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資本市場のさらなる発展に貢献し続けるために

有限責任監査法人トーマツ 包括代表兼 監査・保証事業本部長 大久保孝一による『旬刊経理情報』への寄稿

有限責任監査法人トーマツ 包括代表兼 監査・保証事業本部長 大久保孝一が「資本市場のさらなる発展に貢献し続けるために」と題し、『旬刊経理情報』2022年7月20日号に寄稿しました。

公認会計士は、会計監査の専門家として、資本市場における財務情報の信頼性を独立した立場から保証するという独占的な地位が法的に与えられており、わが国の資本市場の発展を支える重要な役割を担っている。

デジタル化の進展、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みの要請等、資本市場を取り巻く環境が変化を続けるなか、ステークホルダーからは、企業のビジネスや内部統制等の課題に対する深い理解に基づく付加価値のある監査、先進的なテクノロジー等を活用した効果的かつ効率的な監査等への期待が高まっている。公認会計士および監査法人は、ステークホルダーとの対話を通じて、その期待を十分に理解し、的確に応えていくことが使命であり、それこそがわれわれの存在意義である。

このステークホルダーからの変化する期待に応えるために最も重要なものは、AI(人工知能)を始めとするテクノロジーでもなく、人材そのものである。

しかしながら、グローバルレベルで多様な人材の獲得競争が加速するなか、近年は公認会計士試験の受験者数自体が伸び悩む等、十分な人材の確保に課題が生じている。ステークホルダーから期待される役割を果たし続けるためには、多様で優秀な人材を惹きつける業界へと変革していかなければならない。

そのために、テクノロジーを用いた監査業務のデジタル化および高度化の推進等により監査の生産性を向上させ、会計監査の専門家である公認会計士がより判断を伴う重要性の高い業務にフォーカスできる環境を整備するとともに、Well-being、D E I(Diversity, Equity & Inclusion)を推進することが非常に重要である。

また、若い世代に対して、監査という仕事、公認会計士という職業およびその活躍の可能性を正確に伝えていくことも欠かせない取組みである。さらに、人的資本、テクノロジー等への継続的な投資を行い、適切な品質を担保するためには、公認会計士および監査法人の経営基盤強化が必要という意見もあるだろう。

多様で優秀な人材の確保は、公認会計士業界だけの問題ではない。監査という仕事が十分な人材を惹きつけられない場合には、結果として、資本市場における財務情報の信頼性が損なわれ、経済全体に重大な影響を与えかねない。業界内外で共通してこの認識を持つことが重要となる。

私は、これまで企業を始めとするさまざまなステークホルダーとの関係を通じて、自らの成長を実感し、公正公平な志を貫きながら資本市場に貢献することのできる公認会計士という仕事の魅力を日々実感してきた。今後ますます活躍の場が拡がるこの職業の魅力を向上させていくことは、次世代に対する使命の1つと考えている。

今後も関係各位のご指導を賜りながら、多くの優秀な人材が切磋琢磨して社会に価値を提供し続ける業界であるための努力を行い、公認会計士および監査法人が、日本の資本市場の発展により一層貢献する未来を実現していきたい。


本ページは中央経済社から転載の許可を得て掲載しています。

『旬刊経理情報』2022年7月20日号(620KB,PDF)
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