Posted: 10 Nov. 2021 4 min. read

DX推進をリードするミドル・マネージメントが果たすべき役割とは

DX実践談:日本のモノづくりの再構築(2)

DX推進をリードするミドル・マネージメントにとって、日本のモノづくりには避けられない、いくつかの障壁が挙げられる。具体的には、労働人口、IT人財、ITインフラなどのハードで課題が山積し、“多重苦”の状態となっている。

 

これをデータで解釈すると、労働生産性は主要7か国(G7)の中で1970年以降、最下位と低迷し、労働人口(15歳-64歳)も1990年代の7千万人をピークに、2050年に3割減の5千万人が想定されている。

この課題に輪をかけて深刻なのが、DXの人財であり、質・量ともに不足している。IT人材白書によると、DXに取組む企業において、ITの知見のある人財は毎年数%の割合で不足。その中でも全社的な機能や業務プロセス全般での革新に取組む企業において、全体最適化を描き、現場で指揮するリーダー的役割の人財は毎年十数%の割合で不足している。AI導入を計画する企業に至っては、AIエンジニアが数十%程も不足との調査結果も出ている。更に、2025年に差し掛かる頃には、国内企業の6割で、昔ながらのサイロ化/孤立分断したITシステムの刷新時期が迫ってくる。

 

これらの課題を踏まえると、日本のモノづくりにおいて、DX推進による変革は到達不可能なものなのか。その答えは現場のミドル・マネージメント層の役割の進化にあると私は考える。現在、多くのDXに取組む日本企業ではDX推進室など、全社横断的な組織を設け、全社レベルでの業務プロセスに対処しており、経営課題の解決や企業価値最大化などを掲げて展開している。また、各々の企業の動きは、DXによる変革効果を自社内の製造領域のみならず、SCMでの領域でも創出している。つまり、上流側のサプライヤ・ベンダ~自社を含め~下流側のユーザー・OEMといった関係企業間の連携により、情報の精緻化、短サイクル化がされ、DX効果が従来では想定できない域まで広がり、コンペティターとの格差が生まれる局面が散見されている。これらは総じて日本企業のDXの進展を示すもので、そこには調整や相互連携といった従来からの現場の底力が改めて浮かび上がってくる。しかし、それだけでは海外の先進企業のDXには追い付かないのだ。

 

グローバルでの潮流を世界経済フォーラム(WEF)が「ライトハウス(灯台)」として認定している工場の選考要件から引用すると、単に、「⾃動化による⽣産効率向上」だけではなく、「⼈材育成や働き⽅」、「企業や業界の持続可能性」、「社会や環境へのインパクト」など多様な効果を必要としている。つまり、DX推進をリードするミドル・マネージメントの役割の範囲が広がっていると言える。業務やラインの効率化はもちろんのこと、働く人々の作業環境への配慮、企業間の連携による地域や社会、地球環境などといった外部環境への配慮など多岐に渡り、これら要件はそれぞれがトレードオフの関係ではなく、全方位の満足を促進しつつ、全体最適の最大化に向けて不足機能があるならば新たな仕組みの創出なども期待されている。このように、DX推進をリードするミドル・マネージメントは経営層にも相当する高い視座が求められている。このことを理解し、自部門内のみならず、隣接部門、人事や企画といったコーポレート機能との連携の輪を広げ、変革を推進していくことが肝要だ。

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