Posted: 24 Feb. 2021 3 min. read

第1回:サイバー対策は商品力や企業力に直結

シリーズ:DX時代のサイバー対策

最近多くの企業が取り組んでいるDXは物理的な空間に加えて、サイバー空間を積極的に活用し、物理的な空間とシームレスに融合させることでビジネスを変革することである。

その際、DXの品質を高めるために欠かせないのが、サイバーセキュリティーの強化である。企業の製品・サービスとサイバー空間がシームレスにつながるようになると、サイバーセキュリティーの品質が、製品・サービスの品質と直結するようになるからだ。

既に海外では、サイバーセキュリティーは企業価値を測る重要な物差しになっている。世界の投資家が企業の成長性などを判断する際に重要視する指標として、サイバーセキュリティーは常にトップ5に入っている。実際、企業がサイバーインシデントを起こすと、株価にも大きく影響する。

このため、欧米企業では経営会議でサイバーセキュリティーは毎回議論される重要テーマになっている。加えて、サイバーセキュリティーをDXでの競争力の源泉と捉え、DX予算の1割以上をその強化に使っている企業が5割近くを占めている。

欧米企業にとってサイバーセキュリティーへの投資は、商品力と企業力を高めるため前向きの取り組みなのだ。世界の先進的な企業の常識では、サイバーセキュリティーに「費用を必要最小限に抑えながら仕方なく取り組む」「発生したら対応する」といったかつてのイメージは、もはやない。

一方、日系企業経営者の意識は低いままだ。「経営会議で取り上げるような重要なテーマではなく、IT部門に任せていればよい」と考えている経営者もまだまだ多い。

しかし、日系企業の約8割で2020年3月までの1年間にサイバーインシデントが起きているとの調査結果がある。また、情報流出などの事態によって株価が約1割下落すると報告されている。昨今のセキュリティー事故の多発を踏まえると、日系企業もサイバーセキュリティーを重要経営課題とすべき時代が来ているといえる。

日本の製品・サービスは品質の高さにより世界中で受け入れられてきた。この連載ではデジタル時代でも「日本品質」を維持するために求められるあるべきサイバーセキュリティーの姿を外部動向の変化を踏まえて読み解く。

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本稿は2020年12月9日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX時代のサイバー対策(1)商品力や企業力に直結」を一部改訂したものです。

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