Posted: 18 Mar. 2024 3 min. read

ピックルボールから考える「生涯スポーツ」の新ジャンル

「ピックルボール」というスポーツをご存知だろうか。ピックルボールとは、テニス・卓球・バドミントンを掛け合わせたような新ジャンルのスポーツで、バドミントンと同じ広さのコートで板状のパドルを使い、穴あきのボールを打ち合うというものだ。ボールのスピードがテニスよりも緩やかであるためラリーを続けやすく、年齢や体格、熟練度などをあまり気にせず老若男女が楽しむことができる。誕生の地のアメリカでは、競技人口が約900万人*1に達し、プロリーグも誕生している。日本でも協会が設立され、体験イベントも増えてきていて知名度が上がりつつある。

 



このような新ジャンルのスポーツは、「生涯スポーツ」の概念にぴったり合致している。生涯スポーツとは、「いつでも、どこでも、いつまでも」楽しめるスポーツのことである。スポーツは心身の健康に役立つものであるため、国としても「Sport in Life」というビジョンを掲げ、スポーツを行うことが生活習慣の一部となって多くの人がスポーツに親しむ社会の実現を目指している。

しかし、日本におけるスポーツの実施率は必ずしも高くない。スポーツ庁の調査*2によると、20歳以上で週1日以上運動をしている人は全体の52%に過ぎない。特に働いている世代、すなわち30代から50代の実施率が低い傾向にある。

多くの人が運動不足を感じてはいるが、運動しない理由としては「仕事や家事が忙しい」「面倒くさい」といったものが多い。つまり、時間や場所の制約が運動をする際の大きなハードルとなっている。

 

これを解決するためには、生涯スポーツの「いつでも、どこでも、いつまでも」というコンセプトを活かし、“競技自体が進化”することが重要である。具体的には、時間や場所の制約を減らす工夫、コストを抑える工夫(道具や設備を必要としない、既存のものを有効活用するなど)、年齢や体力の差を気にせず楽しめるルール作りなどが必要である。

 

新ジャンルのスポーツの中に、このような考え方を取り入れているものがある。例えば、「フットゴルフ」は、サッカーとゴルフを掛け合わせた新ジャンルで、サッカーボールを使い、ゴルフ場の専用カップに沈めるまでの打数を競うスポーツである。ルールがシンプルで、サッカーほど走る必要もないため、世代を越えて初めての人でも楽しめる。他にも1970年代に誕生した「ソフトバレーボール」は、通常よりも柔らかいボールを使い、パスが安全かつ容易にできるため、幅広い層が楽しめるようになっており、シニア向け大会も開催されている。

 

新たなジャンルが普及し、多くの人が「いつでも、どこでも、いつまでも」スポーツを楽しむ機会が増えることを期待する。

※本稿は、2024年2月23日のフジテレビ系列「FNN Live News α」出演時のコメントを基に再構成しています。

 

D-NNOVATIONスペシャルサイト

社会課題の解決に向けたプロフェッショナルたちの物語や視点を発信しています

プロフェッショナル

松江 英夫/Hideo Matsue

松江 英夫/Hideo Matsue

デロイト トーマツ グループ CETL(Chief Executive Thought Leader)、デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表

デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 常任理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2018年10月 デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表 就任(現任) 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)