経営変革の支援を行っています。

 

 

--Deloitte AI Instituteについて教えてください。

 

Deloitte AI Instituteはデロイト トーマツ グループが立ち上げたAIの研究組織です。人とAIが協調しつつ、AIによるリスクをきちんと把握・コントロールすることで、データから新たな価値を生み出すような社会を実現することが目的であり、そのための研究活動や情報発信、国内外のAI専門家とのネットワーク形成など、幅広く活動しています。

 

いまデロイト トーマツ グループは、企業や官公庁などに幅広く、AIの戦略的活用とガバナンスを提供していくことに力を入れています。最先端技術のAIを実践的に活用するだけでなく、AIのリスクをきちんと把握したうえで、社会に信頼されるようにAI活用を推進していくのがデロイトならではの特徴です。デロイト トーマツ グループにはこれまで培ってきた監査法人としてのノウハウ、あるいはコンサルティングやファイナンシャルアドバイザリーを通じて得たノウハウが豊富にありますので、これらを結集し、AIを活用して世の中を変えていこうと考えています。

 

Deloitte AI InstituteにはAIに関する知識やスキルをもち、AIでお客様の業務を変えていけるような人材が200名以上いますが、恐らく国内のコンサルティングファームでこの規模の人材を抱える企業は少数ではないかと思います。それぞれが幅広いスキル、得意分野をもつため、この人材の厚さによって、「我々であれば、AIを利用してクライアントの業務、ひいてはこの世の中を変革していける」と確信しています。

 

AIの先端技術や研究に、ビジネス成長を融合させていけるところが私たちの最大の強み

--デロイト トーマ グループのAI分野における先進性や優位性はどんなところにありますか?

 

近年、先鋭的なAIテクノロジーをもつスタートアップ企業は数多く生まれています。私たちもこうしたAIスタートアップのようなAIの技術開発や研究活動も行っており、最近ではスポーツアナリティクス分野で中央大学との共同研究を発表したばかりです。しかし、AIによって世の中を変えるには、こうした技術開発や研究活動だけでは不十分です。

 

デロイト トーマツ グループが強みを発揮できる領域の一つがビジネスコンサルティングです。クライアントの業務を熟知し、業務を多角的に見て変えていくことで、ひいては経営も変革していくことができます。AIの先端技術や研究に、ビジネス成長を融合させていけるところが私たちの最大の強みだと思っています。

 

--AIは過去に何度かブームを繰り返しています。以前からAIに関わってこられた老川さんは、直近のAIブームをどのようにご覧になっていらっしゃいますか?

 

現在のような形でAIに注目が集まったのは、2012年ごろ、ディープラーニング技術の精度が飛躍的に向上したのがきっかけです。ディープラーニング技術自体は以前から存在しましたが、画像認識など実用的な分野において精度が高まったことで新たなAIブームに火が付きました。当時、まだ研究段階であったIBM社のWatsonがクイズ番組で優勝したことも大きな話題となりました。「AIが人間の知恵を凌駕したのか」と世間に衝撃が走ったのです。これもAIブームの後押しとなりました。ここからAI技術の実用性が高まり、様々な業務や日常のあらゆる場面で使われるようになりました。

 

ハードウェア能力の進化も欠かせません。ディープラーニングや機械学習ではコンピュータに高い処理能力が求められます。処理能力がAI実用化可能なレベルまで追いついたこともAI技術の進化には欠かせない要素だったと思われます。

 

AIの研究は1950年時代から始まっており、かれこれ60年経過しています。理論自体は昔から存在するものの、ハードウェア能力が足りず、以前はAIに学習させるためには3日間かかるなんてこともありました。今ではAI学習に有利なGPUも開発され、同じ3日間で処理できる量は飛躍的に向上しています。ディープラーニング技術の精度向上やハードウェアの処理能力向上が合わさり、AIが再びブームとなり、実務での活用へと広がったのだと思います。

 

 

 

本当に目の前にAIブームがやってきて、自分の会社でAIの新組織が立ち上がったのですから「いま、この時が来た!」という感激がありました

--以前はIT中心の業務にあたられていたと伺いましたが、AIへと軸足を移動したきっかけはなんですか?

 

4年前に、デロイト トーマツ コンサルティングにおいて、先進的なテクノロジーを活用したコンサルティングを実施する組織を作ろうという機運が高まりました。今後はITだけではなく、その他のテクノロジーも世の中をリードしていく存在となり、そうして世界が変わっていく時代になるだろうと予見されたからです。

 

先進的なテクノロジーとしては、AIのほかにクラウドやAR/VRなど、いくつかテーマがありました。そのなかで私が最も興味をもったのはAIです。先述したとおり、元々大学院でAIを研究していた経験があったからです。これまで業務で培ったコンサルティングのスキルに加え、昔学んだAIの知識を活かすことができればよいと思い、Deloitte AI Instituteの前身組織に異動しました。

 

私にとって、学生時代に学んだ知識が活かせるというのは魅力的でした。大学院時代に「こうした研究が世の中で使われ始めるのは20年後か、そのくらい先になるだろう」と言われていました。そして実際に20年ほど経ち、本当に目の前にAIブームがやってきて、自分の会社でAIの新組織が立ち上がったのですから「いま、この時が来た!」という感激がありました。

 

昔はAIが日常で活用されるなんて夢物語のようでしたが、いよいよ実用段階に入ることが分かり「実際に自分の目で見て確かめて、自分の手で作っていきたい」という気持ちが大きかったです。

 

 

「私たちがもっている技術やアイデアが世の中を変えていけるのだ。課題を解決していけるのだ」と日々、実感しています

--AIに関する業務でこれまで特に印象的だったプロジェクトにはどのようなものがありますか?

 

工場における職員のナレッジをAIで可視化するプロジェクトです。

 

対象の現場は新しく設立された工場で、年代別の要員構成を見ると高校や専門学校を卒業したばかりの18~20歳が7~8割を占めており、若者が非常に多い状態でした。言い換えれば、工場や設備のことを熟知している熟練者はごく少数しかいないということです。

 

そのため設備が故障すると、若い世代は知識や経験が乏しいため「何が起きたのか」と困惑するだけで、対処できません。何かイレギュラーなことが起きると熟練者を呼び、そばで復旧を待つしかなかったのです。

 

それでは困るということで、若い世代が様々な状況に対応できるようにするにはどうすればよいだろうかを考えた結果、熟練者のナレッジを可視化し、若い世代でも故障に対処できるように何らかの形にしてみましょうとプロジェクトが立ち上がりました。

 

 

--そこではAIをどのように活用したのですか?

 

熟練者のメモをテキストマイニングするところでAIを活用しました。熟練者は故障時に細かくメモをとりながら作業します。その蓄積が30万件ほどありました。このメモをテキストマイニングして、熟練者が故障対応でどんな作業をしていたのかを整理していきました。最終的には「この設備が故障したらこうやって修理する」ということを可視化して、若い世代でも分かるような仕組みを作るのを目標としました。

 

一般的には「マニュアルを作ればいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、マニュアルを書けるのは知識がある熟練者のみとなります。もともと熟練者は忙しいので、さらに仕事を増やすことはできませんでした。そこで熟練者の手書きメモをAI解析してナレッジを可視化し、体系的に整理することにしたのです。

 

メモの記録は大きく分けて2種類ありました。まず現状を確認した時の記録と、その状況を踏まえてどのようなアクションをしたかの記録です。メモの日本語をテキストマイニングして、この部分は「確認」、この部分は「アクション」というように分類して、故障時の作業を体系化し、最終的には故障時のフローを作りあげていきました。

 

ここでのフローは樹形図みたいなものです。最初は私たちがベースとなる仕組みを作りましたが、ずっと私たちが担当するわけにもいかないので、クライアントの社内でフロー図が作れるようにスキル移転を行いました。

 

 

 

--若い世代がわざわざ熟練者に聞かなくても故障対応できるようになったのですね。

 

そうです。これにより、若い世代の早期熟練化を目指しています。

 

現在、日本全体で少子高齢化が問題となっていて、製造業では特に深刻です。これまで現場を支えてきた熟練者が引退時期を迎えていますから、熟練者しかできない匠の技、熟練者しか分からない勘どころを継承していく必要があります。

 

先ほどの例のようなAIによるナレッジの可視化の取り組みは、こうした問題に対する解決策の1つとなるはずです。このようなプロジェクトを通じて「私たちがもっている技術やアイデアが世の中を変えていけるのだ。課題を解決していけるのだ」と日々、実感しています。

 

 

 

みんなが自主性をもち、プロジェクトやミッションを実現するためには役職の上下にかかわらず「私はこう思う」と自由に言い合えます。

--職場やチームはどのような雰囲気ですか?

 

いろんな視点や興味をもつ人たちであふれています。「私はAIに関心がある」だけではなく、例えば「私は量子コンピュータ」「私はデジタルツイン」など、それぞれの関心事は多岐にわたります。

 

さらにこれはテクノロジーだけにとどまりません。「これからの官公庁はこう変わって行くだろう」とか、先ほどの例のように「これからの工場の業務を革新するにはどうすればよいだろうか」とか、特定の業界の未来に関心をもつ人もいます。そうしたいろいろな関心をもつ人たちが集まり、自分の意見を気軽に言い合える職場だと思います。

 

みんなが自主性をもっており、プロジェクトやミッションを実現するためには、役職の上下にかかわらず「私はこう思う」と本当に自由に言い合えます。とてもフランクな社風です。また上司と部下の関係が緩い。これをよいと見るか悪いと見るかは人それぞれですが、いい意味でフラットな関係です。

 

 

 

--組織内にはどのようなバックグラウンドをもつ方がいますか?

 

AIの専門家ではなく新卒で入社する方もいますし、大学院でAIの研究をしていた方もいます。珍しいところでは、行政書士の経験があり、その後AIの勉強をしてこちらに加わった方もいます。様々な経歴の方々が集まっています。

 

国籍も日本には限らず、外国籍の方もいます。日本生まれ日本育ちの集団ではステレオタイプな視点からなかなか抜け出せないという懸念があるので、海外の経験からの視点はとても貴重です。幅広い人材に囲まれ、とても面白い文化が醸成されていると思います。

 

 

--チームを編成するときは、どのようにしていますか?

 

プロジェクトごとにクライアントのニーズに必要な人員を集めて、チーム体制を組成します。人員はデロイト トーマツ グループ横断で人材を探し、適任者を見つけてメンバーまたはアドバイザーとして参画してもらいます。このような混成チームを積極的に編成し、「Allデロイト」としてデロイト トーマツ グループの力を結集することで、クライアントの課題を確実に解決していきます。

 

2時間悩んでいるより、その2時間を外に出て走ってくると、「こうすればいいじゃん!」という解決策がひらめいて、結果的に20分でできあがることも

--多忙な日々をお過ごしかと思いますが、プライベートではどのようにリフレッシュしていますか?

 

私の場合、休日のジョギングなどがリフレッシュとなっています。やはり気分転換は重要ですね。リフレッシュが不足すると仕事の能率が下がると痛感しているため、必ず定期的にジョギングすることを心がけています。一度出かけると2時間くらい走っています。途中で休憩を挟むので、2時間の走行距離はおおよそ7~8キロくらいです。

 

他には旅行です。いま子どもが遠方に住んでいるので、子どもに会いに出かけるのも楽しみの1つです。あとは娘が書道をしているので、私も一緒に習っています。普段はキーボードから文字を入力しているので、行書を手書きするのは新鮮なチャレンジです。行書だと見本の文字が読めなくて先生に「これは何て読むのですか?」などと聞いたりして(笑)。普段の仕事では全くやらないような作業をしています。

 

 

--リフレッシュによって、どんな効果が得られますか?

 

ジョギング中はランナーズハイを経験し、走り終わるとすごくすっきりします。さらに「そうだ。あれはこうすればよいのでは」など、思いがけない仕事のひらめきを得たりします。それで、また精力的に仕事に打ち込めるようになります。

 

時には、たった1枚のパワーポイントを前に悶々として、仕事がうまく進まないこともあります。そんなときは、そのまま2時間悩んでいるより、その2時間を外に出て走ってくると、「こうすればいいじゃん!」という解決策がひらめいて、結果的に20分でできあがることもあります。一度頭を空っぽにすると、よいアイデアが舞い降りてくるようです。そういうことを何度か経験していますので、本当にリフレッシュは大事だなと感じています。

 

 

--最後に一言、読者にメッセージをお願いします。

 

Deloitte AI Instituteには、様々な国籍、文化、経験をもつ方が集まっています。幅広い経験や視点をもつ人々が、いろんな意見を出し合うことで、この答えが1つに定まらない社会の中で、クライアントのお手伝いしています。そのような多彩な興味をもつ方々と一緒に働けるのが、非常に面白く魅力的な環境です。

ぜひ、いろいろなバックグラウンドの方に、当社への興味をもっていただければと思います。