Posted: 08 Nov. 2021 4 min. read

再生エネルギー転換への加速に必要なAIやアナリティクス

【シリーズ解説】GX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略とは

脱炭素社会(カーボンニュートラル)への転換においては、エネルギーの多様化、エネルギーマネジメントの高度化、分散型電源の活用、需要者側の低炭素化への取り組みが必要となる。その実現に向けては、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの需要と供給の最適な組み合わせを可能にするAIやアナリティクスが欠かせないものとなる。

 

エネルギー分野におけるDX

従来の化石燃料を主体としたエネルギー需給構造は、資源供給地から需要地への大規模輸送を基本とする非常に単純なものであった。脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーの活用が進むと、この需給構造は複雑なものになる。社会もインフラは、大量かつ発電量の小さい施設が様々な場所に作り出される自立分散化にシフトしていくだろう。必要な技術も非常に多岐にわたるようになる。プレイヤーが大企業の寡占状態から業態を超えた多様な企業が参入する大競争時代に突入する。その中でエネルギー需給の一致を実現するための技術の最適組み合わせ実現のためには、ブロックチェーンやIoTといったデジタルテクノロジーによる最適化を始め、ドローンやロボットによる施設の監視・メンテナンスの効率化が欠かせなくなる。天候に左右される太陽光発電や風力発電に対しては短期間で膨大な量を処理するデータアナリティクスも欠かせない。そして、このようなテクノロジーを活用して競争力を発揮していくために、企業にはアジャイルなビジネススタイルが求められる。

再生可能エネルギーにおけるデジタルテクノロジーの活用

再生可能エネルギーへの転換において課題となるのが電力コストの上昇及び停電を引き起こす可能性となるエネルギーシステムの不安定化だ。需給一致のため、蓄電池の導入、電力系統の整備、再エネの出力抑制など、追加的費用がかかるためである。分散化により、今まで以上にエネルギー市場への多くの参加者が存在することとなり、需給のバランス調整も非常に複雑なものとなり、需給調整ができないと停電が頻発する可能性もある。このような再エネに対する「失望」を解決するのもAIやアナリティクスである。交通や経済活動などの様々なデータをリアルタイムで取得し、そういったビッグデータを対象にしてAIやアナリティクスを活用することでエネルギー需要を予測できる。気象データの分析からは変動性再生可能エネルギー(VRE)による発電量の予測が可能となる。過去データやドローンの画像の分析からはメンテナンス時期の最適化を図ることができるだろう。

エネルギー分野のテクノロジー活用先進事例

米国のNYISO(ニューヨーク独立系統運用)では、高度な人工ニューラルネットワークを活用して、すでにかなり正確な電力需給予測が可能になっている。人工ニューラルネットワークを活用することでモデルそのものを教育し、平日・休日といった属性だけではなく、天候や経済状況などの外部データも取り込んでいる。また日本においても、日本気象協会が独自気象モデルによる太陽光発電出力予測サービス「SYNFOS-solar」を提供しており発電量予測の精度化につながっている。一方で、AIによる風力予測によって風力発電機の発電量を予測しているのが、スペインのスタートアップ、ボルテックス・プラデレスだ。また、スウェーデンのスカイクラフトは、ドローンを使って送電線などエネルギー機器を検査し、得られた画像からAIを活用し、検査に要する時間短縮化・省力化、メンテナンス時期の最適化を行っている。このようにAIやアナリティクスなどのデジタルテクノロジーを活用した再エネの利用促進が欧州を中心に世界中で展開されている。今後は日本でも、本格的な取り組みが活性化することを期待したい。

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