Posted: Sep 09, 2019 3 min. read

地方創生のキーワード・関係人口創出のための「地域アルムナイ事業」の提案

地方創生事業の文脈で、多様な地域で移住促進に向けた取り組みがなされてきました。一方で、東京一極集中の問題は依然解決できていません。そのような中で、移住だけにこだわらない「関係人口」という概念も生まれました。本稿では、関係人口創出に向けた施策アイデアとして、「地域アルムナイ事業」を提案したいと思います。

「アルムナイ」とは、人事用語において企業のOB・OGのことを指します。元社員に対して継続的にコミュニケーションをとり、優秀な人材の再雇用や連携による価値創出を図る施策を「アルムナイ事業」と呼びます。本事業は、地域を一度離れてしまった人材をアルムナイととらえ価値創出を図るための政策パッケージです。

これまでの取り組みは、大型の移住イベントや相談窓口であり、移住を決断できていない層へのアプローチが不足していました。それらの方にリーチするには、情報収集と継続的な関係作りが大切になります。情報収集としては、対象者が気軽に集まる場づくりが有効です。例えば、地域から旅立つ方を集めた「追いコン」や、地域から出てきた方を集めた「ウェルカムパーティー」等を企画し、アンケートを実施することで、どこに、どんな人材がいるのかを把握していきます。

生み出したつながりを維持するため、定期的にイベント立ち上げます。ここでは地域への思いを共有し、地域への貢献に向けた話をしていただきます。話し合いを重ねるうちに、思いを実現するためのプロジェクトの芽が生まれてくるはずです。クラウドファンディング型のふるさと納税を活用すれば、それらのプロジェクトを無理なく実現することができます。都心にいながら無理なく地域に貢献することで、地域とのつながりを継続していきます。実施費用を抑えるため、都心部の企業に、夕方以降で空いている会議室を借りるのも有効でしょう。当該アイデアについて、数社ヒアリングをしましたが、貸出大歓迎という声を多く聞きました。

都心部で地域に関するイベントを定期的に開催
※クリックで拡大画像を表示

また、「週末取締役」と銘打って、都市部で働くサラリーマンと地域企業とのマッチングを通じ、副業として地域企業の経営に参画してもらう仕組みを作ってはどうでしょうか。この事業は、「ボランティア」や「プロボノ」とは少し異なる「自身のキャリア形成」というインセンティブから、連携を生み出すことを計画したものです。都市部のサラリーマンには企業経営に携わる経験を、地域の中小企業には専門的な知見や新たな発想を相互に提供します。こうした取り組みが成果を生み、いずれは事業承継問題の解消にもつながれば理想的ではないでしょうか。

都心部サラリーマンと地域中小企業とのマッチング
※クリックで拡大画像を表示

地域の人口問題の解消に向け、地域を一度離れてしまった方をアルムナイととらえ、価値創出を図るアイデアについて紹介してきました。これまでリーチできていなかった層に働きかけるため、継続的なコミュニケーションの場の創出や新たなインセンティブ設計に触れています。人口問題解消に取り組む多くの皆様と、今後の取り組みの可能性について、広くディスカッションできることを楽しみにしています。

 

D-nnovation Perspectives その他の記事はこちら

D-NNOVATION スペシャルサイト

社会課題の解決に向けたプロフェッショナルたちの物語や視点を発信しています

プロフェッショナル

柳橋 雅彦 / Masahiko Yanagibashi

柳橋 雅彦 / Masahiko Yanagibashi

デロイト トーマツ グループ シニアスタッフ

有限責任監査法人トーマツ  政令市職員、コミュニティファンド理事を経て現職。公共に関わるプロジェクトを中心に、地方創生、新規事業の市場性調査、起業家支援等を担当する。また、経済的価値と社会的価値の双方を生み出す新たな官民連携の形を確立するプロジェクトを推進する。 主な著書・寄稿に「金融機関のための観光業界の基本と取引のポイント」 (経済法令研究会、共著)、月刊事業構想「公民連携による新市場創出」な