Posted: 05 Nov. 2021 4 min. read

資源循環(サーキュラーエコノミー)への資金流入に求められる「企業発のストーリー」

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気候変動対策への資金の流入はここ数年、一気に加速しており、再生可能エネルギーをはじめ、脱炭素に向けられる投資は規模拡大の一途をたどっている。一方で資源循環に向けた資金に対する議論は依然として活発であるとは言い難い。社会としてのルールの明確化が必要な今だからこそ、日本企業には、資源循環が企業価値に寄与するというストーリーを示し、国際社会のルールに反映させていくことが求められる。

 

気候変動への資金流入

2020年の世界のESG投資額は全運用資産の1/3を超える水準にまで高まっている。多くの金融機関が国連責任投資原則(PRI)に沿ってESG投資に資金を振り向けてきた結果である。さらに欧州ではサステナブルファイナンスのアクションプランが採択され、環境目標に寄与するサステナブルな製品・サービスを識別するタクソノミーの制定も進んでいる。日本においても「2050年のカーボンニュートラル達成」が昨年10月に宣言されて以降、企業や金融機関が気候変動対策に大きく舵を切った。洪水、干ばつ、熱波といった世界的な異常気象の実感も脱炭素の取り組みを後押ししている。

資源循環にむけた資金循環は緒に就いたばかり

一方、資源循環に対する取り組みへの資金流入は気候変動に比べると低調である。資源循環にむけた資金循環とは、資源・エネルギーの循環サイクルの中を資金が循環するモデルのことで、このモデルの形成には、外からの資金を呼び込むことが必要となる。資金流入が低調な理由の1つが、資源循環には気候変動対策におけるカーボンニュートラルのような明確な方向性が示されておらず、わかりやすい基準が存在しないことがある。もう1つの理由として、産業によって利用される資源が異なることから資源循環にかかる共通の指標が設定しにくい難しさが挙げられる。原材料の効率的な利用だけではなく、製品寿命の延長や修理のし易さ、使えなくなった製品の回収と再販売・再資源化を目指すサーキュラーエコノミーを提唱しても、それぞれに産業・企業によってバリューチェーンも利用形態も廃棄・再利用方法も異なっており、資源循環に対する取り組みと企業価値とのつながりが見えにくくなっているのである。

必要なアクション

資源循環は企業単独で取り組むべきものではない。気候変動対策として注目されているエネルギー循環とあわせて、資源循環も脱炭素に向けた取り組みの両輪であるというコンセンサスが必要であり、このコンセンサスが国際社会のルールにも取り込まれていくべきである。社会のルールが明確になれば、資源循環への取り組みと企業価値とのつながりがより明確になり、企業としても価値創造ストーリーを作りやすくなるだろう。EUタクソノミーには資源循環も含まれており、ルール形成に向けた一歩といえる。日本企業も国際的なルール制定を待つのではなく、積極的に現実に即したルール形成にかかわっていくべきである。特に日本は、資源国ではないという制約があり、だからこそ資源循環がどのような価値を生みだすのかを示していく必要がある。それによって、世界の投資家や企業に対して有意義な示唆を提示できるだろう。

 

企業発のストーリーを国際社会のルールに反映させ、投資家にその実績を示すことができれば、日本企業にも多くの資金が流れてくるだろう。気候変動に関してはルールや指標が形成され、投資家の理解が進むにつれて、資金流入が一気に拡大した。これと同様、資源循環に関しても明確なルールや指標を確立した上で、それに照らして企業が資源循環(サーキュラーエコノミー)に寄与しているという価値ストーリーを打ち出すことができれば、資金を流入させることができるだろう。日本企業がこのような変革のトリガーになる大きな可能性がある。      

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中島 史博/Fumihiro Nakajima

中島 史博/Fumihiro Nakajima

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

有限責任監査法人トーマツ所属。外資系大手コンサルティング会社、サステナビリティコンサルティング会社を経て現職。サステナビリティ経営や脱炭素戦略の策定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応及び気候変動シナリオ分析などに従事。