ヤング・ダボス「One Young World」サミットで日本代表が得た「経験」
PROFESSIONAL
- Moly Fang デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 CFA TMT/ヴァイスプレジデント
- 齋藤 渓 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Strategy シニアコンサルタント
「ヤング・ダボス」とも呼ばれる次世代サミット「One Young World(OYW)」は世界的な課題の原因はリーダーシップの欠如にあると考え、若きリーダー達に、より多くの可能性と世界的な課題解決のためにリーダーシップを発揮する場を提供している。毎年1回開催されるサミットには活動的な次世代リーダーが190カ国以上から参加する。このサミットに、デロイト トーマツ グループも毎年代表を派遣。今回は2021年・2022年の代表2人に、OYWの魅力、そして自らの成長体験を語ってもらった。
OYW参加で、これまでにない「繋がり」が生まれ、新しい自分を発見する
デロイト トーマツ コンサルティングのシニアコンサルタントである齋藤 渓は2022年のOYW代表だ。2020年の入社以来、SDGsを起点とした長期経営計画や脱炭素戦略策定支援、海外企業向けの国内市場性評価等を担当。グローバルメンバーとともに国内外の広範な活動に関与している。
同じくデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーのMoly Fangは2018年にUSから日本のイノベーション部門(ベンチャーサポート)に加わるべくニューヨークから東京へ来た。昨年2021年のOYW代表で、主にスタートアップの創業者とのパートナーシップに焦点を当て、投資家からの資金調達戦略について各種提言を行っている。
——OYW参加のきっかけを教えてください。
齋藤渓(以下、齋藤):大きく2つあります。まずデロイトグローバルのメンバーとのネットワークを拡大したかったこと。グローバルでキャリアを積み上げたいと考えており、海外オフィスメンバーとの繋がりは不可欠だと考えていました。もう1つは社会起業家の方々と接点を持ちたかったことです。社会課題の中で、特に生死に関わるレベルの社会課題に直面している方の生の声を聞きたかった。日本では、なかなかそういう機会はありません。
Moly Fang(以下、Moly):デロイト トーマツの若手として、グローバルなイベントに参加する機会を探していました。当時はイノベーションに力を入れていたので、OYWに参加することを決めました。現地に行き、デロイト トーマツと日本が、世界のさまざまな問題を解決するために何をもたらすことができるかをアピールしたいと考えたのです。
——OYWへはどんなプロセスで参加できるのでしょうか?
齋藤:書類選考を経て、数回の面接ですね。デロイトのグローバルでも同様のプロセスを経て、各国から代表が選ばれます。東京オフィスでは私ともう1名が代表に選ばれました。
——OYWに実際に参加してどうでしたか?
齋藤:良い意味で期待通りでした。現地で社会起業家の方々とお話をして、やはり相対しないと分からないことがあります。生い立ちから起業に至るパッションや信念などを、当人が鬼気迫る勢いで話しているのを聞けました。また私自身も、社会起業家や他企業のプロフェッショナルを前に、航空業界の脱炭素/ブルーエコノミーに係るピッチをしました。ピッチ後にも、社内外の方々と多角的に意見交換をすることができ、自らの意見をブラッシュアップする貴重な機会でした。サミットは4日間、2000人規模で行われていましたが、朝から夜まで参加して一体感を味わえました。サミットといっても、VIPのように誰かが誘導してくれるわけではありません。自分でプログラムを見て、参加したいところに自ら足を運び、声を出していく能動的なアクションが求められます。実際に見ていると、能動的に動いている人と、OYWに来て満足してしまっている人がいたように思えます。私は常に前者でありたいと思っていたので動き回っていました。
Moly:聞くのと見るのではまったく違いました、参加してみると、デロイトのネットワークだけでなく、ネットワークの外でも多くの友人やビジネスパートナーができました。欧州自動車OEM、グローバル食品・飲料企業、 世界最大手の中央処理装置および半導体素子のメーカーなど、大手企業の方々や、同じくイベントに参加した多くのイノベーション・リーダーと繋がり、話し合うことができました。サミット後の今でもその関係は続いています。これは、私のキャリアと私生活の両方に長期的な影響を与えたと思います。日本の大企業で働いていると、自分が本当に大切にしていることや本当にやりたいことを忘れてしまうことがあります。だから、OYWに参加することで、自分が何に興味があるのか、プロフェッショナルとして何をしたいのかを思い出すことができました。
日本国内にいては出会えない人たちと相対することで成長する
——OYWで印象に残ったエピソードなどがあれば教えてください
齋藤:教育系の女性の起業家で、過疎地域でも学習できるデバイスを開発している方のお話を聞けたことが印象に残っています。彼女もアジアで女性の権利侵害を受けた経験があり、自分と同じような経験をさせたくないという思いから、人権問題、社会課題を教育という観点で解決を目指している。社会課題はストレートに解決する方法を考えるだけでなく、教育など異なる視点から解決する方法もあると知りましたし、課題と向き合っていく中で直面する生々しい話を聞くこともできて、印象に残っています。
——社内ではどうですか?
齋藤:OYWに参加していたベルギーのメンバーから現在担当しているプロジェクトに関する他国の事例を聞けたり、デロイトグローバル自体の脱炭素を推進するワーキンググループにも選抜されました。まだこれからといったところですが、楽しみにしています。所属するモニターデロイトは未知を切り拓いていくと銘打っているカルチャーやグローバルレベルでコラボレーションできるのが魅力的で元々入社しましたが、OYWでより一層ネットワークができ、世界が広がりました。
Moly:私も印象に残っているエピソードが社外と社内でそれぞれ1つあります。まず社外では、欧州自動車OEMの統合責任者と車のデザインにサステナビリティの概念を取り入れるにはどうしたらいいかという話をしたこと。当時、その企業 には新興企業への投資に注力するチームがあり、それが私の仕事と関連していたので繋がることができました。さらに、これをきっかけに日本の 欧州自動車OEMとも繋がったのです。大手企業の経営層は皆、世界の課題を気にかけていますし、今よりもっと良い状況にするために、何ができるかを考えようとしています。このような繋がりができ、話し合いができたのは個人的にも、また仕事上でも、とても有益なものでした。
——もう一つは社内ですね。
Moly:はい。デロイトのOYWプログラムは、サミットだけでなく1年間行われます。その中で毎月、デロイトのアメリカ、イギリス、アフリカなど、さまざまな国のエグゼクティブと交流し、デロイトが目指す方向性を学ぶ機会がたくさんありました。今思うと、デロイトが今後どうあってほしいか、自分たちは何をしたいのか、という私たちの声にも耳を傾けてくれ、会社としてすごいことだと思います。
OYWは自分自身の何を変えたのか?
——1年を経過して、今自分の中にOYWはどのように活きていますか?
Moly:OYWは私の人生に大きな影響を与えていると思います。私は世界の社会アジェンダにとても興味があるので、個人的にも多くのNGO団体でアドバイザーやコンサルタント、ボランティアとして働いていましたが、OYWのプログラムを知った時はデロイトがこのようなトピックに重点を置いていることにとても驚きました。時代は変わり、今はそのようなアジェンダに対してデロイトのような企業がサポートできることも増えてきました。実際、私を含めたメンバーが提言した内容はデロイトグローバルの各CEOに送られ、彼らが承認すれば、グローバルメンバー企業に展開されることになります。まだたった1年間ですが、私たちが提案したプロジェクトが実現していくのを見ることは本当に嬉しいですし、それが仕事への大きなモチベーションになっています。
「自分が貢献し、その結果を見るというプロセスが好き」
——最後に、これからのことを。人生や仕事における目標を聞かせてください。
齋藤:今はシニアコンサルタントからマネジャーを目指していますが、社会課題の解決に寄与していきたいですし、グローバルのネットワークを積み上げて、海外オフィスで働く経験も得られればと考えています。海外でさらに日本企業や経済社会にどう貢献ができるかを考えながら他業界や他国の知見を蓄積し、それを、いずれは特に興味がある航空業界に還元できたら嬉しいです。航空業界はエネルギーの観点から、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーにシフトしていくにあたり大きな課題を持っていますから、私の経験がこれからの未来に活かせると感じています。
Moly:現段階では、ファイナンシャルアドバイザーやコンサルタントとしての専門的なスキルを向上させたいと思っています。そして日本に対する理解を深めるとともに、日本のビジネスカルチャーをもっと世界に発信していきたい。先日のサッカーWカップで、日本の選手全員が一つのチームとしてゴールを守っていく姿を見ました。こうしたカルチャーは、日本のビジネスにも当然存在しています。そんな日本と世界がもう少し繋がっていく手助けをしていきたいですね。
——その先はどうですか?
Moly:最終的には教育の場に戻りたいと考えています。教えるか、スタートアップに参加するか、あるいはアドバイザーとして目標達成の手助けをするか。私は、自分が貢献し、その結果を見るというプロセスがとても好きなんです。これまで非常にグローバルなキャリアを歩んできましたが、これからもそれを続けていきたいと思っています。
【関連記事】
※本ページの情報は掲載時点のものです。
- RELATED TOPICS