Posted: 14 Dec. 2021

世界メノポーズデーとは? フェムテック起業家と考える、更年期と仕事の両立

ゲスト:よりそる 代表 高本 玲代 氏 2021年10月18日開催

開催レポート

みんなのWell-being ’21秋冬キャンペーン(*1) × ダイバーシティ企画の一環として、10月18日世界メノポーズデー(*2)を機に、よりそる 代表・高本玲代氏をお招きした社内イベントを開催。
吉川 玄徳(一般財団法人デロイト トーマツ ウェルビーイング財団 代表理事)をファシリテーターに、鹿島 俊明(有限責任監査法人トーマツ パートナー)、溝口 史子(デロイト トーマツ税理士法人 パートナー)と共にパネルディスカッションを実施し、更年期に直面した本人だけではなく、家族や職場のメンバーに求められる対応を学びました。

(*1)みんなのWell-being ’21秋冬キャンペーン:デロイト トーマツ グループが、グループ内外の多様なメンバーとの対話や活動を通してWell-beingに関して考え、行動していくために2021年秋~冬にかけて展開中のキャンペーン。

(*2)世界メノポーズデー:毎年10月18日。「メノポーズ(Menopause)」とは閉経・更年期などを指し、1999年に開催された第9回国際閉経学会において、「更年期の健康に関わる情報を 全世界へ提供する日」として、更年期についての情報を広く知ってもらうことを目的として定められた日。

高本 玲代 氏 プロフィール

 

 

パネルディスカッション

※画面右上から時計回りに、吉川 玄徳、溝口 史子、高本玲代氏(よりそる代表)、鹿島 俊明

(以下、ディスカッション概要 ※一部抜粋)

 

女性の2人に一人が更年期により昇格を辞退。また、女性の4割が更年期を理由に退職を検討もしくは退職してしまうという事実

高本:一般的に、女性の閉経は50才くらい、更年期は45-50才と言われています。日本で働く女性の4人に1人は更年期の状態です。更年期が理由で女性の2人に一人が昇格を辞退する、女性の4割が退職を検討する、もしくは退職してしまうといったデータがあります。また、更年期の時はそれまでより半分くらいパフォーマンスが落ち、うつの発症のしやすさが2倍といわれています。

職場での受け止め方は、比較的ポジティブな受け止め方がメジャーではありますが、周囲の2割の人が、更年期の女性に対してさぼっているのではないか、仕事をやめたほうがよいのでないか、という誤った認識を持っている、というデータもあります。どうしてこのような認識を持ってしまうのか、本人や周りの人が考えていくことが重要です。

吉川:けっこうショッキングなデータですね。男性陣もまずこの現状を認識する必要があると思いましたが、鹿島さんは今のお話をどう感じましたか?

鹿島:私は知り合いの女性から、調子が悪くて寝ていることが多いという話を前々から聞いていたのですが、3月の更年期セミナー(*3)にも参加して、更年期についてきちんと理解していなかったのだなと感じました。セミナー参加後に改めてその女性と話をする機会があったのですが、その時には、その方の状況をより理解でき、これまで自分の理解が浅かったのだなと痛感しましたね。

(*3):デロイト トーマツ グループでは、2021年3月8日の国際女性デーから12日までを「IWD Week」とし、社内で様々なイベントを実施。3月12日の最終日には高本氏をお迎えし、更年期セミナーを開催した。

吉川:すぐ行動に移されたのはいいことですね。

溝口:更年期の症状は個人差があるのでしょうか?

高本:更年期の症状は人それぞれで、症状は200-300あり、つらさも人それぞれ違うといわれています。自律神経系の症状、例えば、肩こり、頭痛、疲れやすさ、不眠などが現れますが、これは更年期でなくても出る症状のため、本人が更年期と気づかないけどやたらしんどいとか、さきほどの鹿島さんのお知り合いの方のお話しにもあったように起き上がれない、動けないほどの辛さ、ということがあります。

家族間でよくあるのが、「母親が軽かったから、妻もそんなにひどいわけがないだろう」という夫の思い込みが原因となり、夫婦間でもめたりすることもあるようです。個人差が大きいと認識してもらうほうがよいですね。

溝口:私は母が更年期だったことを思い出したのですが、首が回らなくなって、母を呼ぶと体ごと振り返るほど、すごくつらそうだったんですよ。78歳の今はとても元気です。医師として性差医療の現場に立っているのですが、患者さんと接するときに自分の経験が役に立っていると言っています。

 

職場・家庭内において、安心して更年期の話ができる環境をつくることがサポートの第一歩

吉川:私も年々体の変化を感じるのですが、自分のことばかり意識していたかもしれません。妻や職場の女性へ対しての労りが欠けていたと反省しているところです。更年期のつらさや苦しさなど、どういう部分で悩んでいらっしゃるのか具体的に教えていただけると助かります。

高本:更年期は男性でも女性でも知識が浸透していないところがあります。私もそうでしたが、体調が悪くなった時に、自分のバイオリズムでこういう変化が起こるとは思っていなくて、仕事を頑張っている女性こそ、自分の体が思うように動かないことこそが一番つらいというか、自分のマネジメントができていない自分がダメなんじゃないかとか、弱い自分がダメなんじゃないかと、矛先が自分自身にいってしまうことがあるんですね。自身を責めてしまうことが一番つらいので、本人も周りも、女性はバイオリズム的にどういう症状が起きて、それは本人のせいではなくて起こってしまうんだよ、という更年期の知識が、みんなに浸透していけばよいのですがまだまだ難しいですね。

本人が気づいていないけれども周りが更年期についての知識があるのであれば、40代以降に女性ホルモンの影響によって体調の悪さが出てしまうことを共有したり、「婦人科に相談したほうがよいんじゃないかな?」という声がけがあると、本人がラクになるのではないかと思いますね。

吉川:職場ではどのように理解を進めていけばよいのか……難しいポイントだなというのが正直なところです。

溝口:そうですよね、職場でタブーとされているように思いますし、自分で認めたくない、というのもあるかと。更年期は男性女性ともにおとずれる老化現象なのですが、それを認めるというのはかなりつらいものがあると思うんですよね。職場でオープンに話をして情報交換をすることについて本人や周囲が働きかけるのがよいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

高本:更年期は日本だと特にネガティブなイメージがあって、「あなたは今、更年期ですか?」と、周りからは言いづらい雰囲気がありますよね。ただ、更年期という言葉を直接使わずに話題に出すこともできます。例えば、「女性の身体のケアが大事らしいですよ、不調が出る人がいるみたいだけどどうですか?」というふうに聞くと、受け入れる側も受け入れやすいかなと思います。

更年期という言葉は曲者で、他社で研修を行う際も、最初は更年期という言葉をいれないことも多いです。なぜなら自分が更年期ということに気づいていない人もいて、更年期という言葉を使うとそれに該当すると思う人しか参加しない可能性があるからです。更年期の知識がもう少し広まっていくと自分も更年期かなと気づくこともできるかもしれないのですが、今は過渡期ですし、体調の変化というところでお話しするのがよいのではないかと思います。

吉川:日本語の更年期っていう言葉がいけないのでしょうか。

溝口:ドイツ語でも、更年期はそのまま「更年期」なんですよね。おそらく日本語にしみついた更年期のイメージが悪いんじゃないかなと思います。

高本:SNSで「更年期」と検索すると、例えば、「いらいらしたおばさん」のように、人を揶揄するような言葉で使われることが多いんですよね。何年か前のテレビ番組で、年配の女性を「だから更年期は……」というように使われたことがありましたが、このように誤った認識で使われるケースも目立ちます。

鹿島:ある女性の方と面談をしたときに「体調が悪い」とおっしゃっていて、もし3月のセミナーを受けていなかったら、「どう体調が悪いの?」って聞いたと思うんです。ただ、私はセミナーである程度知識を持っていた状態でしたので、その理解のもとに、「無理してほしくない」と伝えました。どうすれば無理をさせないようにできるのか、とすごく悩みましたし、その時の対応が正しかったのかなとは未だに思っています。男性リーダーができることは、どういうことがあるのでしょうか?

 

周囲の人は、「どうつらいか」より、「どんなサポートが必要か」を聞いてみよう

高本:自分がそういった研修を受けて更年期に関する知識があることは開示してよいと思うのですが、体調の具合を聞くというよりは、どうやってサポートすればよいのかを聞いていくのがよいのかと思います。

鹿島:なるほど、ありがとうございます。

溝口:その女性が自身の身体の不調を鹿島さんへお話できたというのは、傾聴の姿勢を感じたからなのではないかと思うんですよね。そもそも、職場の中で当事者の人が話しやすい雰囲気を作るにはどうしたらよいのでしょうか。

高本:そうですね。ご自身が研修などを受けて更年期に関する知識を持っていることは伝えていただいて、面談の時に何かあれば相談してください、ということを常日頃からメンバーの方へ発信していくことが大切だと思います。そうすると、この人には話して大丈夫なのだというフラグが立ちますので。

溝口:「知識を持っている相手に安心して話せる」と、更年期に悩んでいる方から思ってもらえることが一番大事ですよね。

高本:「いつでも話してもらってOKですよ」という雰囲気を出すのは大事ですし、「困っていることはない?」と聞いてみる。なければ「ない」と答えるでしょうし、「ある」のであれば、具体的にどのような配慮やサポートがあれば助かるかを聞くことが大切ですね。聞く側も必要以上にそこに怯えないということが大事だと思います。

 

女性が更年期で退職することは社会の損失。マネジメント含め組織のメンバー全員が更年期について知識を持ち、お互いにサポートしていくことが今後の社会のトレンドとなる

鹿島:デロイト トーマツ グループも1万人以上の組織ですが、組織が大きければ大きいほど、スピード感を持って更年期に配慮する環境を作っていくのは課題も大きいなと感じているのですが、企業全体の取り組みとしてはどのような傾向がみられるでしょうか。

高本:当事者以外の理解が必要であることから、当事者だけでなく、マネジメント層やトップマネジメントを対象とした研修も実施されています。

男性も家族や上司・同僚・部下のために自分事とする必要がありますし、マネジメント層は、まず、更年期が原因で昇格を断る、退職をしてしまうといったリスク、会社としての損失を認識しなければなりません。最終的にはメンバー全員が同じ認識・理解を持つことが必要、という動きになっています。

鹿島:どのようなスピード感で進めるのがよいでしょうか? 

高本:まずは当事者へのセミナーなどから始め、その上司、その関係者といった形で拡大していくのがよいと思います。全体に浸透させようとするとやはり最低でも1年間はかかると思いますが、当事者とその上司が知るということでだいぶ改善されていきます。ワークショップで当事者の話を聞くといったアジェンダを盛り込むと、皆さんの意識が変わっていきますね。

溝口:以前に、ある男性の役員が、深夜の海外との会議に出るのがつらいと何度もおっしゃっていました。役員世代の女性が更年期で苦しむのと同様に、男性も健康上の悩みを抱えているのだと感じました。ただ、男性は、健康上の悩みについて情報交換をしない方々も多いのではないかと思います。女性も男性も自分の健康状態に対して話ができるような雰囲気や場が大事で、まずは自分の老化を「人間としての当たり前の変化」として認め正しい医療を受けることで異変を緩和していくことが大切なのではないでしょうか。

コロナ禍だと立ち話もできず情報交換も難しいので、気軽に情報交換できる場があるとよいなと思います。

吉川:デロイト トーマツ グループでは11-12月を通して「みんなのWell-being」という取り組みをしています。コロナ禍ということもあり、気軽にコミュニケーションを取ることが難しいのですが、こういう時だからこそ、Well-beingを考え対話することも大切です。今回のテーマである更年期についてもリンクさせていく必要があると思いました。

本日はメノポーズということで更年期にフォーカスしましたが、更年期は体の老化の症状の一つということで、男性女性問わず、「これは人間としての当たり前の変化なのだ」と、まずは自分自身が認めることが大切になると感じています。体の変化は人それぞれで、感じ方も様々だと思いますが、家族や職場でお互いのことを気遣っていくことが重要だと本日のセミナーを通して感じました。

 

 

更年期について職場・家庭内で話題にすることはまだまだタブーの雰囲気がありますが、特に女性が働く上で離職や昇格断念などに繋がる社会課題にもなっています。デロイト トーマツ グループでは今後も、更年期をはじめ、一人ひとりのあらゆる事情や違いについて#Equityの概念をベースにサポートや対話を重ね、真の#Inclusionや#Wellbeingへつなげていきます。

 

プロフェッショナル

吉川 玄徳/Gentoku Yoshikawa

吉川 玄徳/Gentoku Yoshikawa

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー | 一般財団法人デロイト トーマツ ウェルビーイング財団 代表理事

ビジネス領域として、事業再編(事業売却、グループ再編、持株会社化など)、M&A(統合型デューデリジェンス(財務、ビジネス、人事、IT)、ファイナンシャルアドバイザリー、企業価値評価、プレクロージング・PMIなど)の専門分野で広範囲な経験を有する。特に、TMT、製造業における、買収、事業売却、グローバル組織構造改革等における実績を多数有する。 社会価値創出領域として、デロイト トーマツ グループの地域課題解決のプロボノ組織である、JustDoIt!! 地域イニシアチブを統括。また、一般財団法人デロイト トーマツ ウェルビーイング財団においては、代表理事として、デロイトがグローバルに展開する社会貢献活動の枠組みであるWorldClass、WorldClimateと連動したNPO/NGOを資金と伴走の両面から支援する仕組みとして、コレクティブ・インパクト型助成を提案し、社会実装を実践している。 学歴・外部媒体掲載 東京工業大学大学院修了 M&A統合型財務デュ-デリジェンス(デロイトトーマツFAS著、清文社) 社会課題解決の「みらい」 「受援力」が築く発展可能な組織と意識(陣内一徳著、丸善プラネット社)

鹿島 俊明/Toshiaki Kashima

鹿島 俊明/Toshiaki Kashima

有限責任監査法人トーマツ パートナー

大手信託銀行にて、年金企画・数理・管理・開発業務を経験した後、2000年に監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)に入社。年金コンサルティング、M&A、監査サポートに関与した後、2006年から2008年にDeloitte Total Rewards and Benefits(ロンドン)にて主に日系企業向けに欧州年金制度に係る年金コンサルティング及び年金デューディリジェンスを提供。以後、多くのクロスボーダー案件をリードし、国内外の年金コンサルティング業務を中心にサービスを提供している。 保有資格:年金数理人、日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員

溝口 史子/Fumiko Mizoguchi

溝口 史子/Fumiko Mizoguchi

デロイト トーマツ グループ 税務・法務領域ビジネスリーダー|デロイト トーマツ T&L合同会社 代表執行役

ドイツ税理士として勤務した経験を活かし、EU付加価値税法についての助言、諸外国の付加価値税制度及び米国セールスアンドユースタックスについての助言を提供する。国際取引のコスト・リスク・ビジネスを考慮した各国間接税法の分析に基づくストラクチャリング案件に従事する。政府研究会委員として付加価値税の国際的な潮流に根差した消費税制度の改正提言も行う。 資格 ドイツ税理士(2005年登録) 学歴・職歴 1996年 東京大学法学部卒 1996年~2000年 自治省(現在の総務省自治局)勤務 1999年 ロンドンスクールオブエコノミクス欧州社会政策学修士課程修了 2001年 渡独 2005年 ドイツ税理士登録 2015年 デロイト トーマツ税理士法人入社 2019年 デロイト トーマツ 税理士法人 パートナー 就任 2019年 デロイト トーマツ 税理士法人 間接税サービス部門長 2024年 デロイト トーマツ グループ 税務・法領域ビジネスリーダー就任 ※日本における税務・法務領域のグループ経営の責任者として、税理士法、弁護士法その他法令に抵触しない範囲で税務・法務領域ビジネスの全体を推進 執筆・講演・政府機関委員 「世界標準の消費税」税務弘報(2023年) 「EU付加価値税の実務」中央経済社(2020年第二版) 「サプライチェーンにおけるグローバル間接税プランニング」中央経済社(共著、2018年) SUT作成におけるインボイス情報活用に関する海外調査研究検討会有識者(内閣府経済社会総合研究所、2020年) デジタル経済下における国際課税研究会有識者(経済産業省、2021年) 国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会有識者(財務省、2023年) 言語 日本語・ドイツ語・英語

執筆者

Diversity, Equity & Inclusion チーム

Diversity, Equity & Inclusion チーム

デロイト トーマツ グループ

「Diversity, Equity, & Inclusion(DEI)」を自社と顧客の成長を牽引し、社会変革へつなげていくための重要経営戦略の一つとして位置付けているデロイト トーマツ グループにおいて、様々な「違い」を強みとするための施策を、経営層と一体となり幅広く立案・実行しているプロフェッショナルチーム。インクルーシブな職場環境の醸成はもちろん、社会全体のインクルージョン推進強化に向けて様々な取り組みや発信を実行。 関連するリンク デロイト トーマツ グループのDiversity, Equity & Inclusion