Posted: 26 Apr. 2024 3 min. read

生成AIを活用し、製造業でデータ活用を拡大~生成AIの本格活用(5)

製造業では、生成AIによるデータ活用が加速することで、インダストリー4.0の実現機運が高まると期待される。AIの活用タイプは、全社導入・業務システム連携・顧客対応進化・独自LLM開発の4つに分類され、設備管理の自動化・生産能力最大化の実現を目指す。

製造業では、機械や技術、人などがデータを介してつながることで新たな付加価値の創出と社会課題の解決を目指す「インダストリー4.0」が課題となっている。生成AI(人工知能)が起爆剤となって、製造業でのデータ活用が加速しインダストリー4.0の実現機運が高まると期待される。

工場内の様々な機器、設備、システムをデジタルでつなげるスマートファクトリーは、工場のパフォーマンス(成果)を最適化し、そのネットワークをサプライチェーン(供給網)全体に広げる。

製造業各社は既にデータアナリティクス、クラウドコンピューティング、生成AI、高速通信規格「5G」、IoT(モノのインターネット)といった最新テクノロジーの導入に取り組んでいるが、生成AIの登場で製造業でのデータ活用が一気に拡大しそうだ。

生成AIの活用タイプは、一般的に4つに分類される。具体的には、(1)全社導入(生成AIをユーザーとして活用し効率性や作業者の生産性を高める)(2)業務システムの連携(プログラムをつなぐAPIを使って生成AIを自社システムに組み込んで新規サービスを生み出す)(3)顧客対応進化(音声対話版生成AIを導入して顧客体験価値を創出する)(4)独自LLM開発(特定領域でLLMを開発して研究開発や新規事業に活用する)――の4つだ。

製造業でも特に業務システム連携や顧客対応進化で活用するケースが増えている。業務システム連携のユースケース(活用事例)では、「IoT×デジタルツイン(メタバース)×生成AI」を最大限活用することで、設備管理の徹底的な自動化の推進、生産能力の最大化を最小限の工数での実現を目指す。

具体的には、装置のIoTデータ(1次データ)と過去の作業履歴・データをLLMに蓄積することで、より精度の高い作業手順を生成AIから提案させ、オペレーション効率を最大限に上げることが可能になる。他にも「工場のダウンタイム(停止時間)の発生の抑制・コントロール」「製品の初回修理完了率の向上」「作業効率の改善・対応時間の短縮」「適切な予防保全やサービスの継続的な提供」などが期待できる。

これらのデータの活用は、生産現場がグローバルに展開する日本の製造業の生産能力の最大化を最小限の工数で実現することができ、経営にインパクトの大きい効果をもたらすことができる。

将来は、最先端テクノロジーを複合的に活用して複数のユースケースをカバーする、より付加価値の高い活用がグローバルに広がっていくと期待される。

本稿は2024年3月14日付の日経産業新聞の「戦略フォーサイト」欄に掲載されました。

 

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津端 清/Kiyoshi Tsubata

津端 清/Kiyoshi Tsubata

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

デジタルカスタマー リーダー 複数の外資系コンサルティング会社を経て現職。製造業を中心に、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における戦略立案、経営管理変革、マーケティング・セールス・サービスの顧客体験変革(オペレーション変革)、テクノロジー導入支援などEnd to Endに幅広い領域に従事。近年は、産業メタバース/Smart Operationソリューションをリード。オペレーション変革における生成AI、デジタルツイン、xRを活用したソリューションを展開。 グローバルDXプロジェクトの推進に強みを持ち、15年以上の経験を有する。 関連するサービス・インダストリー ・デジタルカスタマー >> オンラインフォームよりお問い合わせ